先日、コロナウイルスPCR検査の感度が低いとされていることに疑問を持ち記事を書きました。
今回は厚生労働省発表の資料から陰性判定後、陽性が判明した事例について調べてみました。
Contents
厚生労働省発表の資料からの集計
厚生労働省発表のコロナ陽性の事例について国内感染例第1~112までの100例を調べました。東京、北海道等での詳細不明な事例は除外しました。
陽性までの検査回数
- 1度目の検査で陽性・・・ 93例
- 2度目の検査で陽性・・・6例
- 3度目の検査で陽性・・・1例
症状
- 症状あり・・・92例
- 症状なし・・・8例
2度目、3度目の検査で陽性の事例について
1月31日から2月10日までの間に2度目、3度目の検査で陽性の事例が集中しています。
理由はわかりませんが多くは中国人です。
検査の手順、方法が改善?
1月末から2月初めにかけて2度目、3度目の検査で陽性の事例が続出したためか、思考錯誤をしている様子が報道資料からもわかります。
19例目では患者が中国に帰国後に再検査を行っています。
概要
(1)年代: 50代
厚生労働省 新型コロナウイルスに関連した肺炎の患者の発生について(19例目)
(2)性別: 男性
(3)居住地: 中華人民共和国(湖北省)
(4)症状、経過:
1月22日に来日。
1月25日まで無症状。
1月26日朝から発熱。12時に37.5度。夜に救急車で医療機関に搬送。肺炎症状を認めた。同日疑似症サーベイランスに基づき、検体(咽頭ぬぐい液)を採取。
1月27日、検査結果陰性と判明。
1月28日、解熱、退院。咽頭ぬぐい液、喀痰採取。
1月30日に中国へ帰国。
2月3日保存していた喀痰、咽頭ぬぐい液(1月28日採取)を国立感染症研究所に検査送付。
2月4日検査結果陽性と判明。
検査の手順、方法が改善されたのか2月13日以降、76例連続で1度目の検査で陽性となっています。(84例目の事例では1度目の検査は陰性でしたが、実施されたのは1月30日です)
最近の事例では
「陰性」判定の翌日に死亡 東京の80代男性 新型コロナウイルス
今月、東京の80代の男性が新型コロナウイルスの検査で「陰性」と判定された翌日、体調が急変して死亡し、その後の再検査で「陽性」となっていたことが捜査関係者などへの取材でわかりました。
NHK 2020年4月29日
この事例では4月10日に陰性、4月11日に陽性反応が出たとのことです。
4月11日には国内で658名もの陽性者が出ています。
1度目の検査で陽性が出なかったのがこの方だけであれば658例中657例は1度目の検査で陽性反応が出たということになります。
捕捉できない偽陰性者について
PCR検査で陰性と判定されたが実は陽性だったのが捕捉できないケースはどの程度存在するのでしょうか?
PCR検査で陰性と判定されたが実は陽性で
- 体調不良が続く場合
- 本人は自然治癒したが、ウイルスを排出していた場合
- ウイルス量が少なく、自然治癒した場合
①については再度病院で検査されるはずですので、何度目かの検査で陽性判定が出るでしょう。1月末から2月初めにかけて複数例報告されています。
②については周囲に感染者が出ますので、これも病院で検査されると思います。(検査を受けにくい地域でもPCR検査を受けた周囲の者が発熱等の症状があれば検査は行われるでしょう)
84例目の事例は次のようになっています。子供から父親に感染したのかは不明ですが陰性判定が出てもフォローアップはされています。(地域ごとの違いはあるかもしれません)
1月30日 第2チャーター便で父親と一緒に帰国。 空港から移動し、国立国際医療研究センターにおいて診察を受けた際にPCR 検査を実施したが陰性。
埼玉県 報道発表資料
2月1日 父親と一緒に自宅に帰宅。厚生労働省のフォローアップセンターが経過観察。
2月8日 父親が発熱(39.5℃)
10日 父親の PCR 検査を実施し陽性。
10日 ~19日 この間 36℃から 37℃代前半で経過 咳は時々していた。
20日 朝:37.3℃ 夕:37.5℃~37.6℃。
21日 PCR 検査を実施し陽性。
③については周囲に感染を広げる可能性は低いため見逃したとしても感染制御の面で問題は無いと思います。どの程度の割合で存在するのかは追跡調査を行わないとわかりません。
このように考えると感染制御の面で問題となるような捕捉できない偽陰性者はほとんどいないと考えられます。
PCR検査の感度
感染制御の面で問題となるような捕捉できない偽陰性者はほとんどいないと考えられる場合、PCR検査の感度は次のように推測できると思います。
1度目の検査で陽性反応が確認される事例が多い場合、検査感度は高いと推測されます。
1度目の検査では陰性で2度目、3度目の検査で陽性反応が確認される事例が多い場合、検査感度は低いと推測されます。
1月末から2月初めにかけては2度目、3度目の検査で陽性の事例が続出しています。この頃に行われたPCR検査の感度は非常に低かったと推測されます。
検査の手順、方法が改善されたのか2月13日以降、76例連続で1度目の検査で陽性となっています。
また4月11日の陽性者658例中657例は1度目の検査で陽性となっています。
これらのことから2月13日以降のPCR検査の感度は非常に高いと推測されます。
PCR検査の感度に関する最近の報道
PCR検査の感度は非常に高いということを正しく伝える報道も出てきました。
上記の「陰性」判定の翌日に死亡の記事の中には次のような記述があります。
「陰性」判定の翌日に死亡 東京の80代男性 新型コロナウイルス
専門家によりますと、PCR検査は、のどや鼻の奥、気管支の分泌物などに含まれるウイルスの遺伝子を人工的に大量に増やして検出するもので、非常に感度の高い検査法ですが、ウイルスの量や検体の取り方などによって、一定の割合で、偽陽性や偽陰性が出ることがあるということです。
NHK 2020年4月29日
まとめると
コロナウイルス感染症の特性から考えると感染制御の面で問題となるような捕捉できない偽陰性者はほとんどいないと考えられます。
1月末から2月初めにかけて2度目、3度目の検査で陽性の事例が続出しています。この頃に行われたPCR検査の感度は非常に低かったと推測されます。
検査の手順、方法が改善されたのか2月13日以降、76例連続で1度目の検査で陽性となっています。
また4月11日の陽性者658例中657例は1度目の検査で陽性となっています。
これらのことから2月13日以降のPCR検査の感度は非常に高いと推測されます。
1月末から2月初めにかけてのPCR検査の感度が低かったのは事実でしょう。
ところが未だに情報をアップデートせずにPCR検査の感度が低いという前提で話をする方が多いのは問題です。