6月24日、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が廃止されました。
未だに第一波が終わっていないような状況での廃止には驚かされましたが、それ以上に驚いたのは最後の記者会見発表内容です。
Contents
- 感染制圧を最後まで放棄
- 新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 相談内容(概要) 2月4日~2月6日
- 新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード議事概要 2月7日
- 新型コロナウイルス感染症対策 専門家会議(第1回) 議事概要 2月16日
- 新型コロナウイルス感染症対策 専門家会議(第 2 回) 議事概要 2月19日
- 新型コロナウイルス感染症対策 専門家会議(第 3 回) 議事概要 2月24日
- 新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(第6回) 3月9日
- 新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(第9回) (持ち回り開催) 3月26日
- 田口文広先生の提言 4月5日
- 和歌山県知事仁坂氏 知事からのメッセージ 4月27日
- 新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」 5月4日
- まとめると
感染制圧を最後まで放棄
次なる波に備えた専門家助言組織のあり方について(記者会見発表内容)
https://note.stopcovid19.jp/n/nc45d46870c25
5. 終わりに
これまで専門家会議は、新型コロナウイルス感染症による重症者及び死亡者を少しでも減らしたいというただ一点の目的のためだけに、がむしゃらに対応にあたってきた。
専門家会議の目標は新型コロナウイルス感染症による重症者及び死亡者を減らすことだけでした。
感染症の対策にもかかわらず、感染制圧は最後まで専門家会議の目標とはされませんでした。
その結果、PCR検査の件数は未だに発展途上国並みの数字に留まり、人口当たりの死亡者数は東アジアでは最低レベルとなっています。
東京、大阪等の都会では感染経路不明者が多数となり、感染制圧の見通しは立たない状況になっています。
専門家会議が失敗に終わった原因を考えてみます。
新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 相談内容(概要) 2月4日~2月6日
1.新型コロナウイルス感染症対策について
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000629002.pdf
・ 症状のない人を検査することは疫学的にも臨床的にも意味がないのではないか。
・ 無症状の陽性者を見つけることに意味はないのではないか。入院させることは感染症指定医療機関への負担増大となる。
1月16日に日本で1人目の感染者が発見されました。
2月の初めの段階での日本の感染者数は20人程度(多くは中国人)でした。
この段階で既に無症状の感染者の検査について疑義を呈しています。
新型コロナウイルス感染症の特徴に関して完全に見誤っています。
新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード議事概要 2月7日
事務局 症状のない人に対して検査を行うことについて意見を聞きたい。
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000628407.pdf
○ 意味がないのではないか。
事務局 感染性、病原性についてどう評価しているか。
○ 感染力は、インフルエンザと同等と考えている。病原性だが、武漢の致死率 が 4.0%であり、世界では 0.8%である。さらに、無症候病原体保有者の多くは分母に含まれていないので、実際の致死率はより低いのではないか。
前回に続き、無症状者への検査は意味がないという意見となっています。
感染力、致死率に関しては見誤っています。
新型コロナウイルス感染症対策 専門家会議(第1回) 議事概要 2月16日
