日本のコロナウイルス対策には大きな疑問を持っていました。
気になる記事を発見しましたので検証してみます。
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重症者を検知器とするクラスター対策
日本のいわゆる「クラスター対策」というのは、社会に偏在する重症化リスクのある者を、いわば検知器としてつかう技法なのですね。クラスターを引き起こす感染者は症状がなかったり軽かったりするので、それを検査して摘発するのはむずかしい。しかしクラスターが連鎖して感染が拡大すればどこかで重症化する患者が出てきてみつかるので、そこからさかのぼって感染連鎖を追えば、事後的にクラスターを見つけることができる、と。
https://remcat.hatenadiary.jp/entry/20200607/cluster
このような対策をとるということは、クラスターを発見するには重症者の発生をまたなければならないことを意味します。これまで、高熱が数日以上つづき、病院に運び込まれて特徴的な症状が確認され、医師が何度も要請してやっと検査が受けられる、といった現状が報じられてきました。そうやって対象を絞り込めば、いわゆる「事前確率」が高いので効率よく感染者がみつけられるのですが、みつかった重症者はかなり高い確率でそのまま死亡してしまうわけです。
一つずつ検証します。
軽症、無症状の感染者の発見を放棄した対策
以前記事にしましたが再度掲載します。
1人当たりが生み出す2次感染者数が少ない場合、この感染者が原因でクラスターが発生する確率は低いと考えられます。
日本のクラスター対策は、こういう感染者を検出する必要が無いという考えです。
(上図の左側にある少人数に感染させる人達は、調べる必要が無いという考えです)
つまり、軽症者や無症状の感染者の発見は初めから放棄しています。
1人当たりが生み出す2次感染者数が多い感染者(スーパースプレッダー)はウイルス排出量が多く、必然的に周囲に感染者が増えます。
このようなスーパースプレッダーだけ潰していけば良いというのが日本のクラスター対策です。
クラスター対策班がスーパースプレッダー等の一部の感染者しか見つける必要が無いと考えているのは明白です。
実際の感染者数を把握するつもりも無いのです。
それは次のような報道からも明らかです。
実際の感染者数は「現在の10倍以上」 北大教授見解
日本経済新聞 2020/4/25
新型コロナウイルスの感染者数について、政府の専門家会議に試算を提示している北海道大学の西浦博教授(理論疫学)は25日までに、「現在確認されている感染者数は氷山の一角。実際は10倍以上かもしれない」との見解を示した。
事後的にクラスターを見つける対策の問題点
1人当たりが生み出す2次感染者数が多い感染者(スーパースプレッダー)はウイルス排出量が多く、必然的に周囲に感染者が増えます。
ウイルス排出量が多い人からの感染の場合、重症化のリスクが高いことがわかっています。※1
事後的にクラスターを見つける対策は、重症者が発生しやすいリスクを内在しています。
つまりクラスターを発見した時には重症者が含まれる可能性が高いということです。
その結果として、日本のクラスター対策は重症者を検知器とする対策となってしまっています。
※1https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/report/t344/202006/565941.html
37.5度以上4日間の発熱を受診目安としたのは「事前確率」を上げるため
風邪の症状や37.5℃前後の発熱が4日程度(高齢者や基礎疾患等のある方は2日程度)続いている場合などは「新型コロナ受診相談センター(帰国者・接触者相談センター)」にご相談ください。
大阪府 知事からのメッセージ 2020年3月20日
現在は撤回されていますがこのような受診目安を設定したのはコロナウイルスPCR検査の「事前確率」を上げるためであったと考えられます。
神奈川県医師会等がベイズの定理を用いて不適切な計算(特異度を99%とする)を行い、事前確率を問題視していたのは、このような受診目安を正当化する狙いがあったと考えられます。
このような受診目安は患者の重症化を引き起こし、医療機関での多くの検査拒否、診察拒否を招きました。
「高熱出てもPCR検査が受けられない…」 下関の医療関係者たちが語る検査抑制の“鉄壁のガード”
長周新聞 2020年5月19日
市内の開業医に実態を聞くと、「医師の総合的判断といわれるものの、PCR検査を受けるのは簡単ではない。疑いがある患者すべてをPCR検査すれば県保健所がキャパオーバーになるため、保健所からは“念のための検査はやめてほしい”といわれている。38℃、39℃の不明熱が続いても、肺炎や呼吸器症状がなければならない。肺炎でも細菌性でないことが明らかでなければ検査対象にはならない。黄色信号ではなく、確実に赤信号でなければ検査にはならない。ただ、医者として9割方大丈夫と思っても1割の不安が残る。100%疑いがないといい切れないからこそ検査があるはずだ。本当は韓国のようにどんどん検査して感染者を見つけなければいけないのだが、逆に検査を受けるまでに何重ものハードルがある」と語る。
28歳急死の勝武士は病院たらい回し…新型コロナ“突然悪化”の恐怖
日刊ゲンダイ 2020年5月14日
勝武士は先月4日から38度以上の発熱があり、高田川親方らが6~7日にかけ、保健所や近隣の複数の病院に診察を頼んだが、受け入れを断られたという。同8日、血たんが出たため、救急車で搬送されたが、受け入れ先が見つからず、たらい回しされ、夜になって都内の大学病院に入院した。
翌9日、症状が悪化したため、別の大学病院に転院し、同10日、PCR検査で陽性が確認された。入院から11日後の同19日、さらに症状悪化がみられたため、集中治療室で治療が続けられていた。
検査の効率性を高めるのは必要なことですが、現在の日本のクラスター対策は患者を置き去りにした対策です。
検査の効率性を考えるのは感染を収束させた後の話です。
必要な人が検査を受けられず、感染経路不明者が多数出ている状況で考えるべきことではありません。
クラスター対策班の自画自賛
5月28日のインタビューで専門家会議は対策を自画自賛した上で次のように言っています。
新型コロナの感染爆発はオール日本で回避できた-専門家会議
https://news.yahoo.co.jp/articles/de26c1af9d2cb7944967393bbd5a6c37f530d414?page=4
政府の専門家会議は、25日までの緊急事態宣言により、市民や事業者など「オールジャパンの協力」でオーバーシュート(爆発的患者急増)を回避できたとし、国民の高い健康意識や積極的なクラスター対策がウイルスの封じ込めに寄与したと評価する。
一方、検査体制全般を公衆衛生学的な観点から俯瞰(ふかん)すれば、検査の絶対数は圧倒的に諸外国に比べ少ないが、例えば報告された死亡者数当たりの検査数は日本の方が多くなっている。さらに東京都の検査陽性率をみれば、一時期は30%を超えていたが、最近は1%以下となっている。日本全国でみても、1%以下となっており、現在のところ諸外国と比べても低く、検査体制は合理的と考えられる。
おそらく今後も対策を改めるつもりは無いのでしょう。
まとめると
1人当たりが生み出す2次感染者数が多い感染者(スーパースプレッダー)はウイルス排出量が多く、必然的に周囲に感染者が増えます。
こういうスーパースプレッダーだけ潰していけば良いというのが日本のクラスター対策です。
しかし、ウイルス排出量が多い人からの感染の場合、重症化のリスクが高いことがわかっています。
その結果、日本のクラスター対策は重症者を検知器とする対策となってしまっています。
また検査の有効性を高めるため、軽症者や無症状者への検査は極力行わない対策を取っています。
専門家会議のこのような人命軽視、非人道的なクラスター対策を日本国民は許容しているのでしょうか?
医師達を中心としたこのような人命軽視、非人道的な感染対策は許されたものではないと考えます。