犬猫飼育

猫は外に出してはいけないのか?臨床獣医師が外飼いのリスクを解説

当院は田舎にあります。

田舎では、まだまだ外に出る猫が多く、よくケンカ傷を負って来院されることがあります。

猫が外に出るリスクを解説します。

猫が外に出ることで感染する病気

猫風邪

他の猫から、うつります。ウイルス性、細菌性の鼻気管炎です。結膜炎の症状のみの場合もあります。

獣医師が解説 | 猫風邪の原因、症状、治療法について 人が風邪をひいた場合、抗生物質を処方する病院は少なくなってきていると思います。 その理由として風邪の原因の大部分は上気道のウイル...

猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症。猫エイズ

感染経路は主に咬傷で、唾液中に含まれるウイルスが体内に入ることで感染します。

目立った症状を示さない場合があります。

様々な免疫異常を引き起こします。口内炎、歯肉炎が多いです。

免疫不全を引き起こすと致命的な症状を引き起こします。

猫白血病ウイルス感染症

毛づくろいや共同で飲食することで感染 (接触感染) します。他にも母猫から子猫に感染(経胎盤感染)したり、授乳により感染(経乳汁感染)します。

感染した猫の多くは、免疫不全、リンパ腫、白血病等を発症し、死亡します。

ノミ感染

外に出る猫の多くが感染します。猫に寄生したノミは、ヒトにも寄生し、吸血します。

ノミに咬まれることで、ノミアレルギー性皮膚炎を起こす場合があります。

またノミが媒介する瓜実条虫という寄生虫に感染することがあります。瓜実条虫は肛門から排泄され、伸びたり縮んだりして動きます。乾燥すると米粒のように見えます。

マダニ感染

草むらに入る猫が感染します。

マダニが原因でヘモプラズマ症に感染することがあります。ヘモプラズマは、猫の赤血球に寄生する寄生虫で、マダニ、咬傷により感染すると考えられています。ヘモプラズマに感染すると、赤血球が壊され、発熱、元気消失、貧血、黄疸等の症状を引き起こします。

マダニは他にもSFTS等ヒトにも感染する感染症を媒介しますので、注意が必要です。

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疥癬

ヒゼンダニが寄生して発症する皮膚疾患です。接触感染により、うつります。 頭部、顔面に強い痒みを引き起こすのが特徴です。ネコショウセンコウヒゼンダニはヒトにも寄生します。

耳ヒゼンダニ症

ミミヒゼンダニが外耳道に寄生することで、痒みを引き起こします。接触感染により、うつります。

回虫症

感染している猫の便が口に入ることで感染します。授乳により感染(経乳汁感染)することもあります。

感染しても症状を示さないことが多いです。便の中ミミズのような虫が出てくることや、口から虫を吐き出すことがあります。

マンソン裂頭条虫

猫が、ヘビやカエルを食べた場合に感染します。

感染すると、下痢や嘔吐を引き起こすことがあります。肛門から、きし麺のような虫が出てくることがあります。

トキソプラズマ症

感染している猫の便が口に入ることで感染します。 症状を示さない場合が多いです。妊婦さんは注意が必要です。

獣医師が解説 | 猫のトキソプラズマ症について 妊娠中の方から「飼い猫がトキソプラズマに感染しているかどうかの検査が必要ですか?」という問い合わせを受けることがあります。 また...

猫が外に出ることで負う外傷

猫同士のケンカ

オス猫の場合はケンカをすることが多いです。ケンカによる咬傷は、すぐには腫れてくることは無く、しばらくしてから化膿することがあります。

ヘビ咬傷

猫は、ヘビ毒に対する耐性がありますので、重篤化することは稀です。しかし、咬傷部位は腫れますので治療が必要です。

交通事故

自治体に通報があり、収容した負傷猫は1年間に11,184頭にのぼります(1)。 交通事故の割合は不明ですが、このうちの多くを占めると推測されます。

猫は室内飼いを

元々、外で生活していたノラ猫を飼う場合、室内飼いにすることは困難なことがあります。

しかし、子猫の段階から飼い始める場合は室内飼いをお勧めします。

参考文献
(1)環境省 負傷動物等の収容及び処分の状況 平成30年度

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