コロナウイルス感染症

コロナウイルスPCR検査の偽陰性者が感染を広げるという主張について

コロナウイルスPCR検査で偽陰性であった人が安心して感染を広げると主張する人達がいます。
彼らの主張を検証します。

和歌山県の事例

和歌山県は無症状の濃厚接触者についても徹底的に検査を行っています。
誰から感染したのかもわかるように情報公開されていますので偽陰性者が誰かに感染させた事例があるのかを調べました。

9月30日までの偽陰性事例は合計28件でした。

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28件のうち、偽陰性者が誰かに感染させたと言えそうなのは次の2例でした。

1例目

7月30日に県外陽性者の濃厚接触者として2回目の検査を行い、陽性となっています。
1回目の検査が偽陰性でそれが原因で同居者に感染させたと言って良いのかは判断が難しいです。

2例目

7月30日に2度目の検査を行った理由は不明です。
偽陰性が原因で感染させたと言って良さそうなのはこの事例のみです。
不思議なことに2例の4人全員1度目の検査で陰性となっています。

和歌山県では242人の感染者が出ていますが偽陰性が原因で他の人に感染させたと確認できたのは2例(明確なのは1例)のみです。(9月30日まで)
感染経路不明者もいますので偽陰性者が感染させた例はこれ以外にもあると思いますが、その数が無視できない程多いとは考えにくいです。

感染者に占める偽陰性者の割合

感染者は「検査で確定した感染者」「偽陰性者」「検査されていない感染者」に分けられます。
それぞれの割合を推測します。
検査感度を90%とします。

日付推定感染者数検査で確定した感染者数偽陰性者数検査されていない感染者数
9月24日2,371477(20.1%)56(2.4%)1,838(77.5%)
9月25日2,349570(24.3%)63(2.7%)1,716(73.1%)
9月26日2,329638(27.4%)70(3.0%)1,621(69.6%)
9月27日2,310478(20.7%)53(2.3%)1,779(77.0%)
9月28日2,293294(12.8%)32(1.4%)1,967(85.8%)
9月29日2,276531(23.3%)59(2.6%)1,686(74.1%)
9月30日2,261570(25.2%)63(2.8%)1,628(72.0%)

https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/
https://covid19-projections.com/japan

感染者捕捉率は20~25%と推測されます。

感染者に占める偽陰性者の割合は3%以下です。
(検査拡充が進めば割合が増える可能性がありますが感度90%の場合は最大でも10%です)
偽陰性者は有症状者もしくは無症状の濃厚接触者となります。

検査をされていない感染者の割合は70%以上です。
この人達は無症状者、検査を希望しても受けられない人等となります。
このうち無症状者が多くを占めると考えられますので、感染者の多くは無症状者となるでしょう。

偽陰性者は検査の必要性があり、検査を受けた人達です。
通常は偽陰性の可能性があるので注意するように指導を受けるはずです。
一方、検査をされていない無症状者は自らが感染者であるとは考えません。

感染者の3%以下(最大でも10%)の偽陰性者と感染者の大多数を占める検査を受けていない無症状者のどちらが危険でしょうか?

インフルエンザ抗原検査の偽陰性数

インフルエンザ抗原検査による偽陰性数は毎年600万件程度出ていると推測されます。
コロナウイルスPCR検査抑制論者はインフルエンザ抗原検査の偽陰性についてはほとんど何も言いません。

インフルエンザ抗原検査について調べてみました 日本ではインフルエンザの診断には抗原検査キットが広く用いられています。インフルエンザPCR検査の実施条件は重症患者のみ(※)となってい...

