感染症

猫呼吸器疾患パネル(RealPCR検査)について

以前、猫風邪の検査、治療法について記事にしました。

獣医師が解説 | 猫風邪の原因、症状、治療法について 人が風邪をひいた場合、抗生物質を処方する病院は少なくなってきていると思います。 その理由として風邪の原因の大部分は上気道のウイル...

検査は、あまり行わずに治療を行ってきました。
猫呼吸器疾患は遺伝子検査(PCR検査)が可能ですので、使用について検討します。

猫呼吸器疾患パネル

正式名称は「猫上部呼吸器疾患/猫結膜炎パネル」となってます。

検査内容

検査内容は以下の疾患のRealPCR検査です。

  • 猫ヘルペスウイルス1(FHV-1)
  • 猫カリシウイルス(CDV)
  • Chlamydophila felis
  • Mycoplasma felis
  • Bordetella bronchiseptica
  • H1N1インフルエンザウイルス

感度、特異度

検査会社に問い合わせると感度95%、特異度100%との回答を頂きました。

検査方法

結膜スワブおよび/または深咽頭スワブとなっています。
検査結果が出るまで1~4日となってます。(プラス郵送に1日)

検査費用

費用は検査会社に払う検査費用と郵送代で原価が1万円くらいです。

検査~治療

検体を送付し、結果が出るまで待つわけにはいきませんので多くの場合、抗生物質(アモキシシリン)を処方すると思います。(8割以上治ります)
抗生物質がアモキシシリンなのは投与しやすく、副作用が出難いからです。

結果が出てからの治療変更

次のように治療を行うことになると思います。

  • 猫ヘルペスウイルス1(FHV-1) の場合
    抗生物質を中止し、インターフェロン投与
  • 猫カリシウイルス(CDV) の場合
    抗生物質を中止し、インターフェロン投与
  • Chlamydophila felis の場合
    アモキシシリンをビブラマイシンに変更
  • Mycoplasma felis の場合
    アモキシシリンをビブラマイシンに変更
  • Bordetella bronchiseptica の場合
    アモキシシリンをビブラマイシンに変更
  • H1N1インフルエンザウイルス の場合
    抗生物質を中止し、対象療法もしくはインターフェロン投与
  • いずれも検出されず
    アモキシシリン継続
  • 複数のウイルス、細菌検出の場合
    上記の治療を組み合わせる

実際に検査をしてみました

「猫上部呼吸器疾患/猫結膜炎パネル」検査をしてみました。
多頭飼いの家庭の猫で避妊手術を行う予定がありましたので麻酔中に検体を採取しました。
結膜炎、鼻炎症状は軽度でしたが結膜炎、鼻炎症状を呈する同居猫が多数いますので今後の参考になると思い、検査を行いました。(費用は病院持ちです)
猫の場合、結膜スワブは採取可能ですが覚醒時に深咽頭スワブ採取はほぼ不可能と思います。
今回は麻酔中でしたので両方採取できました。
結果は次のようになりました。

検査結果

  • 猫ヘルペスウイルス1(FHV-1) (-)
  • 猫カリシウイルス(CDV) (+)
  • Chlamydophila felis (-)
  • Mycoplasma felis (+)
  • Bordetella bronchiseptica (-)
  • H1N1インフルエンザウイルス (-)

今後の方針

抗生物質をビブラマイシンに変更します。
症状に改善が見られないようならインターフェロン投与を検討します。
同居猫で結膜炎、鼻炎症状が出た場合の参考にもなりそうです。

まとめると

治療費の面から今まではあまり使用していなかった検査です。
検体を採取し、郵送後、結果が出るまで2日でした。
不要な抗生物質を中止でき、インターフェロン投与の根拠が得られますので行うメリットがあります。
今後は積極的に利用したい検査です。

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