<新型コロナウイルス感染症の特徴>
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/senmonkakaigi/gaiyou_r020216.pdf
〇 今後の対応は死亡者をできるだけ減らすことが鍵。今回の新型コロナウイルスは、 ウイルスそのものが肺炎を起こしやすいと考えられる。インフルエンザの場合は、 ウイルスが直接肺炎を起こすことは少なく、インフルエンザで免疫が弱った結果、 二次性の肺炎が起きるというパターンが中心。
〇 臨床的特徴や画像から新型コロナウイルスの診断できるようになるといい。
<国内の感染の現状の評価>
〇 感染の拡大を完全に止めるのは無理。患者数の上昇スピードを抑えたり、重症化する人の数を押さえることはできる。この二つを対策の柱だとはっきり言っていくことが重要。
<受診・相談の目安>
〇 重症で原因が不明のときにPCRを回すのが妥当ではないか。
〇 相談を勧奨する対象をそのまま検査対象としない方がよい。ポイントは入院や医療が必要な方であり、発熱または呼吸困難という基準は適切だと思う。高齢者の場合はあもう少し緩い基準の方がよいかもしれない
<その他>
〇 日本は思いつきで対応しているのではなく、ちゃんと戦略があって対応していることを示すためにも、英語での情報発信を強化すべき。
提言をまとめると次のようになります。
- 目標は死亡者数を減らすこと
- 診断は臨床症状と画像診断が先で重症化してからのPCR検査を推奨
- 感染制圧は不可能
この段階で日本の感染者数は50人足らずでした。
驚くべきことにコロナウイルス感染症の知見が充分出揃っていない状況での提言が、いつまでも継続されたと考えられます。
日本での感染者数が50人足らずの状況で感染制圧を諦めています。
上記の提言に基づく、診断、治療の流れです。
診断に関しては、まず臨床症状と画像診断が先です。
重症化してから、ようやくPCR検査となっています。
新型コロナウイルス感染症の知見が少ない3月の段階なら仕方が無い気がしますが、6月になっても日本の開業医は自由にPCR検査を行うことができません。
新型コロナと戦える武器を診療所にも与えよ
・インフルエンザ検査
・レントゲン撮影
・喀痰検査
・採血
ありとあらゆることを否定出来て初めて、日本では厳かにPCR検査を受けられるのです。そもそも、新型コロナPCR検査はインフルエンザ検査と同じ手技、あるいは今では唾液でも可能です。上記検査よりも遙かに感染リスクは低く、かつ「確定診断」となりえます。上記に掲げた検査をすべてやったとしても、結局なにもわかりませんし、患者さんもコロナかどうかが心配なのに関係のない検査をしてお金を取られるだけで、納得出来ません。
http://onodekita.sblo.jp/article/187629907.html
医療者、患者ともに不満
であり、医療者は感染のリスク、死亡のリスクもあります。なぜ、保健所の検査を受けるためだけにこれだけの危険を冒す必要があるのか。全く持って理解不能です。これらの検査を全部するのにはお金も時間もかかります。新型コロナのPCR検査費用とそれほど変わらない。それなのになぜ、ここまでいやがるのか。
このような提言となった理由の一つとしてPCR検査の精度があります。
当初日本で行われたPCR検査の精度は低かったと考えられます。
記事にしましたが1月31日から2月10日までの間に2度目、3度目の検査で陽性の事例が集中しています。
検査の手順、方法が改善されたのか2月13日以降、76例連続で1度目の検査で陽性となっています。
感染症対策「森を見る」思考を 押谷仁
http://www.gaiko-web.jp/test/wp-content/uploads/2020/06/Vol.61_6-11_Interview_New.pdf
加えて検査の質の問題もありました。特に米国は、食品医薬品局(FDA)が拙速にPCR検査キットを承認したため、粗悪な製品が出回ってしまいました。しかも、中国から報告されたPCRのプライマー(遺伝子配列)は精度が低く、日本はすぐに使用を中止しましたが、米国は使い続けました。
プライマーを変更したことでPCR検査の精度が改善されたと考えられます。
ところが、PCR検査の精度が改善したことが専門家会議の提言に反映されることはありませんでした。
