高齢者施設等での定期検査についておかしな認識を持った人達がいます。
橋下徹氏、sekkai氏
【独自】世田谷一斉PCR終了へ 区、来月末に ワクチン進展で施設感染減
https://www.yomiuri.co.jp/local/tokyo23/news/20210819-OYTNT50186/
東京都世田谷区が、新型コロナウイルス対策の「世田谷モデル」として独自に推進してきた介護施設の職員ら向けの一斉PCR検査を9月末で終了する方向で調整していることがわかった。昨年10月の開始以降、25人の陽性者を見つけ、特別養護老人ホームのクラスター(感染集団)も探知する成果を上げたが、ワクチン接種の進展で施設内の感染事例が激減しており、区は役目を終えたと判断。検査対象の見直しに着手する。
2021年8月20日 読売新聞
介護事業所等を対象としたPCR検査(社会的検査)について(概要編)【8月2日9時更新】
区では令和2年10月から、世田谷区内の介護事業所等を対象にPCR検査(社会的検査)を実施してきましたが、感染拡大により、この度随時検査を最優先に実施することとなりました。つきましては、以下の期間において、定期検査の新規の受付を停止させていただきます。
定期検査新規受付停止期間
8月6日(金曜日)から8月31日(火曜日)まで期間については今後の感染状況次第で変更する場合がございます。また、現在すでにお申込みいただいている定期検査につきましては予定通り実施いたしますが、今後の感染状況次第では、ご希望する検査時期に実施できない場合や急遽日程変更をお願いする場合がございます。
なお、随時検査およびスクリーニング検査は上記期間中も通常通り実施いたします。
事業者の皆様には大変ご不便をおかけいたしますが、ご理解いただきますようお願いいたします。
https://www.city.setagaya.lg.jp/mokuji/fukushi/003/005/006/31211/d00188032.html
高齢者施設等での定期検査の目的はクラスター発生を未然に感知し、クラスター発生を防ぐことです。
クラスター発生を減らすことができたのであれば目的は達成されたと解釈しても良いでしょう。
世田谷区は、ワクチン接種により高齢者施設でのクラスター発生が減少したことと感染拡大により、検査体制が逼迫したために他の検査を優先し、定期検査を一時中止するということのようです。
世田谷区は「いつでもどこでも誰でも」というキャッチフレーズを掲げたため、検査抑制論者から批判の的になっていますが行われていたのは高齢者施設等での定期検査です。
厚生労働省、分科会の定期検査についての見解
厚生労働省は高齢者施設等への定期検査の徹底を指示しています。
高齢者施設の従事者等の検査の徹底について(要請)
https://www.mhlw.go.jp/content/000734477.pdf
新型コロナウイルスの感染状況については、新規感染者数は1月中旬以降減少傾向となっているものの、重症者数、死亡者数は引き続き過去最多の水準となっており、高齢者施設でのクラスター発生事例も増加している状況にあります。有識者からも、福祉施設における感染拡大の取組が必要であり、施設等における検査による感染の早期発見に取り組むべきと指摘されているところです。
新型コロナウイルス感染症に関する高齢者施設等への検査については、感染多数地域において施設の感染者が判明していない場合であっても、「クラスターが複数発生している地域における積極的な検査の実施について(要請)」(令和2年 11 月 20 日付け事務連絡)、「齢者施設等への検査の再徹底等について(要請)」(令和2年 12 月 25 日付け事務連絡)などにより、高齢者施設等の従事者や入所者に対する幅広い検査の積極的な実施をお願いし ているところです。
引き続き、高齢者施設等での検査を徹底していただくとともに、今般、改定された新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針(令和3年2月2日新型コロナウイルス感染 症対策本部変更決定)に基づき、特定都道府県(2月8日以降も、緊急事態宣言の対象区域に属する都道府県をいう。以下同じ。)並びに特定都道府県の管内にある保健所設置市及び特別区においては、感染多数地域における高齢者施設の従事者等の検査の集中的実施計画の策定及び実施をお願いいたします。
令和3年2月4日 厚生労働省新型コロナウイルス感染症 対策推進本部
1.高齢者施設等に対する検査の徹底について
https://www.mhlw.go.jp/content/000734477.pdf
高齢者は症状が重症化しやすく、医療提供体制への負荷の増大を防ぐ観点からも、感染防止や早期対応が一層重要である一方、高齢者施設等における集団感染が依然として発生しています。
有識者からも、高齢者施設に対する検査、とりわけ従事者に対する検査についての重要性が以下のとおり指摘されております
・ 福祉施設および医療機関における感染拡大を阻止する取り組みが必要である。施設等における感染予防、拡大防止、検査による感染の早期発見や発生時に備えた対応、発生時の対応の強化に取り組むとともに、現場で実際に対応につながる支援を図るべき。(2月1日厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード)
・ 飲食店に対する営業時間の短縮要請などによる集中した対策の結果、飲食に伴うクラスターが減る一方で、高齢者施設でのクラスターが急増している。高齢者施設での感染は、直接、重症者及び死亡者の増加につながることから、クラスターの発生防止を早急に徹底する必要がある。高齢者施設、特に長期入所型施設におけるクラスターは感染した職員から生じる傾向が多い。(2月2日内閣官房新型コロナウイルス感染症対策分科 会「緊急事態宣言下での対策の徹底・強化についての提言」)
