コロナウイルスPCR検査の検査数は9月に入ってから横ばいの状態が続いています。
多い日で3万件の検査数になっています。
9月10日の検査数は18,909件で内訳は国立感染症研究所26件(0.14%)、検疫所1,544件(8.2%)、地方衛生検査所・保健所2,811件(14.9%)、民間検査会社10,781件(57.0%)、大学等1,339件(7.1%)、医療機関2,408件(12.7%)となっています。
https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/
順位 | |
ガーナ | 150 |
ガイアナ | 151 |
日本 | 152 |
パキスタン | 153 |
スリランカ | 154 |
https://www.worldometers.info/coronavirus/#countries
世界と比較すると検査数は未だに発展途上国並みです。
政府は検査を増やす気は無いのでしょう。
検査数を増やすには全自動検査機の導入が必須になりますが日本ではどのようになっているのでしょうか?
Contents
プレシジョン・システム・サイエンス(PSS)
日本の企業です。
フランス大使から感謝状を貰いましたが日本では使用できませんでした。
性能
http://www.pss.co.jp/product/genelead/pdf/20200515.pdf
価格
参考価格は8検体向けが850万円、12検体向けが1250万円、24検体向けが2000万円。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61330150Z00C20A7L71000/
最近の動向
全自動PCR検査装置量産に向け新工場、PSSが生産能力3倍に
https://newswitch.jp/p/23364
プレシジョン・システム・サイエンス(PSS)は、全自動PCR検査装置を量産化するため、秋田県大館市に新工場を建設する。生産能力を現状比3倍以上に引き上げる。2021年にも稼働させ、現在開発を進めている、1台で24検体を約2時間で検査できる機種を中心に生産する計画。新型コロナウイルスの感染拡大に収束の兆しが見えない中、迅速な検査体制を求める国内外の需要に対応していく。
全自動PCR検査装置は人手による作業を介さないのが特徴。検査者の安全性を確保できるだけでなく、人的なミスによる誤判定も大幅に低減できる。新工場で生産予定の新機種は大病院から検査センター向けで、装置1台を24時間稼働した場合、最大で2880検体の処理が可能だ。
検査装置製造のPSS、全自動PCR機 国内投入
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61330150Z00C20A7L71000/
8検体向けと12検体向けはすでに国内の公的機関が医療機器と認め、検査結果の有効性も一部試薬では厚労省などから評価を得ている。販売時期は未定だが、全国300カ所の医療・検査機関への導入を目指す。製造子会社や協力工場での生産増強とともに販売体制の拡充を進める。
PCR自動化装置の導入を進めています
https://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~ict/clm/?p=371
病院検査部には、8時間で約300件の処理が可能な全自動検査装置(パンサーシステム、ホロジックジャパン)をスクリーニング検査に、8時間で約100件の検査が可能な汎用全自動検査装置(geneLEAD VIII、プレシジョン・システム・サイエンス)を臨床診断用として使用するべく準備を進めております。
もう少しで認可が下りるのかもしれません。
ベクトン・ディッキンソン(BD)
BD マックス™ 全自動核酸抽出増幅検査システム(BD マックス™ SARS-CoV-2)
性能
・2.5時間で24検体を検査
・米国、欧州、アジア等に数百台の納入実績
・認可済
https://www.bdj.co.jp/press/20200626.html
https://www.bdj.co.jp/micro/products/bdmax.html
https://www.mhlw.go.jp/content/000643762.pdf
セフィエド
GeneXpert®システム(SAR-CoV-2 Xpert Xpress)
性能
・検査時間は前処理1分、測定時間45分程度
・一番大型のモデルでは、80件の同時検査が可能→1時間で80検体とすると12時間で960検体
・GeneXpertは世界中に2万3000台が販売されており、そのうち5000台はアメリカ
・認可済
http://www.beckmancoulter.co.jp/press/200323.html
https://gigazine.net/news/20200323-diagnose-covid-19-in-45-minutes/
ホロジック