新型コロナウイルス感染症対策 専門家会議(第 2 回) 議事概要 2月19日
<国内の発生状況等>
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/senmonkakaigi/gaiyou_r020219.pdf
○ 中国での感染者の発生が落ち着いてきているという蓋然性は高い。この1週間 あたりこの状況では、日本国内で封じ込められる可能性もあると科学者の間では認識されている。
○ ただ、封じ込めるためには、クラスターを追いかけられるキャパシティであることが前提となる。
<加藤厚労大臣ご挨拶>
いずれにしても、この感染、もちろん、新型インフルエンザのときの経験はありますけれども、また今回の新型コロナウイルス、 別物であります。違う特徴もいろいろ指摘をされているところであります。
これらの提言を見ると対策が変わるのではないかと期待を抱かせますが、結果はご存知の通りです。
加藤厚労大臣ですら、新型コロナウイルスはインフルエンザとは別物であると言ってますが、最後まで別物として扱われることはありませんでした。
新型コロナウイルス感染症対策 専門家会議(第 3 回) 議事概要 2月24日
<外来患者の抑制による感染拡大防止について>
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/senmonkakaigi/gaiyou_r020224.pdf
〇 2009 年の新型インフルエンザ発生時には、外来患者が病院に殺到して感染が広まった。つまり、現状では、一般の国民が感染するリスクは極めて低いにもかか わらず、軽症者や無症状患者が不安に煽られて外来に殺到し、結果として感染が 広まってしまうような事態を避けなければならない。
〇 外来患者数をいたずらに増やさないために、厚生労働省における相談センター での案内の仕方が重要になってくる。センターの要員への教育も進めていかな ければならない。
感染者であっても無症状や軽症者は病院から遠ざけておけば、いずれ感染は収束するという間違った考えに基づいた対策です。
新型コロナウイルスをインフルエンザと同一視したような考え方です。
感染症対策「森を見る」思考を 押谷仁
http://www.gaiko-web.jp/test/wp-content/uploads/2020/06/Vol.61_6-11_Interview_New.pdf
この検査の抑制方針は、過去のインフルエンザ流行の経験から導き出された対応です。すなわち、2009年に新型インフルエンザが流行した際、検査目的でたくさんの人が発熱外来に押し寄せ、何時間も待たされた上に、待合室が「三密」化した、という経験がありました。それゆえ日本の臨床現場では、「無秩序な検査はかえって状況を悪化させる」という認識が、ある程度共有されていたと思います。
2月19日の段階で加藤厚労大臣ですら、「コロナウイルスはインフルエンザとは別物である」と言っていたのですが、専門家がこの認識です。
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(第6回) 3月9日
1. 感染拡大の防止に向けた日本の基本戦略
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/senmonkakaigi/sidai_r020309.pdf
その具体的な戦略は「クラスター(集団)の早期発見・早期対応」、「患者の早期診断・ 重症者への集中治療の充実と医療提供体制の確保」、「市民の行動変容」という3本柱であると考えています。
感染拡大の防止とありますが、あくまでも目的は「重症者及び死亡者を減らすこと」ですので「感染者(無症状者を含む)の発見と隔離」という対策は最後まで取られませんでした。
「患者の早期診断」とありますが、「感染者の早期発見」ではありません。
症状のある患者のみが対象です。
PCR検査の精度が改善され、和歌山県や福井県でPCR検査による感染者(無症状者を含む)の発見が成果を上げていたにもかかわらず、提言に反映されることはありませんでした。
上図は福井県でのクラスター図です。
仮にPCR検査の感度が低く70%程度しかない場合、ここまでの感染者の発見が可能でしょうか?