・ 都道府県は、国と連携し、保健所の業務負担を増やさないよう配慮しながら、高齢者施設の職員が定期的に検査を受けられるよう支援して頂きたい。(同提言)
こうしたことも踏まえ、全ての都道府県等(都道府県並びに保健所設置市及び特別区の ことをいう。以下同じ。)におかれては、引き続き、高齢者施設等における積極的な検査の実施をお願いいたします。
令和3年2月4日 厚生労働省新型コロナウイルス感染症 対策推進本部
高齢者施設等での定期検査(集中検査)は世田谷区以外にも多数の自治体で行われています。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/taisakusuisin/bunkakai/dai4/gijisidai.pdf
(新型コロナウイルス感染症対策分科会(第4回)令和3年6月 16 日)
分科会は定期検査(集中検査)についてクラスターの抑制や無症状感染者の早期発見等に一定の効果があることを認め、継続することを検討しています。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/taisakusuisin/bunkakai/dai4/gijisidai.pdf
(新型コロナウイルス感染症対策分科会(第4回)令和3年6月 16 日)
・検査実施施設と検査非実施施設を比較すると、感染状況が落ち着いていた2月中旬~3月については、検査非実施施設の1施設当たりの陽性者数は約2.00倍、5人以上のクラスターの発生比率は約2.83倍、10人以上のクラスターの発生比率は約2.78倍であった。感染が拡大していた4・5月については、検査非実施施設の1施設当たりの陽性者数は約1.07倍、5人以上のクラスターの発生比率は約0.90倍、10人以上のクラスターの発生比率は約1.14倍であった。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/taisakusuisin/bunkakai/dai4/gijisidai.pdf
新型コロナウイルス感染症対策分科会(第4回)令和3年6月 16 日
4・5月に実施施設と非実施施設における差が見られなかったことから、感染拡大期では検査頻度を増やすことが必要でしょう。
高齢者へのワクチン接種が進んだ7月以降では高齢者施設等での感染そのものが減少しています。
世田谷区が定期検査を一時中止したのには、このような事情もあります。
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000812895.pdf
(第45回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年7月28日))
このように分科会や厚生労働省は定期検査を推奨しています。
sekkai氏は分科会や厚生労働省の資料に目を通しているのでしょうか?
地方自治体での定期検査実施予定
厚生労働省からの指示を受け、地方自治体では高齢者施設等での定期検査が計画され、実施されています。
当然ですが感染拡大地域である大阪府、大阪市でも実施されています。
橋下氏は高齢者施設等での定期検査が無駄であると考えるのであれば松井市長、吉村知事に無駄な検査はやめるべきと助言すべきです。
https://www.mhlw.go.jp/content/000819142.pdf
(高齢者施設等の集中的検査実施計画の策定状況(令和3年8月10日時点))
定期検査の結果から見えてくること
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/taisakusuisin/bunkakai/dai4/gijisidai.pdf
(新型コロナウイルス感染症対策分科会(第4回)令和3年6月 16 日)
介護職員らの陽性率上昇 世田谷区の「社会的検査」
この検査は、クラスター(感染者集団)化を未然に防ぐために区が10月から独自に始め、「社会的検査」と呼んでいるもの。症状の有無にかかわらず、区内の介護施設や障害者施設、保育園や幼稚園、小中学校などで働く人が対象だ。希望する施設に定期的に検査する「定期検査」と、感染者が出た施設を調べる「随時検査」がある。区によると、10月2日から今月1日までの検査数は576人(45施設)で、うち陽性者は2人。陽性率は0・3%だった。だが、2日から22日までの960人(45施設)のうち、陽性者は18人に上り、陽性率は1・9%まで跳ね上がった。
https://www.asahi.com/articles/ASNCS71JLNCNUTIL02X.html
2020年11月25日 朝日新聞DIGITAL
上記の資料を見ると福島市(0/4114)やさいたま市(0/6991)のように陽性率0%の自治体がありますし、多くの自治体では陽性率は0.1%以下となっています。
これらと比較すると世田谷区の陽性率1.9%という数字はかなり高い数字ですので、世田谷区の高齢者施設等の入所者は他の地域と比べると感染リスクが高かったということがわかります。
また、これらの結果から「事前確率の低い場合での大量検査では偽陽性が大量発生する」という説が嘘であったということも確認できます。
まとめると
世田谷区はキャッチフレーズとして「いつでもどこでも誰でも」を掲げていますが実際に行われている検査は分科会、厚生労働省が推奨する高齢者施設等での定期検査です。
このような基本的なことを理解せずに条件反射的に世田谷区を批判する人が後を絶ちません。
世田谷区を批判する人達は無症状者に対する検査を批判しているようですが東京五輪では無症状者に対して大量検査が行われました。
世田谷区を批判する人達が東京五輪の検査を批判しなかった理由は何なのでしょうか?
実に不思議な人達です。