新型コロナウイルスPCR検査の特異度を有り得ないほど低い数値で仮定し、ベイズの定理を用いる事の不適切さは何度も指摘してきました。
今回は少し異なる視点で考え、有病率0.1%、特異度99%という仮定が有り得ないことを立証します。
有病率0.1%、特異度99%という仮定
【1】なぜ一般市民はPCR検査をしちゃいけないの?
https://www.yushoukai.org/blog/pcr
もし、みなさんがPCR検査を受けて「陽性」の判定を受けた場合、実際に新型コロナに感染している確率はどのくらいになるかご存じですか?
①99%
②70%
③6.5%
答えは③。
PCR検査が陽性になったとしても、実際に新型コロナに感染している確率はわずか6.5%、つまり15人中14人は、検査結果が陽性であっても、新型コロナではない、ということになります。
ここでは計算しやすくするために1000人に1人が感染状態であると仮定します。
新型コロナのPCR検査の場合、感度は50~70%(ここでは70%で計算)、特異度は99%程度であると想定します。
10万人の市民全員にPCR検査を実施しました。
PCR検査の感度は70%ですから、100人の感染者のうち70人は陽性に出ます。一方、30人は陽性にはなりません。この人たちは感染しているのに検査結果は陰性なのです。
しかし、9万9900人の感染していない人も全員が検査を受けています。PCR検査の特異度は99%ですから、このうち1%(つまり999人)は病気でないにも関わらず陽性と診断されてしまうということになります。
10万人の検査を実施して、結果が陽性になるのは、実際に感染している100人のうちの70人と、感染していない9万9900人のうちの999人。合わせて1069人です。しかし、この中で実際に感染していたのは70人だけですよね。
検査結果が陽性になった人のうち、わずか6.5%しか本当の感染者がいない、ということになります。
新型コロナPCR検査は特異度が非常に高いため、ベイズの定理を用いて事後確率の議論をする必要性はありません。
また新型コロナPCR検査の「事前確率が低いほど偽陽性が減る(特異度が上がる)」という特性を考えずに使用することで実症例との矛盾が生じます。
(新型コロナPCR検査で事前確率と事後確率の関係を求める場合、特異度に定数(固定値)を用いることは不適切)
有病率が0.1%という低い場合に特異度が99%になることは有り得ません。
有病率0.1%、感度70%、特異度99.997%で計算すると陽性的中率95.89%です。
特異度99.997%というのは武漢での大規模検査の結果を踏まえてのものです。
(検査数989万9828、陽性者300、陽性率0.00303%でした。陽性者を全て偽陽性と仮定しても特異度99.99697%となります)
新型コロナウイルスPCR検査の偽陽性
新型コロナウイルスPCR検査の偽陽性はコンタミ、検体取り違え以外は考えにくいです。
注意が必要なのは新型コロナPCR検査の偽陽性の発生は陽性検体の存在に依存するということです。
有病率0.1%、検査数10,000、特異度99%と仮定した場合、次のようになります。
検査数 | 10,000 |
真陽性数 | 10 |
偽陽性数 | 99.9 |
検体取り違え
新型コロナウイルス感染症に係る検査結果の取り違えについて
新型コロナウイルス感染症の感染者に係る12月22日報告分で、沖縄臨床検査センターにおいて、4人の方の検査結果が間違っていたことが判明しました。具体的には、陽性2件が陰性、陰性2件が陽性だったとのことです。
https://www.city.naha.okinawa.jp/nahahokenjyo/kansensyou/KSOU002202012.html
当然ですが陰性検体どうしを取り違えても偽陽性とはなりません。
検体取り違えの偽陽性が起こるとしても陽性検体数以上の偽陽性数にはなりません。
全陽性検体を取り違えたとしても有病率が0.1%の場合、偽陽性数は10となります。
従って検体取り違えが原因の偽陽性が起こるとしても有病率が0.1%の場合には特異度は99.89%以上となり、99%にはなりません。
コンタミ
新型コロナウイルス感染症の検査結果の誤りについて
1 経過○ 4月11日(土曜日)、衛生研究所においてPCR検査を実施し、28名の方を陽性と判定し、記者発表を行った。
○ 本日、検査結果について疑義が生じたため、再度検査を実施した結果、28名中、陽性者は4名であった。
○ 28名中、「陰性」にもかかわらず「陽性」と判定とされ新たに入院された方は6名であった。
2 原因衛生研究所の検査において、遺伝子の抽出工程において、陽性者の検体が飛散し、他の検体を汚染したことによるものと考えられる。
https://www.pref.aichi.jp/site/covid19-aichi/pressrelease-ncov200412.html
当然ですが陰性検体で陰性検体を汚染しても偽陽性とはなりません。
有病率0.1%で特異度99%となるには陽性検体1つにつき、10検体を汚染させる必要があります。
PCR検査では通常、複数検体をまとめて検査しますので次のような結果になると考えられます。
(わかりやすくするために1回で20検体、1日に5回、100日検査を行うとします。合計10,000検体)
真陽性数 | 偽陽性数 | ||
1日目 | 1~4回目 | 0 | 0 |
5回目 | 1 | 10 | |
2~10日目 | 1~5回目 | 0 | 0 |
11日目 | 1回目 | 1 | 10 |
2~5回目 | 0 | 0 | |
12~20日目 | 1~5回目 | 0 | 0 |
21日目 | 1~2、4~5回目 | 0 | 0 |
3回目 | 1 | 10 | |
略 | |||
100日目 | 1~5回目 | 0 | 0 |
このように平均して10日ごとに陽性検体が1検体出現し、1検体あたり10検体を汚染させ続けた場合に特異度99%となります。
このようなことが現実に起こるとは考えられません。
(仮にこのような頻度でコンタミを発生させ、コンタミに気づかないのであれば、そのような検査機関は検査をしてはいけません)
これらのことから有病率0.1%、特異度99%という仮定がいかに有り得ないものであるかが理解できると思います。
驚く事に世の中にはさらにトンデモない仮定を行う人が存在します。
有病率0.005%、特異度99%という仮定
一方、特異度は感度より高いが、特異度が100%の検査は理論上、存在しない。理由はこうだ。仮に、特異度が99%だったとしよう。4月11日現在の日本の感染者数は、総人口1億2595万人対して6129人であるので、感染者の確率は2万人に1人ということになる。 表1に示すように、PCR検査で感染者をを正しく陽性と判定できるのは計算上、0.7人になる。この場合、偽陰性者は0.3人とほとんど発生しない。
一方、この場合の非感染者は1万9999人であるが、特異度が99%ならば、1%は誤って陽性になるので、偽陽性者が1万9999人×0.01=199.99人発生する。陽性反応的中率は、検査で陽性とされた真陽性者0.7人÷(真陽性者0.7人+偽陽性者199.99人)= 0.35%に過ぎない。この場合、数多くの偽陽性者が不適切な自宅隔離を余儀なくされることになる。https://www.jcer.or.jp/blog/babazonoakira20200415.html
有病率0.005%、検査数20,000、特異度99%と仮定した場合は次のようになります。
検査数 | 20,000 |
真陽性数 | 1 |
偽陽性数 | 199.99 |
検体取り違えによる偽陽性の場合、陽性検体が1つですので、偽陽性数は1となり、特異度は99.9949%となります。
コンタミによる偽陽性の場合、有病率0.005%で特異度99%となるには陽性検体1つにつき、200検体を汚染させる必要があります。
PCR検査を理解していない場合、このようにトンデモない主張を行うことになります。