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(第9回) (持ち回り開催) 3月26日
1.新型コロナウイルス感染症の発生の状況
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/senmonkakaigi/sidai_r020326.pdf
(1)国内における発生の状況 ①国内における感染者数等
・ 本年1月 15 日に、国内においてはじめて新型コロナウイルス感染症の感染者が確認された。
・ 同年3月 25 日 18 時までに、国内の感染者数は 1,292 人、死亡者数は 45 人となっている。
2. 新型コロナウイルス感染症にかかった場合の病状の程度
・ 「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」において「この感染症に罹患しても約 80%の人は軽症で済む」、「5%程の方は重篤化し、亡くなる方もいる」、「高齢者や基礎疾患を持つ方は特に重症化しやすい」等とされている。 こうした重症度については、 致死率が極めて高い感染症ほどではないものの、季節性インフルエンザと比べて高いリスクがあると認められる。
インフルエンザよりもリスクが高いというように認識を改めましたが、その後の対策に変更はありませんでした。
田口文広先生の提言 4月5日
山中伸弥先生のサイトで田口先生の提言が紹介されています。田口先生は長年にわたりコロナウイルスの研究をしておられる方です。
現在、猛威を振るっているヒトコロナウイルスによる COVID-19 対策として、日本は韓国やドイツなどと違い、感染者特定重視の方針をとってはおらず、症状が出た患者の感染有無を判定することに重点を置いている。従って、遺伝子検査数は未だに多くない。COVID-19 では多くの不顕性感染者が存在し、それらが感染源となっていることは、本疾病が日本侵入当初から、指摘されていることである。感染者特定を重視しない日本では、感染者数が他国と比べ極めて少なく、また致死率は2%と、韓国、ドイツなどと比較して高い。このことは、 多くの不顕性感染者(感染源)が潜在することを意味する。
https://shard.toriaez.jp/q1541/2.pdf
コロナウイルス感染症はその制御が極めて難しい。例えば、豚コロナウイルスによる流行性下痢(PED)は、それまで全く感染の無かった北米に 2013 年 4 月侵入し、急速に米国、北米各所に拡がり、約 1 年半で数百万頭の新生豚や子豚が死亡し、その数は米国全豚数の 1/ 10 とも言われた。感染豚の隔離は厳格に行われたが、汚染した豚運送車、豚取り扱い者の汚染衣服などにより、厳重なバイオセキュリティを通り抜け、感染拡大し続けた。PED は COVID-19 と同様、年齢を問わず感染するが、致死的な状態に陥るのは、感染に対して抵抗力の低い新生子豚であり、新生子豚が COVID-19 での高齢者、基礎疾患保有者に相当する。米国 PED はより厳格なバイオセキュリティの構築により大きな流行は抑えられたが、 現在でも散発的に発生している。
一方、マウスコロナウイルスはマウス動物実験に様々な影響を及ぼし、実験動物マウスでは 排除すべき第一の病原体である。感染力が極めて高く、実験室内一匹のマウスに感染が認められると、瞬く間に同飼育室内の全てのマウスに感染する。その対処に誤ると、他の飼育室、或いは実験動物施設全体に感染が拡大し、全てのマウスを殺処分しなければ、再現性のある動物実験はできない。また、感染により抗体が陽性になっても、マウスの抵抗力の低下(例えば、免疫抑制剤の投与や妊娠)により、感染性のウイルスが排泄される。即ち、一度感染すると、終生ウイルスを持ち続ける持続感染に陥る。
この様なコロナウイルス特有の感染様式(強い感染性、不顕性感染、持続感染の可能性)を理解すれば、COVID-19 感染拡大を制御する第一の手段はワクチンだが、現段階では、まだワクチンはない。この状況で、感染拡大を少しでも抑えることができるのは、感染者の特定と隔離である。 COVID-19 は上記動物コロナウイルスと同程度の感染力があると推測され、感染者隔離以外に感染拡大を阻止することはできないと考えられる。不顕性感染者がいることは、その人たちが触れた全ての物、例えば、電車内の吊り輪、手すり、スーパーマーケットの商品の包装などが汚染している可能性があり、これらを通して感染拡大すること は、上のPED のケースと同様である。
