「緊急事態宣言は必要無かった」とK値を推奨する宮沢氏の発言で吉村知事が天を仰ぎました。
大阪はほぼ医療崩壊の状況にありましたので緊急事態宣言は必要無かったということは無いのですが、緊急事態宣言前にトレンドが変わっていたのは確かです。
その要因について検証します。
緊急事態宣言
4月7日:7都府県に緊急事態宣言発令
4月16日:全国に緊急事態宣言発令
5月14日:39県で解除
5月25日:全国で解除
トレンド変化
https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/
実行再生産数 | |
4月1日 | 2.21 |
4月2日 | 2.18 |
4月3日 | 2.27 |
4月4日 | 1.99 |
4月5日 | 1.87 |
4月6日 | 1.94 |
4月21日 | 0.9 |
4月3日あたりを境にしてトレンドが変化したように見えます。
緊急事態宣言の効果が出るにはコロナウイルス感染症の潜伏期間を考慮すると2週間程度はかかると考えられます。
ところが4月21日まで実行再生産数は低下し続け、それ以降5月29日まで1未満で推移します。
このサイトの実行再生産数は報告日ベースで求めていますので実際の実行再生産数とのズレはあると思います。
COVID-19 Projections
https://covid19-projections.com/japan
感染状況予測サイトでの実行再生産数の変化を見ます。
実行再生産数 | |
3月11日 | 1.37 |
3月12日 | 1.36 |
3月17日 | 1.35 |
3月19日 | 1.34 |
3月21日 | 1.33 |
3月22日 | 1.32 |
3月23日 | 1.30 |
4月3日 | 1.01 |
4月4日 | 0.98 |
3月中旬でトレンドが変化したように見えます。
4月4日以降、実行再生産数は6月6日まで1未満で推移します。
コロナウイルス感染症の潜伏期間を考慮すると何らかの対策を行った場合、効果が出るには2週間程度かかると考えられます。
従って3月初めに行った何らかの対策により、トレンドが変わったと考えられます。
追記
専門家会議が作成した感染日ベースの実行再生産数の推移です。
3月中旬にトレンドが変化しているように見えます。
感染日ベースのデータですので対策による影響を直接反映していると考えられます。
このデータが正しいとした場合、3月中旬に行った対策によりトレンドが変化したことになります。
しかし日本の3~4月はPCR検査を異常なほど抑制していましたのでこのデータが実態を表しているかどうかは不明です。https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000630600.pdf
以降は3月初めに行った何らかの対策により、トレンドが変わったという前提で話を進めます。
3月2日全国一斉休校
一番可能性があるのは全国一斉休校であると考えます。
マスクは欧米と比べ、感染拡大を防いだという点で大きな役割を果たしたと考えますがトレンドを変化させるほどの働きは無かったと考えます。
休校措置にエビデンスが無いということで当初は批判が目立ちました。
休校によるCOVID-19予防効果にエビデンスなし
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/eye/202004/565192.html
4月6日にLancet Child Adolesc Health誌に掲載された、COVID-19を含むコロナウイルスのアウトブレイク時に学校閉鎖が有効かを考察するシステマティックレビューを読んで、無力感にさいなまれ、さらに大きなため息をついてしまった( Lancet Child Adolesc Health. 2020 Apr 6. doi: 10.1016/S2352-4642(20)30095-X )。
同論文によると、全世界で3月18日までに休校が行われたのは107カ国。しかし、急ぎ行われた15論文の精査で、休校による感染拡大の予防効果が示されていたのは、英国で行われたモデル研究1本のみで、その論文で示された死亡者減少効果も2~4%と限定的。感染者の隔離などの他の対策と比して、その効果はとても低いとの結論だったという。
専門家会議も否定的でした。
専門家会議/学校再開「感染拡大警戒地域」は一斉臨時休校も選択肢
https://www.ryutsuu.biz/government/m040152.html
学校再開については、「現在の知見では、子どもは地域において、感染を拡大する役割をほとんど担っていないというエビデンスというか情報を得ている。従って、学校については地域や生活圏ごとの、県という大きなくくりではなくて、地域や生活圏ごとの蔓延の状況を踏まえて、判断していくことが重要だと思います。もちろん子供に関する新たな知見、エビデンスが出ていけば、適宜、修整していきたいと思う」と述べた。
