コロナウイルス感染症

ダイヤモンド・プリンセスに関する岩田先生と高山先生のやり取りから明白になった問題点

岩田健太郎先生は感染症に関しては、非常に有名な先生です。先生の抗菌薬の使い方の書籍を読んで勉強させて頂きました。

岩田先生は、海上隔離が続いているダイヤモンド・プリンセスに乗船し、1日で下船することになった経緯をyotubeで公開し、問題となりました。

その後、岩田先生が乗船前にやり取りをしていた高山先生がfacebook上で、岩田先生への反論(説明)を行い、岩田先生は動画を削除しました。そのやり取りを見ていて気になった点をまとめました。

岩田先生が公開した動画から

乗船の経緯、目的

  • 感染者がどんどん増えていっていたので感染対策が上手くいっていないのではないかとの懸念があった。
  • (日本)環境感染学会が入り、FETP(実地疫学専門家養成コース:Field Epidemiology Training Program) が入ったが、すぐに出てしまい、中がどうなっているかわからない状態であった。
  • クルーズ船の中の人から助けを求める声があった。

クルーズ船内の現状把握と感染対策の改善を目的に乗船したことが読み取れます。

岩田先生の主張

  1. ダイヤモンド・プリンセスの中はレッドゾーン(危険区域)とグリーンゾーン(安全区域)の区別があいまいで危険な状態
  2. 環境感染学会やFETPが入って数日で出て行ったのは、船内が危険だったから?
  3. 環境感染学会の方が入った時に色々言われて、DMATの方は感染のプロたちにすごく嫌な思いをしたらしい
  4. 常駐しているプロの感染対策の専門家が一人もいない
  5. 専門家が責任をとって、リーダーシップをとって、感染対策についてのルールを決めてやっているのだろうと思ったが、そんなことはなかった。
  6. ダイヤモンド・プリンセスの中で起きていることについて全然、情報を出していない
  7. 誰も情報公開をしないので、現状を知ってもらうために情報公開した
  8. 乗客は、悪いマネジメントでずっとクルーズの中で感染のリスクに耐えなければいけなかった
  9. ダイヤモンド・プリンセスの中の方々、DMATやDPAT(災害派遣精神医療チーム:Disaster Psychiatric Assistance Team)や厚労省の方、あるいは検疫所の方が安全に仕事ができることを望んでいる

高山義浩医師のfacebookでの投稿

岩田先生が船内に入るためのアドバイスをしていたのが厚労省で働いている高山先生です。岩田先生の動画への反論(説明)がfacebookに投稿されています。

高山先生の投稿の全体像

冒頭から岩田先生の性格を揶揄するかのような投稿から始まります。岩田先生は協調性が無かったので、追い出された。新興感染症であり、船という特殊な環境下で完璧ではないまでも、できる範囲で頑張っていますという内容です。

高山先生の投稿で気になる点

  1. 「実際はゾーニングはしっかり行われています。完全ではないにせよ・・・。」とありますが、事務員やDMATが感染してますので、しっかりとは行われていなかったと考えられます。そもそも完全でないゾーニングってやる意味あるのでしょうか?
  2. 環境感染学会との関係性については、全く言及していません。 岩田先生が指摘したような軋轢はあったのでしょうか?
  3. 「毎日、感染症や公衆衛生を専門とする医師が乗船して指導しています」と書いてますが、常駐と言って良い状態なのかは不明です。
  4. 「約3700人の乗員・乗客(しかも高齢者が多い)において新興感染症が発生した船舶・・・というミッションは極めて複雑」とありますが、新興感染症対策が大変なのは当然です。衛生環境が悪い国や国民のモラルが低い国で発生することもありますし、もっと複雑な状況でも起こり得ると思います。
  5. 「感染症医はコンサルタントとしての能力が求められます。それは聞いてもらう能力でもあります。」とありますが、岩田先生は自らの身の危険を感じてたとのことですので、現場の人達との関係性を築いてから、助言をすべきというのは酷な要求だと思います。(岩田先生は正規ルートで依頼されたわけではなく、勝手に乗船したという面はありますが)

明白になった問題点

ネット上では、高山先生を誉め、岩田先生を批判する向きもあります。それでいいのでしょうか?

岩田先生は、クルーズ船内の現状把握と感染対策の改善を目的に乗船しましたので、ある程度目的は達成したのだと思います。 情報公開もできました。

そもそも皆さんうっすらと考えていることだと思いますが、事務員やDMATが感染したとしても彼らが死ぬことはないと思っているのではないでしょうか?
しかし、これがエボラ出血熱のように致死率50%を超えるような感染症で同じようなことが行われた場合、高山先生の発言を許せるでしょうか?

エボラのような危険な感染症の場合は本気を出して、もっとしっかりやるということなのでしょうか?
しかし、そもそもやり方(システム、マネジメント)が間違っているのですから、同じ失敗を繰り返すと思います。

専門家が責任をとって、リーダーシップをとって、感染対策についてのルールを決めて行動できるようなシステム作りがされることを期待します。

この記事が気に入ったらフォローして下さい