COVID-19 専門家委員会でこのコロナウイルス特有の感染について議論されなかったであろうか? ワクチンのあるインフルエンザとは、対応が全く異なって然るべきである。 各国が必要以上と思われるくらいの厳重対策をとっているのは、このようなコロナウイルス特有の感染様式を理解した結果ではないかと考える。
COVID-19 での犠牲者は殆どの場合、高齢者や基礎疾患を持つ人である。若い健常者は無症状、軽症化で終わることが多いが、そのような無症状(不顕性)感染者を隔離することがなければ、COVID-19 は限りなく続くように思われる。感染者が存在するかぎり、非常事態終了宣言はなく、有効なワクチンができるまで、限りなく続く。また、ワクチンが全能ではなく、変異株が出現し、大きな問題となることは、PED や鶏コロナウイルスでは良く知られている。
現時点で早急になすべきことは、感染者の特定、隔離である。無症状者や軽症患者は他国で実施されているように、医師の監督下で特定の宿泊施設に収容し、重症患者は指定病院での治療である。国や東京都が打ち出している「外出自粛」では、強制力がなく、感染拡大の阻止は殆ど不可能と思う。
私が強調したいのは、COVID-19 の感染拡大を抑えるには、感染者の特定、隔離が最も有効で、現段階では唯一の手段である、ということである。都市のロックダウンはかなり長期間(少なくとも潜伏期間以上)行わないと感染防止効果はない。 現在、東京都内は、人が集う場所はどこでも感染し得る状態で、基礎疾患を持つ高齢者が安心して過ごすことは出来ない。
田口文広: 獣医師、元大学教授、元感染症研究所室長、コロナウイルス研究歴 45 年
田口先生も獣医師です。
獣医師はコロナウイルスの感染力、ワクチン開発の難しさを理解しています。
コロナウイルスはインフルエンザと同様と考えてはいけません。
これは獣医師にとっては常識なのですが、医師にとっては常識では無いようです。
コロナウイルスの特徴を考えると感染者(無症状者を含む)の発見と隔離を行い、感染制圧を目標とすべきでした。
和歌山県では徹底的な検査と隔離で感染制圧に成功しました。
ウィズコロナというフレーズが使われるようになりましたが、本来は共存できるようなウイルスでは無いのです。
感染症対策「森を見る」思考を 押谷仁
http://www.gaiko-web.jp/test/wp-content/uploads/2020/06/Vol.61_6-11_Interview_New.pdf
このウイルスの場合、多くの人は誰にも感染させていないので、ある程度見逃しても、一人の感染者が多くの人に感染させるクラスターさえ発生しなければ、ほとんどの感染連鎖は消滅していく、という事実があります。
コロナウイルスの特徴を見誤っています。
コロナウイルスに対しては有効なワクチンを作ることができない可能性があります。
ワクチンが効かない?新型コロナでも浮上する「抗体依存性感染増強」
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/20/03/30/06749/
順調に進んでいるワクチン開発だが、実用化に向けた懸念もある。その1つが、ワクチンの接種などにより起こりうる「抗体依存性感染増強(ADE)」と呼ばれる現象だ。本来、ウイルスなどから体を守るはずの抗体が、免疫細胞などへのウイルスの感染を促進。その後、ウイルスに感染した免疫細胞が暴走し、あろうことか症状を悪化させてしまうという現象だ。
ADEの詳細なメカニズムについては明らかになっていないことも多い。ただこれまでに、複数のウイルス感染症でADEに関連する報告が上がっている。例えば、コロナウイルスが原因となる重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)に対するワクチンの研究では、フェレットなどの哺乳類動物にワクチンを投与した後、ウイルスに感染させると症状が重症化したとの報告があり、ADEが原因と考えられている。
新型コロナウイルスに関する米国の研究報告では、「ウイルスのS蛋白質のうち、感染において特に重要な役割を担う一部の領域をターゲットにしたワクチンを開発するべき」などと指摘。加えて、「S蛋白質に対する不完全な免疫(抗体)が誘導されれば、ADEが起こる可能性がある」と警鐘を鳴らしている。
和歌山県知事仁坂氏 知事からのメッセージ 4月27日
和歌山県は新型コロナウイルス対策に関しては政府の方針とは異なる対策を取り続けてきました。
2月に県内の病院で院内感染が発生しましたが徹底的な検査と隔離で感染制圧に成功しました。
新型コロナウィルス感染症対策(その19) -うらみ節 –