コロナウイルスPCR検査の運用

欧米では

日本では

https://www.sanei.or.jp/images/contents/416/COVID-19info0420koukai.pdf

日本渡航医学会、産業保健委員会によるものです。
厚生労働省による基準は見当たりませんでした。
各自治体は独自で基準を設けているようです。

https://www.pref.miyazaki.lg.jp/kansensho-taisaku/covid-19/utagai/20200808180643.html

https://www.city.itabashi.tokyo.jp/kenko/kansensho/mers/1026554/1026556/1026577.html

偽陰性者には2種類の人がいます。
濃厚接触者として検査を受けた人と接触歴不明(接触歴無し)で検査を受けた人です。
濃厚接触者として検査を受けた人は上記のように一定の基準の元、注意喚起を受けますので感染を広がる可能性は低いです。
こういう人が遊びに出かけて感染を広げることを懸念するのならば、検査陰性後の運用の厳格化を要求すべきです。

接触歴不明(接触歴無し)で検査を受けた人はプロ野球やJリーグ等の定期的なPCR検査や自費でのPCR検査を受けた人です。
こういう検査では感染者を発見し、感染拡大を未然に防いだ例はありますが偽陰性が感染を広げたという事例は目にしません。

女優・広瀬すずさん(22)新型コロナ陽性判明

新型コロナウイルスの感染が判明したのは女優の広瀬すずさん(22)です。所属事務所のホームページによりますと、広瀬さんは撮影に参加するにあたってPCR検査を受け、6日に「陽性」と判定されたということです。

https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4095888.html

接触歴不明(接触歴無し)で無症状の人が検査を受けて陽性となるのは非常に稀です。
この検査での偽陰性者数は全感染者数の1%以下ではないかと考えられます。

(現在の日本の感染者に占める偽陰性者の割合は3%以下。その3%のごく一部にすぎません)

PCR検査抑制論者は「偽陰性者が感染を広げる恐れがある」と主張し、検査の拡充を妨害してきました。
全感染者に占める割合が3%以下の偽陰性者が感染を広げるのを懸念し、感染者の多くを占める無症状者への検査を妨害するのは一体どういう理由があるのでしょうか?

接触歴不明(接触歴無し)の無症状感染者を見つけるのは効率的では無いのは確かです。
しかし、感染者の多数を占める無症状感染者を放置するようではいつになっても感染は収束しません。
世界の多くの国では検査体制を拡充し、無症状感染者発見の努力を続けています。

呆れたことにPCR検査抑制論者は未だに「偽陰性者が感染を広げる恐れがある」という主張を続けています。

「偽陰性者が感染を広げる」と主張している人達

一部を紹介します。
buzzfeedはこの主張を載せ続けています。

「経済を回すために無症状への検査拡大」専門家はどう見るか?
川崎市健康安全研究所所長 岡部信彦

PCR検査の陰性は「今、陰性である」結果に過ぎません。たぶん、一般の人の受け止め方は、「陰性だから、今日働ける」というだけではなくて、「これで1週間の休み中にどこか遊びにいける」「飲み会にも出ていいんだ」というものだと思うのです。

今日の陰性は明日の陰性を保証しないということが理解されていない。それが伝わらないまま、偽りの安心を与えてしまえば、その人が無自覚に行動して感染を拡大してしまう可能性も生まれます。

https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/covid-19-okabe-8-1

必要なのは、全ての無症状者への徹底的なPCR検査ではない。尾身会長「100%の安心は残念ながら、ない」
分科会会長 尾身茂

「偽陰性になると、本人は良かったと思って出歩く可能性がある。そうすると、感染を広げるリスクとなります」

https://www.buzzfeed.com/jp/yutochiba/senmonka-bunkakai-2-2?origin=shp

無症状の市民に幅広くPCR検査をやるのがマズいわけ
大東文化大学スポーツ・健康科学部健康科学科教授 中島一敏

「『検査が陰性だったから今日は飲みに行こうか』ということになると、偽陰性の場合は、その行動によって他の人に感染させてしまうことにも繋がりかねません。

https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/pcrtest-nakashima

コロナワクチンや抗原検査の応援団でもあるのでしょう。
国民にとってはいい迷惑です。

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