コロナウイルス感染症

コロナウイルスPCR検査の感度が低いと考えた場合の矛盾点をまとめました

コロナウイルスの検査に関しては嘘が多すぎると思います。何度か記事にはしました。

コロナウイルスPCR検査の感度が低いという話は本当か? コロナウイルスのPCR検査の感度は高くなく、70%程度であると考える方が多いようです。中には30~70%と考える方もいます。 Q...
コロナウイルスPCR検査の感度97%という論文 PCR検査の感度が低いとされていることに疑問を持ち、記事を書きました。 https://tatsuharug.com/coron...
コロナウイルスPCR検査と臨床検査技師に関する嘘 実は私は医学部保健学科を卒業し、臨床検査技師の資格も持っています。コロナウイルス関連の報道では間違った報道が非常に多いので正しい情報を...

コロナウイルスPCR検査の感度が70%程度であると考えている人達が未だにいます。
PCR検査の感度が70%と考える場合、矛盾が次々出てきます。
PCR検査の感度が70%であれば、院内感染の制御やクラスター対策は不可能という説明で普通の人は理解できると思いますがわからない人がいるようですので今回はその矛盾についてまとめます。

PCR検査は陰性確認には向かない?

東京女子医大が全学生に新型コロナの陰性確認実施へ 「儀式としてのPCR検査は無意味」専門家が批判

PCR検査の精度は高くなく、無症状の学生に検査をすれば、本当は陰性なのに陽性と出る「偽陽性」、本当は陽性なのに陰性と出る「偽陰性」の結果が出る可能性がある。
日々、患者と接している医療者でさえ検査は受けておらず、PCR検査は「陰性確認」には向かないと考えるのが医療者の常識だ。

政府の専門家会議委員で川崎市健康安全研究所所長の岡部信彦さんは、「陰性の結果は感染していないというお墨付きにはなりません。今の時点でウイルス量が少ないということしか言えません。医学部でどういう理論を持って決めたのか伺ってみたいですね」と疑問を投げかける。

https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/inseikakunin-tokyojoshiidai

仮にPCR検査は感度が低く、コロナウイルス感染症の陰性確認には向かないと考えるのならば次のような事例はどのように考えるのでしょうか?

院内感染判明後、PCR検査で陰性を確認し、診療再開

【重要なお知らせ】外来・救急診療の再開について

4月16日(木)に職員の新型コロナウイルスの感染が判明したことを受け、4月17日(金)から休止していました、外来診療及び救急の受け入れにつきまして、当該職員との濃厚接触者の特定及びPCR検査を実施し、陰性と判定されたほか、院内すべての消毒を終えたことから、以下のとおり再開することといたしましたので、お知らせいたします。

https://hirakatacity-hp.osaka.jp/0000000512.html

北海道がんセンターが診療再開 再診患者に限定

新型コロナウイルスに医療スタッフや入院患者が集団感染し、新たな患者の受け入れを停止していた北海道がんセンター(札幌市)が11日、再診の患者に限り診察や検査を再開する。外来や放射線のスタッフのPCR検査が終わり、全員の陰性が確認されたという。新規の入院も18日から受け入れを始める予定だ。

朝日新聞DIGITAL 2020年5月11日

上記の病院に限らず、院内感染が判明した場合は濃厚接触者(病院によっては全職員)のPCR検査を行い、陰性を確認し、診療を再開しています。
PCR検査が陰性確認には向かず、感染していないというお墨付きにならないのであれば、これらの病院の診療再開は危険な行為であり、間違っているということでしょうか?
一度でも院内感染を起こした病院は安全に診療を再開することはできないということでしょうか?

西村大臣がコロナウイルス検査の陰性確認後、公務復帰

西村担当相PCR検査に批判続出 「要人だから」「ずるい」

西村氏は、19日に西村氏の視察に同行した内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室の職員の感染が確認されたことから、25日から自宅待機し、27日に公務復帰した。これに関して同氏は26日、ツイッターに「PCR検査も受け、陰性であることも確認した」と投稿。

JIJI.COM 2020年04月27日

西村大臣はPCR検査で陰性確認後、即座に公務復帰しました。
PCR検査が陰性確認には向かず、感染していないというお墨付きにならないのであれば、西村大臣の公務復帰は危険な行為だったのでしょうか?