https://www.pref.wakayama.lg.jp/chiji/message/20200427.html
だからどうしても、なんで日本中こんなになってしまったんだとうらみ節を言いたくなるわけです。大都市をはじめ、感染が著しく進んだ地域のトップの人は、それぞれの都道府県民にもっと自粛をしてくれ、感染が進むのは、自粛をしてくれないからだと強調されますし、マスコミの報道もそればかりですし、政府の対策も、このところは特にそればかりになっているように見えますが、私は本当にそうかと思っています。感染が拡がるにまかせてしまったのは、半分は人々の油断した行動だとしても、半分は当局の努力が足りなかったからではないでしょうか。
大都市のようにこんなに毎日何十人も、百人以上も新規感染者が出てきたら、完璧な抑え込みは到底出来ないけれど、それでも抑え込み努力は続けなければいけない、あきらめてしまっては、もう爆発しかないと思います。また、感染者への対応にしても、その人の安全を守るためと感染を更に増やさないために、出来ることならした方が良い対応ということがあるはずだと私は思います。
そのいずれも、国には感染症対策の専門家が居るはずなのに、感染症対策の当局の対応についてアドバイスをしているかというとあまりなく、あっても後手に回り、言っていることは、別に専門知識が無くても政治家が考えつきそうな人々の行動の自粛ばかりを言っていて、それがメディアでとても大きく報じられる、それが現状のようで、私も思わずうらみ節を言いたくなるのです。
仁坂知事の言葉通り、感染拡大防止は国民の自粛頼りになっていました。
和歌山県のように徹底的な検査と隔離を行い、感染制圧を目指すべきでした。
目標設定が感染制圧ではなく、「死亡者数を減らすこと」であったために国民への負担が多大なものになってしまいました。
知事のメッセージからは国の感染症対策の専門家が全く役に立っていないことへの強い憤りが感じられます。
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」 5月4日
(補論)PCR等検査の対応に関する評価
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000629000.pdf
1.PCR 等検査の件数及び陽性率についての分析
〇 5 月 1 日の提言では、我が国の PCR 等検査数が諸外国と比べ限定的な中、新規感染者数が減少傾向にあることについての疑問も呈されていることなどに言及した。
〇 この点、PCR 等検査数、検査陽性率の各国比較をみると、検査の定義や対象者が国により異なるため、単純な比較はできないものの、日本の 10 万人あたりの PCR等検査数は、他国と比較して明らかに少ない状況にある(図 1)一方、検査陽性率はイタリア、シンガポール、アメリカ、スペイン、フランス、イギリスよりも十分に低くなっている(図 2)。したがって、これらの国々と比較して、潜在的な感染者をより捕捉できていないというわけではない、と考えられる。
〇 新型コロナウイルス感染症による人口 10 万人あたりの死亡者数は、日本は欧米の 10 分の 1 以下となっている(図 3)。
〇 いずれにせよ、3 月下旬頃からの感染者数の急増に十分に対応できなかったこと、 予期せぬ重症化事例が報告されていること、治験や観察研究を通じて治療薬に関する明るい兆しが見え始めていることなどを踏まえれば、PCR 等検査を更に拡充することを通じて、より早期の診断と適切な医療につなげられるようにしていくことが重要である。
PCR検査については空港検疫の検査を除き、4月中はほとんど言及がありませんでした。
医師が必要と考える検査でさえ、充分にできていない状況にもかかわらず、陽性率が低いため、感染者を捕捉できていないわけではないと主張しています。
欧米と東アジアでは死亡者数、感染者数での明らかな違いが出ているにもかかわらず、 死亡者数を減らすという目標が達成されていると主張するために欧米との比較となっています。
百万人あたりの死亡者数 | |
スペイン | 606 |
イタリア | 574 |
スウェーデン | 523 |
フランス | 456 |
アメリカ | 386 |
インドネシア | 10 |
日本 | 8 |
韓国 | 6 |
シンガポール | 4 |
中国 | 3 |
台湾 | 0.3 |
ベトナム | 0 |
https://www.worldometers.info/coronavirus/
PCR等検査を拡充としていますが「感染者(無症状者を含む)の発見と隔離」のための拡充ではなく、「有症状者の診断」のための拡充であるということに注意が必要です。