パンサーシステム(Aptima SARS-CoV-2)
性能
・核酸増幅法のひとつであるTMA法(Transcription Mediated Amplification)を使用
・検査時間は約3.5時間(核酸抽出行程含む)
・1度に250検体を検査可能
・1日に1000検体を検査可能
・日本の大手検査センターを中心に約35台が稼働
・認可済
https://hologic.co.jp/products/diagnostics/aptima_sars_cov-2.html
https://www.chemicaldaily.co.jp/%E3%83%9B%E3%83%AD%E3%82%B8%E3%83%83%E3%82%AF%E3%80%81%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E6%A4%9C%E6%9F%BB%E8%96%AC%E3%82%92%E7%99%BA%E5%A3%B2%E3%80%81%EF%BC%91%E6%97%A5%EF%BC%91%EF%BC%90%EF%BC%90%EF%BC%90/
ロシュ
コバス6800・コバス8800(SARS-CoV-2)
性能
・コバス6800は24時間で1500件、コバス8800は24時間で4000件の検査が可能
・国内にコバス6800、コバス8800合わせて35台(平成31年の段階でコバス6800は23台、コバス8800は10台)
・コバス6800は4320万円
・認可済
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57773940X00C20A4XB0000/
https://www.info.pmda.go.jp/rgo/MainServlet?recallno=2-8923
https://www.kumamoto-u.ac.jp/daigakujouhou/jouhoukoukai/zaimu/zaimu_file/h26zaimusyohyo.pdf
国内の全自動検査機台数
台数 | 1日の検査数 | 1日の検査数合計 | |
コバス6800 | 25※ | 1,500 | 37,500 |
コバス8800 | 10※ | 4,000 | 40,000 |
パンサーシステム | 35 | 1,000 | 35,000 |
合計 | 112,500 |
※国内に合わせて35台(平成31年の段階でコバス6800は23台、コバス8800は10台)なので残りの2台をコバス6800とした場合
日本国内で確認できている全自動検査機をフル稼働させれば1日11万2,500件の検査が可能です。
韓国の検査体制
【出来るPCR検査なぜやらぬ? 海外で大活躍する国内メーカーの検査機
https://www.chosyu-journal.jp/shakai/18301
韓国最大級のPCR検査機関では、1日1万件のPCR検査を実施している。それを可能にしているのは自動化された検査システムだ。96人分の検体を同時に解析できる装置が一つの施設に55台ある。かかる人手はわずか27人だ。また、PCR検査にかかせないのが試薬で、韓国では国内で大量に生産している。1カ月当りの製造量は約2000万人分。5%で国内需要をまかなえる。95%は海外に輸出しており、アメリカやイタリア、ブラジルなど62カ国に計1200万人分を輸出している。日本の機関からも問い合わせがあるというが、日本政府が試薬に対する承認を出していない。
55台で1日1万件なので1台あたり192件、1日2回検査を行っていることになります。
1台で1日192件ですので検査機(HAMILTON社製)の能力はコバス程ではなさそうです。
韓国は検査試薬を国内で生産していますので試薬不足で困ることは無いでしょう。
https://pdf.medicalexpo.com/ja/pdf-en/hamilton-robotics/microlab-star-line/94379-159297.html
全自動検査機の問題点
米で再びコロナ検査不足、「高度な自動化」が裏目に
https://www.newsweekjapan.jp/headlines/world/2020/08/286758.php
米国の新型コロナウイルスの検査能力は、世界的にみてどこにも劣らぬ能力を持っているはずだった。しかし、各地の研究所では処理が滞り、多くの患者が判定が出るまでに1週間、あるいはそれ以上待たされる事態が再び生じている。
この危機の根底には、公的、民間を問わず研究所が自動検査機に依存しており、その専用試薬キットやツールを使わざるを得ないという事情がある。そうしたキットやツールを製造しているのは、ごく少数のメーカーに限られている。
ロイターは16の病院や大学の付属研究機関に取材、州や市の調達計画を分析。全国的に感染率が上昇する一方、試薬キットなどの供給体制にボトルネックがあるため、多くの研究所で検査体制がフル稼働に遠く及ばない状態にあることが明らかになった。