PCR検査が陰性確認に向かないのであれば、今後日本ではコロナウイルスに感染していないということの立証が不可能になるかもしれません。
それにより日本人の海外への渡航も不可能になるかもしれませんね。

東京女子医大のPCR検査について

東京女子医大が全学生に新型コロナの陰性確認実施へ 「儀式としてのPCR検査は無意味」専門家が批判

神戸大学感染症内科教授の岩田健太郎さんは、「儀式としてのPCR」として実質的な意味はないとし、こう批判する。

「今、PCRをやっても、6月の未感染の保証はありません。また、本当に未感染確認を維持したければ、毎週、毎日、PCRをせねばなりません。そもそも、現在の東京だと無症状学生の事前確率(陽性になる確率)は1%未満です。よって、偽陽性のリスク(検査機関のミスを含め)のリスクのほうが増します」

https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/inseikakunin-tokyojoshiidai

偽陽性の確率はそんなに高くないでしょうから、無視できると思います。
東京の大学で学生(地方から戻ってくる学生も含む)を対象としたPCR検査はあまり意味の無い検査かもしれません。
感染経路不明の感染者が多数出ている東京ですので、学生は通学途中や学外でいつ感染してもおかしくはありません。
現実的に考えて学生の未感染確認を継続的に行うのは不可能と考えられます。
従って学生が原因となる院内感染を防ぐ最善の方法は病院実習を行わないことになります。
それが可能なのかどうかは知りません。
東京や大阪の医大で学生が原因となる院内感染が起こっても学生の責任ではありません。
院内感染が起こった場合に慶応大学の事例のように学生に批判が向かなければ良いのですが。

研修医の集団感染で慶應義塾大学病院長が謝罪

同病院では3月31日、研修を修了した初期研修医の1人が新型コロナウイルス陽性であることが確認された。これを受け、4月1日から他の施設で後期研修に臨むことになっていた医師も含め、初期研修医99人を14日間の自宅待機とした。

接触者の調査を進めるとともに、待機を命じた初期研修医全員のPCR検査を実施したところ、4月6日までに99人中18人がPCR陽性となったという。陽性者は同病院に入院。陰性となった研修医も含め、全員の14日間の自宅待機を続行している。

日経メディカル  2020/04/07

術前患者、入院患者のPCR検査は無意味?

コロナウイルス感染症の治療以外で入院した患者でのコロナウイルス感染が報告されています。

<新型コロナ>コロナ以外で治療 入院患者2.7%陽性 慶応大病院

慶応大学病院(東京都新宿区)は、四月六~三十日に新型コロナウイルス感染症の治療以外で入院した患者二百五十八人にPCR検査を行ったところ、2・71%に当たる七人が陽性だったとホームページで発表した。

東京新聞  2020年5月8日

医療従事者を守るために入院患者に対するPCR検査を実施する病院、自治体が出てきています。

鳥取県、入院患者・妊婦もPCR検査 新型コロナ、態勢を拡大

鳥取県は14日、新型コロナウイルス感染症のPCR検査の対象を、基幹病院の入院患者と、全医療機関の妊婦に広げる方針を決めた。

中国新聞デジタル 2020年5月14日

中核病院にPCR検査機 和歌山県が新型コロナ対策強化

和歌山県は、県内の複数の地域中核病院に、新型コロナウイルスのPCR検査結果が1時間半程度で判明する機器を導入する。
別の病気やけがで搬送された救急患者らの感染有無を病院が把握することで、医療従事者が不慮に感染することを防止する。今月下旬から順次運用を開始する。

AGARA紀伊民放  2020年05月15日

医療従事者を守り、医療崩壊を防ぐためには必要な対策であると思います。

東京女子医大が全学生に新型コロナの陰性確認実施へ 「儀式としてのPCR検査は無意味」専門家が批判

別の感染症指定医療機関の感染症専門医も、陰性確認はできないし、5月に検査して陰性だとしても6月の陰性を保証しないと認めた上で、「術前患者、入院患者よりもさらに意味がなさそうな気がします」と否定的だ。

厚生労働省は手術などで入院する患者に対して院内感染を防ぐための検査は保険を適用することを決めている。

https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/inseikakunin-tokyojoshiidai

ところがこのような医療従事者を守る対策ですら、感染症専門医にとっては「意味がなさそう」とのことです。
この感染症専門医が誰なのかはわかりません。

コロナウイルス抗原検査は役に立たない?

