新型コロナPCR検査の拡充に反対する主張の中に「医療リソースは有限である。医療リソースの範囲内でPCR検査を行うべき」というものがあります。
この主張について検証します。
日本がコロナで「PCR検査抑制」を決めたロジックを完全図解
検査対象の絞り込みは、社会全体の感染のフェーズに適した形で行うべきだ。しかし、その際にも検査のメリットとデメリットの冷静な見極めが必要なのは変わりない。「検査用キットや防護具、熟練した臨床検査技師などのリソースは有限で、すぐにそれらを急激に増やすことはできない。医師が病歴や身体所見などの情報から的確に絞り込んだ感染疑いのある人を対象とし、必要な検査を精度と安全性が確保できる環境で十分に行い、精度が担保できない環境での不必要な検査を乱発しないことが、検査が社会全体にもたらすアウトカム(結果)を上げるのには重要だ」と、日本臨床検査医学会名誉会員で日本感染症学会日本環境感染学会の評議員も務める、上尾中央総合病院の熊坂一成臨床検査科科長兼感染制御室室長は指摘する。
https://diamond.jp/articles/-/234135?page=5
2020年4月13日 DIAMOND ONLINE
PCR検査を行うことに臨床検査技師の資格は必要ありません。
(衛生検査所でPCR検査を行う人は資格を持っているでしょうが民間の検査会社でPCR検査を行う場合、資格は必要ありません)
全国にはPCR自動検査機が多数存在しますので機械が無いので検査を行えないという事実はありません。
フィルターチップが不足?
PCR検査に必要なフィルターチップの供給が問題となってきたようです。
フィルターチップの不足を理由にPCR検査の拡充を牽制するかのような意見が見られます。
フィルターチップの不足は誰の責任でしょうか?
台湾のマスク不足解消へ 軍動員で増産、海外へ寄贈も
新型コロナウイルスの感染拡大で深刻になっていた台湾のマスク不足が解消されつつある。蔡英文(ツァイ・インウェン)政権はマスクの生産・流通を完全に管理し、軍人も動員して増産する。生産能力は感染拡大前の約8倍の日産1500万枚に達し、日米欧などに贈与する余力も出てきた。一方、日本はなおマスクが不足気味。台湾の取り組みが参考になりそうだ。
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■生産、流通を当局が管理
「マスクの輸出を禁じ、生産、流通をすべて当局の管理下に置く」。1月後半、突然発表された政策に黄氏は驚いた。「契約済みのマスクも出荷できず、顧客とのトラブルが避けられない」と思ったからだ。だが、いまでは「(こうした方策を)もし実施していなかったらマスク不足で大変なことになっていただろう」と、受け入れる。顧客は不満を表明したが、台湾当局の協力も得て、納得してもらった。
方策を指示した中央感染症指揮センターは防疫に必要なあらゆる権限を持つ。台湾当局は同センターを通じ、マスクの生産、流通を統制した。メーカーが生産するマスクは当局がすべて買い上げる。健康保険証が使える薬局など当局が指定したルートでないと消費者は購入できなくなった。1週間で買える枚数は当初、成人が1人2枚で、3月には同3枚に増加。9日には2週間あたり9枚に増えた。洗って繰り返し使える布製のマスクを利用する人もいるため、マスク不足を訴える住民は減ってきた。
台湾当局は施策の意義や成果を連日の記者会見で説明しながら、水際対策などの厳しい措置を迅速に実施してきた。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58231710Y0A410C2000000/
略
■日米欧にマスク寄贈
蔡政権はマスクの生産能力を5月には1日あたり2000万枚に増やす計画だ。感染拡大が深刻な日米欧などにマスクを無償で贈り、関係を強化する「マスク外交」に活用するためだ。日本には16日、200万枚を寄贈すると発表した。菅義偉官房長官は17日の記者会見で「感謝の意を表明したい」と述べた。
2020年4月18日 日本経済新聞
このように台湾では政府の取り組みにより、マスク不足が問題となることはありませんでした。
新型コロナPCR検査は行政検査として国の責任で行われています。
マスク、検査試薬、検査のための消耗品等の医療リソースの確保は政府が行うべき仕事であり、不足するようであれば政府の責任です。
人口あたりのPCR検査件数
順位 | 10万人あたりの検査数 | |
21 | アメリカ | 1,016,377 |
42 | スウェーデン | 562,983 |
49 | ドイツ | 497,406 |
145 | ジャマイカ | 63,398 |
146 | 日本 | 60,580 |
147 | ザンビア | 54,972 |
https://www.worldometers.info/coronavirus/ (2021年2月17日)
新型コロナが発生して間もない頃であれば仕方が無い面があります。
欧米のように感染爆発が起こり、大量検査が必要となり、医療リソースの確保が間に合わないというのであれば理解できます。
しかし、新型コロナが発生し、1年以上経ち、世界146位の検査数で医療リソース不足に陥っているのであれば明らかに政府の責任です。
このような状況で政府の責任を追及せずにPCR検査の拡充を牽制するのは筋が通りません。
仮に現在マスク不足になった場合に「マスクは有限。リスクの高い人だけがマスクを使用すべき」というのは正しい主張でしょうか?
兵站に例えて「兵站を無駄遣いするな」と主張する人もいますが何故、政府に兵站の増強を要求しないのでしょうか?
兵站の増強を主張せずに発展途上国並みの兵站の範囲内で戦えというのであれば暴論です。