新型コロナPCR検査の拡充は有害であると主張したり、地域を限定しての一斉検査は意味が無いと主張する人達がいます。
地域を限定しての一斉検査はどのような検査なのかを考えます。
Contents
感染者を4通りに分けてみる
感染者を症状の有無、感染経路が判明しているかどうかで4通りに分けてみます。
- 有症状で感染経路が判明
- 有症状で感染経路が不明
- 無症状で感染経路が判明
- 無症状で感染経路が不明
①②の人達は病院に相談すると考えられますので検査体制が逼迫していなければ見つけることが可能です。
③の感染者は(濃厚)接触者として検査することで見つけることができます。
(今の日本ではマスクさえしていれば濃厚接触者とは認定されず検査対象となりません。検査対象を拡大することで③の人達をより多く見つけることができます)
④の感染者は誰から(どこで)感染したのかが不明で、自らが感染者であることを認識しない人達です。
感染対策で考えると最も危険な人達です。
④の感染者については手掛かりがほとんどありませんので発見することが難しく、どの程度存在するのかも不明です。
④の感染者を減らす、④の感染者からの感染を防ぐ対策について考えます。
感染経路不明の無症状感染者対策について
「④無症状で感染経路が不明」の感染者を減らす、「④無症状で感染経路が不明」の感染者からの感染を防ぐ対策としては次のようなものがあります。
検査体制の拡充
有症状者の検査のハードルを下げることで「②有症状で感染経路が不明」の感染者を増やす。
接触者調査の対象範囲を拡大することで「③無症状で感染経路が判明」の感染者を増やす。
このことにより間接的に「④無症状で感染経路が不明」の感染者を減らすことができると考えます。
これらはすぐにでもできることです。
介護施設等での定期検査
世田谷区等が行っている社会的検査です。
弱者を守るために必要な検査です。
経済活動、社会活動のための一斉検査
プロ野球、Jリーグ等が行っている一斉検査です。
自民党、クルーズ船での検査もこれにあたります。
自民、全職員にPCR検査実施へ 党本部でコロナ陽性確認
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021012900903&g=pol
自民党は29日、組織運動本部の20代男性職員が新型コロナウイルスに感染し、自宅療養中だと明らかにした。これを受け、同党は党本部に勤務する全職員約200人を対象にPCR検査を近く実施する。幹部職員や国会議員と接することが多い職員は26、27両日に先行して行った。
2021年1月29日
クルーズ船「飛鳥2」乗客1人 コロナ感染 船は横浜港へ引き返し
29日に横浜港を出港した国内最大のクルーズ船「飛鳥2」で、乗客1人が新型コロナウイルスに感染したことがわかりました。横浜市によりますと、濃厚接触者は同じ客室の家族1人だということで、クルーズは中止され、船は5月1日の昼ごろ、横浜港に戻るということです。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210430/k10013007081000.html
2021年4月30日
入院時の検査
医師が必要と判断した場合は行政検査の対象となりますので、多くの病院で行われていると思います。
民間検査(自費検査)
行政検査対象外の人が受ける検査です。
現在の所「④無症状で感染経路が不明」の感染者を見つけるためにこれほど有用な検査は無いでしょう。
現在の行政検査では偶然以外に見つけることができない「④無症状で感染経路が不明」の感染者が自費で検査を受けて名乗り出てくれます。(本来は行政が行うべき検査です)
行政機関との連携等の問題はありますが、未然に感染を防いだ事例も多数あるでしょう。
有症状者は民間検査を受けるのではなく、病院で行政検査を受けるべきであるという啓発は必須です。
(行政検査が飽和し、有症状でも検査を受けられない場合、濃厚接触者と認定されない場合等、仕方無く民間検査を受ける人も多数いるでしょう)
街角での無料検査
現在の行政検査対象外の検査も公費負担するということです。
「④無症状で感染経路が不明」の感染者を積極的に見つける検査です。
広島県で開始されました。
世田谷区がPCR検査を拡充へ「誰でも いつでも 何度でも」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/46562
新型コロナウイルスの感染防止策として、東京都世田谷区は1日に2000~3000件をPCR検査できる体制整備の検討を始めた。「誰でも いつでも 何度でも」検査できる「世田谷モデル」として早期発見や治療につなげ、感染の広がりを抑える狙いだ。
思い切った検査拡大のシステムは、深刻な感染拡大が起きた米ニューヨーク州で既に実現している。無症状で自覚がない段階の感染者もすくい上げ、迅速に対応することで、同州では感染者が劇的に減少した。
2020年8月3日
広島 症状ない人対象 無料のPCR検査センター設置
16日に緊急事態宣言の対象地域に加わった広島県では、新型コロナウイルスの感染を抑え込むため、PCRセンターが広島市中心部に設置されました。広島県は、16日に緊急事態宣言の対象地域に追加されたことを受けて、県内の飲食店などを対象に休業や営業時間の短縮を要請しているほか、県民に外出を半減させるよう呼びかけています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210517/k10013035171000.html
こうした中、広島県は飲食店や商店が集まる広島市中区本通に症状がない人を対象にしたPCRセンターを設置し、早速、検査を受ける人が訪れていました。
2021年5月17日
緊急事態宣言等の人流抑制
人流抑制で感染者が減少することで「④無症状で感染経路が不明」の感染者も減少し、「④無症状で感染経路が不明」の感染者からの感染を防ぐことに繋がります。関係無い人も多数巻き込まれますので国民の社会的、経済的損失は大きいです。
個人の感染対策
マスク着用、換気、消毒等の個人が行うことができる感染対策です。
個人が行うことですので当然限界があります。
地域を限定しての一斉検査
「④無症状で感染経路が不明」の感染者を積極的に見つける検査です。
ほとんど手掛かりが無い状態で感染者を見つける検査ですので効率は悪いです。
緊急事態宣言等で人流を抑制し、感染者を減らした状態で行う方が効果的でしょう。
有症状者の検査同様、感染者を見つけるための一手段にすぎませんので、この検査だけを行えば良いというわけではありません。
感染経路不明の無症状感染者を減らすために行政が行うべきこと
「④無症状で感染経路が不明」の感染者を減らすために行政が行うべきことは「検査体制の拡充」「街角での無料検査」「地域を限定しての一斉検査」となるでしょう。
「街角での無料検査」「地域を限定しての一斉検査」は有症状者の検査や接触者調査の検査と比較すると優先度は低く、非効率的です。
しかし「④無症状で感染経路が不明」の感染者を見つけるための検査はほとんど手掛かりが無い状態で行いますので非効率的なのは当然です。
(これ以外の方法で「④無症状で感染経路が不明」の感染者を積極的に発見する方法はあるのでしょうか?)