コロナウイルス抗原検査はPCR検査に比べ、感度は落ちますが短時間で結果が出る検査法です。

抗原検査に唾液検体を用いることが可能になれば、検体採取時の二次感染、医療資材の消費等、検査に反対する理由は無くなってしまいます。
抗原検査で陰性の場合、PCR検査で確認を行うようにすれば感度の問題もクリアできる
はずです。
医療従事者を守るために検体採取時の二次感染や医療資材の消費等の理由で検査に反対していた人達は、抗原検査を積極的に推奨しないと辻褄が合いません。
医療従事者を守り、感染者の早期発見という意味では抗原検査に反対する理由は無いはずです。
ところがコロナウイルスPCR検査の感度が低く、役に立たないのであればPCR検査よりも感度が低いコロナウイルス抗原検査も役に立たないことになってしまいます。
しかもPCR検査は陰性確認に向かないと言う人まで出てきましたので、もはや抗原検査もPCR検査同様、やっても意味の無い検査にされてしまいそうです。

インフルエンザ抗原検査の方が高感度?

抗原検査はPCR検査に比べ、感度は落ちますが短時間で結果が出る検査法です。
インフルエンザ抗原検査では感度が高いキットがあるようです。

インフルエンザの迅速診断

検体別の精度比較
鼻腔拭い液ではインフルエンザA型の感度は89.4%、特異度は94.6%、インフルエンザB型では感度75.7%、特異度97.5%

http://medical.radionikkei.jp/kansenshotoday_pdf/kansenshotoday-141112.pdf

コロナウイルスPCR検査の感度が70%であるとするとインフルエンザ抗原検査の感度よりも劣ることになってしまいます。
コロナウイルスPCR検査だけ感度が低くなる理由は何なのでしょう?

疫学を否定?

医療ジャーナリスト・村中璃子氏が指摘PCR検査「万能薬ではない」

医師で医療ジャーナリストの村中璃子氏が4日、自身のツイッターで検査数が増えない、と批判されるPCR検査の問題に言及。「PCRを流行状況の把握に対する万能薬と思っているのは日本くらいのもの」と投稿した。

PCR検査については感度が70パーセント程度と低く、偽陰性が30パーセント程度出てくるリスクがあり、精度を高めるためには複数回の検査が必要とされている。

東スポWeb 2020年5月5日

データに基づくリスク評価を行うには、データを集めるための検査が必要です。
検査を行わなければ現状がわかりません。現状がわからなければリスク評価は不可能です。
村中氏はデータに基づくリスク評価が必要と主張しながらもPCR検査は感度が低いという理由で検査の拡充に反対しています。

検査をするなという主張は感染情報(疫学情報)を集めるなというのと同義であるという認識はないのでしょうか?
村中氏の肩書は医療ジャーナリストということです。
ところがコロナウイルス感染症に関しては感染情報の収集は必要無いという考えのようです。

PCRセンター

東京都医師会 地域PCRセンター設立へ かかりつけ医が主導して感染拡大防止へ

東京都医師会は4月17日、都内に最大47の「地域PCRセンター」を設置すると発表した。患者はかかりつけ医に電話で連絡。診察が必要な場合は、医療機関を受診する。診察の結果、新型コロナが否定できない場合は、地域のPCRセンターに紹介し、検査を受ける。 都医の尾﨑治夫会長はこの日の緊急会見で、「PCR検査を帰国者・接触者相談センターにお願いしてもやってもらえない。病院にお願いしても病床が満杯で対応できない。こうした患者を交通整理しないと感染予防ができないと判断した」と述べ、かかりつけ医が協力してPCRセンターを作ろうということになった経緯を説明した。

ミクスonline 2020/04/20

PCR検査の感度が低いと考えている人達はPCRセンターには反対なのでしょうか?
術前患者、入院患者のPCR検査を無意味という感染症専門医も出てきましたので、そのうちPCRセンターに反対する人も出てくるかもしれません。

この記事が気に入ったらフォローして下さい