コロナウイルス感染症

「新型コロナPCR検査とインフルエンザ抗原検査の感度が同程度」という説を検証

日本では感染症専門医の肩書を持つ人が不適切な説をバラまいています。
今回は「新型コロナPCR検査とインフルエンザ抗原検査の感度が同程度」という説を検証します。

「新型コロナPCR検査で事前確率が低いほど偽陽性が増える」説を検証 岩田健太郎氏が下記のツイートを行っていました。 今回、きちんとしたまとめを作り、終了とします。 https...

感度の定義

随分前に新型コロナPCR検査の陽性、陰性の定義について記事にしました。

コロナウイルスPCR検査の陽性、陰性の定義の問題点 PCR検査の偽陰性について記事にしました。 https://tatsuharug.com/pcr-false-negative ...

再度、整理します。

臨床感度

近頃は臨床感度という言葉を使われることが多いようです。
臨床感度は「検体採取」→「検体輸送」→「検査室での検査」という全ての工程を含んだ感度として定義されているようです。

この定義を用いる場合、検体採取ミスでの陰性や検体採取タイミングが原因での陰性は偽陰性とされます。

検査室感度(実験室感度)

検査室感度(実験室感度)は「検査室での検査」の感度として定義されているようです。

この定義を用いる場合、検体採取ミスは議論の対象外となり、考慮されません。
従って検査室感度>臨床感度となります。

「新型コロナPCR検査とインフルエンザ抗原検査の感度が同程度」

超重要‼︎ 新型コロナ対策の戦略は「正しく診断」ではなく、「正しく判断」【岩田健太郎教授・感染症から命を守る講義⑩】

じつは病院で使うインフルエンザの迅速キットって、結構間違えるんです。新型コロナウイルスのPCRと同じく6割程度の感度しかありません。だからインフルエンザの迅速キットで陰性でも、やっぱりインフルエンザに罹っている人はいくらでもいる。

https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/373401/2/
岩田健太郎

岩田氏は新型コロナPCR検査の感度は60%程度、インフルエンザ抗原検査の感度は60%程度と考えているようです。
似たようなことを言っている人がいます。

新型コロナとの戦い、日本に希望は見えてきたか?

:それはちょっと面白い視点です。インフルエンザウイルスの臨床の現場では、ほとんどの場合は「迅速抗原検査」を行います。抗原検査は、まず検査の精度というか、感度(陽性の人に対して、正しく「陽性」の結果が出せる確率)に関しては、今、行われている新型コロナウイルスに対するPCR検査ぐらいなものなんですね。

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00164/091000006/
峰宗太郎

新型コロナとの戦い、日本に希望は見えてきたか?

:つまり、インフルエンザウイルスへの抗原検査というのは、特異度、感度とも新型コロナのPCR検査と大差ないんです。

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00164/091000006/?P=2
峰宗太郎

インフルエンザ抗原検査

検査室感度

インフルエンザ迅速検査キットの現状

2012年に発表されたメタアナリシス(複数の論文をまとめて統計学的に有効性を推測する手法でエビデンスレベルが高い)によれば、RT-PCR と迅速検査キットでのインフルエンザ診断の比較では、インフルエンザ A 型の感度は 64.6%(95%信頼区間 59.0~ 70.1)、特異度は 99.1%(95%信頼区間 98.7~99.4)、インフルエンザ B 型の感度は 52.2%(95%信頼区間 45.0~59.3)、特異度は 99.8%(95%信頼区間 99.7~99.9)でした(Ann Intern Med 156:500-511, 2012)。

https://www.h-osaki.jp/wp/wp-content/uploads/2016/04/ICT%E3%81%A0%E3%82%88%E3%82%8A91%E5%8F%B7%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%AB%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B6%E8%BF%85%E9%80%9F%E6%A4%9C%E6%9F%BB%E3%82%AD%E3%83%83%E3%83%88%E3%81%AE%E7%8F%BE%E7%8A%B6201603.pdf

インフルエンザ抗原検査の感度は、それよりも感度の高い(ゴールドスタンダードである)検査法と比較し、決定されています。
上記の論文ではインフルエンザRT-PCR検査とウイルス培養との比較から、インフルエンザ抗原検査の感度を求めています。
これは検査室感度となります。

臨床感度

インフルエンザ抗原検査の臨床感度はインフルエンザRT-PCR検査の臨床感度とインフルエンザ抗原検査の検査室感度から求めることができます。
ところがインフルエンザRT-PCR検査の臨床感度は不明です。(私が調べた範囲ではわかりませんでした)

仮にインフルエンザRT-PCR検査の臨床感度を90%とした場合、インフルエンザ抗原検査の臨床感度は次のようになります。
インフルエンザA型:64.6×0.9 = 58.1%
インフルエンザB型:52.2×0.9 = 47.0%

新型コロナPCR検査

検査室感度

https://www.niid.go.jp/niid/images/lab-manual/2019-nCoV-17-20200430.pdf

ここに挙げられている新型コロナPCR検査キットのうち、陽性一致率100%は29キット、90%は7キットです。

このことから新型コロナPCR検査の検査室感度は国内に流通する一般的な検査キットを用いた場合、最低でも90%以上はあると考えられます。

臨床感度

新型コロナPCR検査の臨床感度については諸説あります。
本題では無いので新型コロナPCR検査妨害論者がよく用いる70%とします。

コロナウイルスPCR検査の感度について 北大病院の調査で唾液検体を用いたコロナウイルスPCR検査の感度が90%であるということがわかりました。 PCR「唾液検査」も精度...

新型コロナPCR検査とインフルエンザ抗原検査の感度を比較

インフルエンザA型抗原検査インフルエンザB型抗原検査新型コロナPCR検査
検査室感度64.6% 52.2% 90%以上
臨床感度不明
(58.1% ※)
不明
(47.0% ※)
70%

※インフルエンザRT-PCR検査の臨床感度を90%とした場合

新型コロナPCR検査とインフルエンザ抗原検査の感度を比較する場合、検査室感度同士、臨床感度同士を比較する必要があります。

「新型コロナPCR検査とインフルエンザ抗原検査の感度が同程度」というのは検査室感度と臨床感度の違いがわかっていないか、わざと混同しているかのどちらかでしょう。

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