「街角での無料検査」「地域を限定しての一斉検査」に反対の人は「④無症状で感染経路が不明」の感染者を放置しても良いと主張しているのも同然です。
果たしてこの人達を放置しても良いのでしょうか?
大阪府の事例を基に考えます。
大阪府の感染データ
大阪府の2021年5月14日のデータを見てみます。
陽性者576人、感染経路不明者298人(感染経路判明278人)となっています。
感染経路判明の278人は濃厚接触者として検査を受けた人(①有症状で感染経路が判明、③無症状で感染経路が判明)と考えられます。
感染経路不明者298人はほとんどが「②有症状で感染経路が不明」の感染者と考えられます。
入院時の検査や介護施設での定期検査等で感染者が見つかった場合等は「④無症状で感染経路が不明」に分類されることになりますが非常に少ないと考えられます。
まとめると次のようになりそうです。
感染者数 | 属性 |
278人 | ①有症状で感染経路が判明 ③無症状で感染経路が判明 |
298人 | ②有症状で感染経路が不明 ④無症状で感染経路が不明 |
無症状感染者の占める割合は3分の1程度と程度と試算され、無症状感染者からも感染は広がることがわかっています。(※)
「④無症状で感染経路が不明」の感染者数を推測するのは難しいです。
大阪府の場合、検査体制に余裕が無いため感染経路不明者298人のほとんどが「②有症状で感染経路が不明」の感染者であると推測されます。
大阪府で「④無症状で感染経路が不明」として発見される感染者はごく一部で検査対象にすらならない人は相当数いると推測されます。
感染経路不明者が50%を超えているような状況では「④無症状で感染経路が不明」の感染者を放置しておいて良いとは思えません。
「④無症状で感染経路が不明」の感染者を放置し、それを減らすための積極的な対策が取られていないために何度も緊急事態宣言が必要になると考えます。
つまり「自らが感染者であることを認識しない感染経路不明の無症状感染者が感染を広げている」のです。
※ https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/M20-6976?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori%3Arid%3Acrossref.org&rfr_dat=cr_pub++0pubmed&
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2774707
頭を切り替えましょう
エアロゾル感染を起こし、無症状感染者からも感染する新型コロナを考える際には、従来の感染症の考え方から脱却する必要があります。
「④無症状で感染経路が不明」の感染者を放置してはいけません。
「④無症状で感染経路が不明」の感染者を見つけるための検査は他の検査よりも優先度が低く、非効率ですが感染経路不明者が50%を超えているような状況では行わざるを得ません。
医療資源は有限なので非効率な検査を行うべきではない、行う余裕が無いと主張する人がいます。
しかし、検査件数世界144位で国は国民のために最善を尽くしていると言えるのでしょうか?
順位 | 国 | 人口100万人あたりの検査数 |
142 | ボリビア | 110,889 |
143 | トリニダードトバゴ | 109,055 |
144 | 日本 | 103,731 |
145 | ルワンダ | 103,672 |
https://www.worldometers.info/coronavirus/#countries
(2021年5月18日段階)
大量遺伝子検査には献血の検査があります。
日赤は20年以上前から8ケ所の検査施設で毎年500万検体以上(1日平均1万検体以上)の遺伝子検査を行っています。
未だに新型コロナの大量遺伝子検査体制を構築できないのはどういう理由なのでしょうか?
https://www.jrc.or.jp/donation/blood/flow/test/
https://www.wam.go.jp/wamappl/bb11gs20.nsf/0/9949854061cd6b844925716c0002b7d8/$FILE/20060512siryou_C.pdf
「④無症状で感染経路が不明」の感染者は自らが感染者であることを認識しない人達であり、感染対策で考えると最も危険な人達です。
「街角での無料検査」「地域を限定しての一斉検査」に反対の人は「④無症状で感染経路が不明」の感染者を放置しても良いと主張しているのも同然であり、感染対策としては暴論です。
いいかげん、頭を切り替えましょう。