日本赤十字社は20年以上前からB型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の遺伝子検査を行っています。
日本赤十字社が行ってきた大量遺伝子検査についてまとめます。
Contents
日本赤十字社による遺伝子検査の歴史
1999年10月
HBV、HCV、HIVに対するプール検査(500検体)によるスクリーニング検査を開始
2000年2月
検体のプールサイズを50検体に変更
2004年8月
検体のプールサイズを20検体に変更
2014年8月
1検体ごとの検査を開始
参考:https://www.jrc.or.jp/mr/blood_product/safety/nat/
検査方法
全献血血液の抗体検査を行い、陰性検体に対して遺伝子検査を実施。
遺伝子検査法はTaqMan PCR法、TMA法。
(パンサーシステムやコバスを使用していると考えられます)
参考:
https://idsc.niid.go.jp/iasr/32/380/dj3805.html
https://www.niid.go.jp/niid/images/lab-manual/HIV20181031.pdf
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000057180.html
検査実績
HIV抗体、核酸増幅検査陽性率
年 | 検査実施数 | 陽性件数 ()内核酸増幅検査のみ陽性 | 陽性率% ()核酸増幅検査での陽性率% |
2000 | 5,877,971 | 67 (3) | 0.0011(0.000051) |
2001 | 5,774,269 | 79 (1) | 0.0014(0.000017) |
2002 | 5,784,101 | 82 (2) | 0.0014(0.000035) |
2003 | 5,621,096 | 87 (2) | 0.0015(0.000036) |
2004 | 5,473,141 | 92 (2) | 0.0017(0.000037) |
2005 | 5,320,602 | 78 (2) | 0.0015(0.000038) |
2000年から2005年の遺伝子検査陽性率は最大で0.000051%です。
全て偽陽性と仮定しても特異度は99.999949%となります。
(プール検査で1~3検体陽性時に偽陽性が起こるとは考えにくいですが)
HBV、HCV抗体陽性率
年 | 献血件数 | HBs抗原(%) | HBc抗体(%) | HCV抗体(%) |
1997 | 5,998,760 | 12,305(0.2) | 119,706(2.0) | 22,160(0.4) |
1998 | 6,137,378 | 10,580(0.2) | 135,117(2.2) | 21,809(0.4) |
1999 | 6,139,205 | 9,226(0.2) | 123,103(2.0) | 19,073(0.3) |
2000 | 5,877,971 | 7,758(0.1) | 108,933(1.9) | 15,489(0.3) |
2001 | 5,774,269 | 6,877(0.1) | 90,645(1.5) | 13,220(0.2) |
HBV、HCV核酸増幅検査陽性率
期間 | 検査数 | プールサイズ | HBV(%) | HCV(%) |
1999.7.1~2000.1.31 | 2,140,207 | 500 | 19(0.00089) | 8(0.00037) |
2000.2.1~2002.5.31 | 12,767,760 | 50 | 247(0.0019) | 39(0.00031) |
HBVについては2000.2.1~2002.5.31の遺伝子検査陽性率は0.0019%です。
全て偽陽性と仮定しても特異度は99.9981%となります。
HCVについては1999.7.1~2000.1.31の遺伝子検査陽性率は0.00037%です。
全て偽陽性と仮定しても特異度は99.99963%となります。
参考:http://idsc.nih.go.jp/iasr/23/269/dj2691.html
日本赤十字社による遺伝子検査についてまとめると
- 日赤は1999年以降、HBV、HCV、HIVに対する年間500万件の遺伝子検査を実施
- 検査は8ヶ所の検査所で行われ、1日あたり13,700件(1つの検査所で1日あたり1,700件)の遺伝子検査を実施
- HIV遺伝子検査については2000年から2005年の陽性率は最大で0.000051%。全て偽陽性と仮定しても特異度は99.999949%
- HBV遺伝子検査 については2000.2.1~2002.5.31の陽性率は0.0019%。全て偽陽性と仮定しても特異度は99.9981%
- HCV遺伝子検査 については1999.7.1~2000.1.31の陽性率は0.00037%。全て偽陽性と仮定しても特異度は99.99963%
- 献血血液に関する遺伝子検査は事前確率の非常に低い検査である。1999年以降年間500万件の大量検査を行い、偽陽性血液大量廃棄等の問題は生じていない(私が調べた範囲では)
参考:https://www.jrc.or.jp/mr/blood_product/safety/nat/
これらを踏まえて新型コロナPCR検査の拡充を妨害する意見を見てみます。
如何にデタラメな意見であるかがよくわかります。
平気で嘘をつく人達
必要なのは、全ての無症状者への徹底的なPCR検査ではない。尾身会長「100%の安心は残念ながら、ない」
偽陽性・偽陰性の問題については、「数は色々な点によって違うが、特異度が100%であることは、絶対ない」と語り、検査が万能でないことによって生じる課題を、以下のように語った。「ある人は99%、ある人は99.99%、99.995%と言う。はっきりとしているのは100%ではないということです。偽陽性は検査前確率(事前確率)が低くなればなるほど、増えてくる。それが、この検査の特徴です」
https://www.buzzfeed.com/jp/yutochiba/senmonka-bunkakai-2-2
2020年7月17日 Buzzfeed
無症状の方にPCR検査を拡大することの問題は?
https://note.stopcovid19.jp/n/n9d792324764a
反対に、本当は感染していないのに「陽性」と結果がでる(偽陽性)こともあります。実際には感染している確率が低い集団の場合、検査を増やせば増やすほど、偽陽性の人数も増えます。つまり、本来は必要がない多くの方々に、入院や宿泊施設での療養を求めることになってしまうのです。
コロナ専門家有志の会
身に覚えがないPCR陽性は「ほぼ間違い」であると考える根拠
PCRの感度/特異度については、医学論(Woloshin S, Patel N, Kesselheim AS. “False Negative Tests for SARS-CoV-2 Infection? Challenges and Implications.” The New England Journal of Medicine. 2020 Jun 5;0(0):null.)では「感度は70パーセント、特異度は95パーセント」と見積もっています。分科会の尾身茂先生は2020年7月6日の記者会見で、PCRの感度は70パーセント、特異度は99パーセントと仮定していました。「PCRの精度がそんなに低いはずはない」という意見もあるでしょうから、ここでもあえてPCRを過大評価して、感度90パーセント、特異度99.9パーセントと仮定してみましょう。
事前確率0.01パーセント、PCRは感度90パーセント、特異度99.9パーセント。そう仮定して、ベイズの定理の数式に当てはめて事後確率を計算すると、どうなるか。
答えは8.3パーセントです。
https://gentosha-go.com/articles/-/34029?page=2
2021年6月9日
この人達は無知であるのか、理解していながら嘘をついているのかのどちらかでしょう。
無知なためにこのようなことを言うのであれば医師でありながら「何故安全に輸血ができるのか?」について考えたことも無い人ということになります。
嘘をついているのであれば一体どういう理由があるのでしょうか?
(献血の検査に比べ、新型コロナの検査の特異度が大幅に劣ると考えるのであれば問題点はどこにあると考え、改善は不可能なのでしょうか?)