狂犬病ワクチン接種は獣医師の利権ではないのか?
という意見があります。
狂犬病ワクチン接種は獣医師にとっての利権なのかについて考えてみました。
狂犬病ワクチン接種にかかる費用について
狂犬病ワクチン接種をする際に飼い主さんが払う費用の内訳は次のようになっています。
- 狂犬病予防注射済票交付手数料・・・550円
- 登録費用・・・3000円
- 注射費用・・・2500円~2800円程度(地方自治体、病院により異なります)
①②は地方自治体に支払われますので実際、動物病院の収入となるのは③の注射費用のみとなります。
動物病院で①②の費用を同時に徴収し、登録手続き、注射済票交付手続きを行うことがあります。しかし動物病院では手続きを代行しているだけで最終的には①②の費用は地方自治体に納付されます。
当院の状況
当院では2019年度に関して全売上に占める狂犬病ワクチン接種の売上は約2%でした。
狂犬病ワクチン接種が無くなったとしても病院経営にはさほど影響しません。
全国の動物病院では
平成30年の動物病院の数は11,981です。
平成30年の犬の予防注射頭数は4,441,826頭です。
動物病院の売上に関する統計データは存在しません。
多くの動物病院の年間総売り上げは、グラフで示している通り1,000万~5,000万の枠が多いです。我々動物病院業界では年間総売り上げがだいたい平均3,000万が通説になっています。
淀川中央動物病院院長 菅木悠二氏 平成24年 大阪フレンドロータリークラブ講演会より
平成24年の講演会での発言ですので平成30年には多少の変動があると思いますが、動物病院の平均売上を3000万円と仮定します。
狂犬病ワクチンの注射料金を2700円と仮定します。
これらから各病院の1年間での狂犬病ワクチン料金による収入の平均値は約100万円となります。
平均売上を3000万円とした場合、売上に占める割合は約3.3%となります。
3.3%を高いと考えるか低いと考えるかは人によって異なると思いますが、当院と同様に多くの動物病院では狂犬病ワクチン接種が無くなったとしても病院経営には、さほど影響しないと思います。
結論として
全売上に占める狂犬病ワクチン接種の売上の平均は約3.3%ですので、動物病院は狂犬病ワクチン接種に依存しているような状況ではありません。
しかし、現在の狂犬病ワクチン接種は狂犬病対策として現実的ではない施策です。このことに対して獣医師が声を挙げないのであれば利権であるとの批判は免れないと考えます。
参考文献
(1)平成30年飼育動物診療施設の開設届出状況
(2)厚生労働省 都道府県別の犬の登録頭数と予防注射頭数等