コロナウイルスPCR検査に関する様々な間違った情報があります。
PCR検査を忌避するかのようにPCR検査の問題点を指摘する医師もいます。
ヒトの病院ではPCR検査は行わないのでしょうか?
動物病院では日常的にPCR検査を行っています。
動物病院で行うPCR検査についてまとめます。
Contents
猫伝染性腹膜炎(FIP)
FIPが疑われる場合は必ずPCR検査を行います。抗体検査等も行い、総合的に診断します。
バベシア症
赤血球に寄生するバベシア原虫による感染症です。マダニによって媒介されます。貧血、黄疸、脾腫等を引き起こします。
診断は血液塗抹標本でのバベシア原虫の発見、PCR検査です。血液塗抹標本で見つからなかった場合でも否定はできませんので、PCR検査は必ず行います。
ヘモプラズマ症
赤血球に寄生するヘモプラズマによる感染症です。マダニによって媒介されると考えられています。貧血、黄疸、発熱等を引き起こします。
診断は血液塗抹標本でのヘモプラズマの発見、PCR検査です。血液塗抹標本で見つからなかった場合でも否定はできませんので、PCR検査は必ず行います。
猫免疫不全ウイルス感染症
院内で行う猫のウイルス検査に猫免疫不全ウイルス抗体検査があります。
生後6ヶ月未満の猫では母親からの移行抗体の影響で抗体が陽性となる場合があります。生後6ヶ月未満の猫で抗体検査が陽性となった場合、感染確認のためにPCR検査を行うことがあります。
肥満細胞腫
犬の肥満細胞腫は非常に悪性度の高い腫瘍です。治療は一般的には外科的切除となります。
完全切除が難しい症例や悪性度の高い症例の場合、PCR検査を行い、c-KIT遺伝子の変異を調べます。変異が確認された場合はイマチニブ等の分子標的薬の使用を検討します。
リンパ系腫瘍
犬では皮膚、猫では消化器のリンパ腫が多いです。
PCR検査で腫瘍化したリンパ球のモノクローナルな増殖を検出します。T/B分類も同時に行うことができます。
腫瘍専門医ならば必ず行うと思います。
変性性脊髄症(DM)
コーギーに多くみられる脊髄疾患です。確定診断は病理組織診断となりますので生前診断は確立されていません。SOD遺伝子の変異が発症に関係していると考えられています。PCR検査を行い、陽性の場合はDMを発症する素因があると考えます。
ピルビン酸キナーゼ欠損症
常染色体劣性の遺伝性の疾患です。非常に稀です。
猫で非再生性貧血、軽度の黄疸、脾腫がみられた症例でPCR検査を行ったことがあります。
結果は陽性で脾摘により、症状は改善しました。
犬下痢パネル、猫下痢パネル
犬や猫の腸炎を起こす感染症の感染の有無を一度に検査することができます。
アイデックスでは犬で10項目、猫で10項目の感染症をPCR検査で調べることができます。
あまり使ったことはありません。
外注検査になりますので急性腸炎の場合は結果が出るまでに治癒してしまうからです。
確定診断を行うためには本来は使用すべきであると考えます。
犬呼吸器疾患パネル、猫呼吸器疾患パネル
犬や猫の呼吸器疾患を起こす感染症の感染の有無を一度に検査することができます。
アイデックスでは犬で12項目、猫で6項目の感染症をPCR検査で調べることができます。
あまり使ったことはありません。
確定診断を行うためには本来は使用すべきであると考えます。
ペットショップが行うPCR検査
病気の診断だけでなく、繁殖に用いる、用いないの判断のためにPCR検査を行う場合もあります。
近頃はペットショップが無料でPCR検査を行っているようです。
https://www.pet-coo.com/buy/genetic/
まとめると
当院は田舎にあるため検体を郵送する必要があり、PCR検査は結果が出るまでに時間がかかります。
土地柄にもよるのでしょうが猫伝染性腹膜炎やヘモプラズマのPCR検査は日常的に行います。
当院が都会にあれば下痢パネルや呼吸器疾患パネルを積極的に利用していると思います。
確定診断としてPCR検査は非常に有用です。
確定診断をせずに積極的な治療はできませんので多くの動物病院でPCR検査は日常的に使用されていると思います。