コロナウイルス感染症

コロナウイルス抗原検査1日20万件の目標について

政府はインフルエンザ流行期に備え、コロナウイルス抗原検査(簡易キット)を1日20万件に大幅拡充する目標を掲げています。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/th_siryou/houkoku_r020828.pdf

抗原検査キット(承認済)

薬事承認を受けている抗原検査キットは3種類あります。
このうち簡易キットは2種類です。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11331.html

エスプライン SARS-CoV-2 富士レビオ株式会社

国内臨床性能試験

陽性一致率37%(10/27)
陰性一致率98%(44/45)
100コピー/テスト以上の検体に対しては陽性一致率83%(5/6)

国内検査検体を用いた試験

陽性一致率66.7%(16/24)
陰性一致率100%(100/100)
100コピー/テスト以上の検体に対しては陽性一致率83%(15/18)

平均

陽性一致率51.0%(26/51)
陰性一致率99.3%(144/145)

https://www.mhlw.go.jp/content/11124500/000642328.pdf

クイックナビ-COVID19 Ag デンカ株式会社

国内臨床検体を用いた相関性試験

陰性一致率100%(98/98)

国内検査検体を用いた試験

陽性一致率53.4%(55/103)
陰性一致率96.4%(27/28)
100コピー/テスト以上の検体に対しては陽性一致率92.3%(24/26)

平均

陽性一致率53.4%(55/103)
陰性一致率99.2%(125/126)

抗原検査キット(未承認)

BinaxNow アボット社

感度97.1%
特異度98.5%

同社と米国の主要研究機関がFDAに提出した臨床試験データでは、新型コロナウイルス発症7日以内の被験者がBinaxNOWで検査した場合、偽陰性を排除し、真陽性である確度を意味する感度が97.1%以上だった。偽陽性を除外し、抗体が特定の抗原にしか反応しないことを指す特異度は98.5%。

https://sustainablejapan.jp/2020/09/02/abbott-binaxnow/53416

説明を見ると感度が97.1%、特異度が98.5%となっています。
感度が97.1%というのは信じがたいですが・・・

陽性一致率から感度を決定

陽性一致率はPCR検査に対してのものですのでPCR検査の感度、特異度を決めると抗原検査の感度、特異度が決まります。
ここではPCR検査の感度を90%、特異度を99.997%とします。

データから見るコロナウイルスPCR検査の特異度 コロナウイルスPCR検査の特異度を99%や99.9%という不適切な仮定で計算し、無症状者に対するPCR検査に反対している医師達の記事を...

エスプライン SARS-CoV-2 富士レビオ株式会社

平均

陽性一致率51.0%(26/51)→感度45.9%
陰性一致率99.3%(144/145)→特異度99.3%

クイックナビ-COVID19 Ag デンカ株式会社

平均

陽性一致率53.4%(55/103)→感度48.1%
陰性一致率99.2%(125/126)→特異度99.2%

1日に抗原検査を20万件行うと

感染が制御されている状況(罹患率0.1%)で20万件の検査を行った場合、偽陽性数、偽陰性数は次のようになります。

検査方法感度(%)特異度(%)陽性一致率(%)偽陽性数偽陰性数
エスプライン45.999.36.21398.6108.2
クイックナビ 48.199.25.71598.4103.8
BinaxNow 97.198.56.129975.8
RT-PCR9099.99796.86.020

9月10日の日本の陽性率は3.2%(検査数22306、陽性者数709)です。
罹患率3.2%では次のようになります。

検査方法感度(%)特異度(%)陽性一致率(%)偽陽性数偽陰性数
エスプライン45.999.368.41355.23462.4
クイックナビ 48.199.266.51548.83321.6
BinaxNow 97.198.568.22904185.6
RT-PCR9099.99799.95.8640

感染が拡大している状況(罹患率7%)では次のようになります。

検査方法感度(%)特異度(%)陽性一致率(%)偽陽性数偽陰性数
エスプライン45.999.383.213027574
クイックナビ 48.199.282.014887266
BinaxNow 97.198.583.02790406
RT-PCR9099.99799.95.61400

抗原検査キットのみで診断を行った場合、感染状況に関係無く1日1000件以上の偽陽性が出る可能性があります。
また罹患率が上がると偽陰性の数が増えます。

抗原検査の有効な使い方

内山先生の提言のように週2回検査を行うことで感度の低さを補うことが可能です。
特別な機械は必要ありませんので手軽に検査を行うことができるという利点があります。
抗原検査も使い方次第では役に立つ可能性があります。

しかし、不可解なのはベイズの定理を用いてPCR検査抑制論を主張していた人達です。

ベイズの定理を悪用し、コロナウイルスPCR検査の有用性を否定する医師達 以前ベイズの定理を用いて事後確率を計算する時の注意点を記事にしました。 https://tatsuharug.com/bayes...

彼らは抗原検査の有用な使い方を提案するでもなく、抗原検査抑制論を主張するわけでもなく、だんまりを決め込んでいます。
一体彼らのPCR検査抑制論の目的は何だったのでしょうか?

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