PCR検査を「感染者(無症状者を含む)の発見と隔離」のための手段としている世界各国とは異なるスタンスを取り続けています。
(補論)PCR等検査の対応に関する評価
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000629000.pdf
2.日本において PCR 等検査能力が早期に拡充されなかった理由
〇 PCR 等検査がなぜ早期に拡充されなかったか、についても考察を行っておく。
〇 日本の感染症法対象疾患等の感染症に対する PCR 等検査体制は、国立感染症研究 所と地方衛生研究所が中心となって担ってきており、COVID-19 の国内発生に当たっ ても、既存の機材等を利用した新型コロナウイルス PCR 検査法が導入された。また、 国内において SARS や MERS、ジカ熱のなどの新興感染症の PCR 等検査を用いた病原体診断は可能となっているが、国内で多数の患者が発生するということはなく、地方衛生研究所の体制の拡充を求める声が起こらなかった。 COVID-19 流行開始当初は、重症化の恐れがある方および濃厚接触者の診断のために検査を優先させざるを得ない 状況にあったのは、こうした背景が影響した可能性がある。
〇 なお、韓国・シンガポールに関しては、SARS・MERS の経験等を踏まえ、従前から、 PCR 等検査体制を拡充してきた。この差が、これまでの経過に影響している可能性がある。
〇 しかし、軽症者を含む感染の疑いのあるものに対する検査拡充が喫緊の課題になってきたため、医師が必要と考える軽症者を含む疑い患者に対して迅速かつ確実に検査を実施できる体制に移行すべきと考える。
2月や3月の段階であればわからなくはないのですが、5月の段階でこの分析は無いでしょう。
「軽症者を含む感染の疑いのあるものに対する検査拡充」とあるように無症状者に対する検査は想定されていません。
PCR検査の位置づけが「感染者(無症状者を含む)の発見と隔離」の手段ではなく、「有症状者の診断」の手段なので、このようなことになるのです。
数多くの知見が得られてきた5月の段階でもPCR検査の位置づけは変わりませんでした。
北九州の陽性者、無症状が5割超 PCR検査対象拡充で顕在化
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/613286/
市はこれまで濃厚接触者が無症状だった場合、医療関係者に限定してPCR検査を実施してきた。市は無症状者の感染者数は集計していないが、一部に限られていた。
だが感染の再拡大を受けた市は、5月25日に全濃厚接触者のPCR検査を決断した。
北九州市では5月に入りようやく無症状の濃厚接触者のPCR検査を始めました。
まとめると
2月から6月までに次のようなことがわかりました。
- 日本のPCR検査の精度は高く、クラスター対策に効果を発揮
- 和歌山県では徹底的な検査と隔離で感染制圧に成功
- 東アジアと欧米では死亡者数、感染者数が大幅に異なり、日本はコロナ対策では有利な条件
- 台湾、中国、韓国等の東アジアではコロナの制圧に成功
- 4割は無症状から感染 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200610/k10012464971000.html
- 緊急事態宣言は感染拡大防止効果はあったが、効果は一時的なもので経済的ダメージは甚大
このようなことが新たにわかったにもかかわらず、専門家会議のコロナ対策の目標は2月から一切変わらず「死亡者数を減らすこと」のままでした。
台湾、中国、韓国等の東アジアの状況を見ると感染制圧を目指すことができたはずですが目標は最後まで変わりませんでした。
PCR検査の位置づけは最後まで「感染者(無症状者を含む)の発見と隔離」の手段とはなりませんでした。
PCR検査の位置づけが「有症状者の診断」の手段のままであったため、専門家会議がPCR検査の拡充と言った所で検査数が増えないのは当然です。増やす気が無かったのです。
専門家会議はインフルエンザと同様の対策に固執し、最後まで適切な新型コロナウイルス対策を提言できませんでした。
2月19日の段階で加藤厚労大臣でさえ、「新型コロナウイルスはインフルエンザとは別物である」と言っていたにもかかわらず、コロナウイルスの特徴を踏まえた対策に変更されることはありませんでした。
日本に多くの害をもたらした専門家会議が廃止されたことで日本の新型コロナウイルス対策が改善されることを期待します。