試薬の供給がボトルネックにならないために大量検査を行う場合は試薬を国内生産する必要があります。
厚生労働省のツイート
緊急事態宣言が発令されるような異常事態にもかかわらず通常通りの活用を続けるそうです。
厚労省の主張を検証します。
B型肝炎、C型肝炎検査
https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/000487984.pdf
black7b5544さんが調べてくれていました。
B型肝炎、C型肝炎の検査数は年間合わせて200万件です。
コバス6800とコバス8800を1台ずつ1年間フル稼働させると200万件の検査が可能です。
HIV検査
自治体が行っているHIV検査は抗体検査です。
参考情報2 自治体が実施したHIV抗体検査と相談:自治体が実施する保健所等におけるHIV抗体検査実施件数は, 2018年には130,759件で, 前年(123,432件)より増加した(図6)。陽性件数は385(2017年463), 陽性率は0.29%(2017年0.38%)であった。うち保健所での検査陽性率は0.24%(233/97,107), 自治体が実施する保健所以外での検査における陽性率は0.45%(152/ 33,652)で, 後者での検査の陽性率が高かった。また, 2018年の相談件数は127,830件で前年(123,768件)より増加した。
https://www.niid.go.jp/niid/ja/aids-m/aids-iasrtpc/9170-476t.html#:~:text=%E6%9C%AC%E9%82%A6%E3%81%AE2018%E5%B9%B4%E3%81%AE,AIDS%E6%82%A3%E8%80%85377%EF%BC%88%E7%94%B7%E6%80%A7353%2C
コバスは抗体検査用の機械ではありませんので使用目的が異なり関係ありません。
用途
https://diagnostics.roche.com/jp/ja/products/params/cobas-hiv-1-hiv-2-qualitative-test.html
cobas® 6800/8800システムで使用するcobas® HIV-1/HIV-2定性核酸検査は、ヒト血清、血漿、乾燥血液スポット(DBS)中のヒト免疫不全ウイルス(HIV)1型(HIV-1)と2型(HIV-2)の定性検出と区別のためのin vitro核酸増幅検査です。
この検査はHIV-1/HIV-2の診断の補助として使用することを目的としています。HIV-1またはHIV-2核酸の検出は、それぞれHIV-1またはHIV-2感染を示します。HIV-1またはHIV-2に対する抗体を持たない人の血漿または血清中にHIV-1またはHIV-2核酸が存在することは、急性または一次感染を示します。HIVに感染した母親から生まれ、HIV-1またはHIV-2に対する母親由来抗体を持つ乳児では、HIV核酸の存在は活動性感染を示します。cobas® HIV-1/HIV-2定性は、HIV-1またはHIV-2抗体または抗原に反応性の検体を持つ人のHIV-1またはHIV-2感染を確認するためにも使用される場合があります。
これらのことから自治体が行っているB型肝炎、C型肝炎、HIVの検査はコバス6800、コバス8800を1台ずつ使用することで間に合います。
コバス6800(24台)、コバス8800(9台)、パンサーシステム(35台)をフル稼働させれば1日10万7,000件の検査が可能です。
厚労省のツイートは不可解です。
検査を増やすつもりが無い(無かった)のは明らかです。
検査数を増やすには
日本国内で確認できている全自動検査機をフル稼働させれば1日10万7,000件の検査が可能です。(B型肝炎、C型肝炎、HIV検査を今まで通り行った場合)
政府(厚労省)はこれらをフル稼働させるつもりはありませんので自治体頼みになります。
アメリカは自動検査機、中国はプール方式というように大量検査の方法が異なります。
一番手っ取り早いのはコバスもしくはパンサーシステムの導入でしょう。
コバス6800は1台4320万円ですので1億円あれば2台購入でき、1日3,000件の検査が可能です。 (世田谷方式はコバス6800を2台購入すれば可能)
予算とやる気のある自治体に期待する他ありません。
仮に47都道府県で2台ずつ購入すれば全国で94台、1日14万1,000件の検査が可能となります。
(費用は40億6,000万円。アベノマスクは260億円※、Go To トラベルは1兆3500億円※2)
大量検査を行う場合は試薬の確保という問題は残ります。
現在の日本の検査数は発展途上国並みですので当分の間は試薬不足の心配をする必要は無いでしょう。
※ https://mainichi.jp/articles/20200601/k00/00m/010/103000c
※2 https://news.yahoo.co.jp/byline/eguchishintaro/20200822-00194538/