小児科学会も否定的でした。
休校「効果より悪影響」、小児科学会が懸念…20歳未満の患者は4%
https://www.yomiuri.co.jp/medical/20200523-OYT1T50240/
子供は新型コロナウイルスに感染しにくい可能性が指摘されている。重症例も少ない。学校や保育園でのクラスター(感染集団)事例はほとんどなく、日本小児科学会は「学校や保育施設の閉鎖は流行阻止効果に乏しいとの推定もある。子供の心身を脅かしている」と懸念している。
米マウントサイナイ医科大は、新型ウイルスが体内に侵入するために必要なたんぱく質「ACE2」に着目した。この遺伝子の働きを示す物質が、鼻粘膜では、年齢が上がるにつれ増え、10歳未満では最も少ないとする研究結果を、20日付の米医学誌で発表した。この差が感染しにくさに影響するとみている。
重症例はまれで、死亡者は0人だった。森内浩幸・同学会理事は、「重症化につながる免疫の過剰な働きが、子供では起こりにくい可能性がある」と指摘する。
新たに判明したこと
子供のコロナウイルス量 大人の重症患者より多いと判明 米病院での研究結果
https://news.yahoo.co.jp/articles/7906dc9706f295eae0e2b0a6399e0c95de55978a
注目を集めているのは、小児科の学会誌「ジャーナル・オブ・ピディアトリック(The Journal of Pediatrics)」に掲載されたマサチューセッツ総合病院での研究結果です。それによれば、対象となった0歳から22歳までの192人のうち49人が陽性で、無症状の感染者の気道から検出されたコロナウイルスの数が大人の重症患者より多かったというのです。
子供は感染しても重症化する率は低いとはいえ、無症状でも周囲にウイルスをばらまく「サイレントスプレッダー」となる可能性があります。特に感染して最初の2日間が他人に感染させる確率が最も高くなるとしています。
感染した無症状の子供たちが最も危険な存在、直視すべき現実
https://news.yahoo.co.jp/articles/3e98f95616eaa15521c55a6bf44364b272be5359?page=1
衝撃的な研究結果が明らかになった。6月末、韓国の国家機関とアメリカの大学の研究チームらが、韓国で6000人近い新型コロナウイルスの感染者とその接触者を追跡調査した結果、「10代の若者」が最も家庭内で新型コロナを広めやすいと発表した。10代の若者が家庭内で最初に発症した場合、家族にうつす確率は18.6%とほかの世代よりも高かった(全世代の平均確率は11.8%)。
アメリカでの休校措置の効果
https://www.covid19-yamanaka.com/cont4/15.html#:~:text=%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%81%A7%E3%81%AE%E4%BC%91%E6%A0%A1%E6%8E%AA%E7%BD%AE%E3%81%AE%E5%8A%B9%E6%9E%9C%EF%BC%888%E6%9C%883%E6%97%A5%EF%BC%89&text=%E3%81%9D%E3%81%AE%E7%B5%90%E6%9E%9C%E3%80%81%E4%BC%91%E6%A0%A1%E6%8E%AA%E7%BD%AE%E3%81%AF,%E3%82%82%E3%81%82%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%81%8B%E3%82%82%E3%81%97%E3%82%8C%E3%81%AA%E3%81%84%E3%80%82
アメリカでは3月から全州において小中学校の休校措置が取られた。その是非については賛否があった。今回の論文では、各州における休校措置の効果を、仮に休校しなかった場合のシュミレーション予測から検定した。その結果、休校措置は、感染者を約60%減少させたと考えられた。また休校措置を早期に導入した州において、その効果が大きかった。休校措置の効果の原因として、子供からの感染防止に加えて、休校に伴う大人の行動変容もあったかもしれない。
日本では小学校、保育所でのクラスターが報告されるようになりました。
子供は重症化しにくいのは事実ですが、症状が軽いために感染を拡大させやすい(特に家庭内)と考えられます。
安倍総理がほぼ独断で決めた休校措置ですが、安倍政権のコロナ対策では唯一評価できるものであったと考えられます。
ただし緊急事態宣言は意味が無かったと考えるのは間違いです。
休校措置でトレンドは変わったかもしれませんが緊急事態宣言が無ければ再び上昇トレンドに変わった可能性があります。
秋から冬にかけて感染が拡大した場合、再度の緊急事態宣言は経済的打撃が大きすぎるため、何としても避けなければいけません。
感染拡大の兆候が見られた場合、 全国一斉休校措置は早期に検討すべきであると考えます。