新型コロナの病床数は実際に確保されている数と乖離しています。
大阪府に関しては重症者向け病床数は厚生労働省発表の数字と大きく異なり、重症者数も不可解な数字となっています。
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大阪府のコロナ重症者向け病床数(府発表)
コロナ「病床使用率」現場感覚とズレ? 数え方は3通り
https://www.asahi.com/articles/ASND776W5ND3UTIL05K.html
国が新型コロナウイルスの感染ステージの指標にしている「病床使用率」について、「実態を表していない」との批判が出ている。病床の数え方は3通りあり、自治体によって認識にもばらつきがある。特に多くのスタッフが必要になる重症者は医療機関側の負担が大きい。病床の逼迫(ひっぱく)を伝えるには、実態に合ったデータを使うべきだとの指摘もある。
国が示している病床の使用率について、日本医師会の中川俊男会長は先月25日の会見で、「まだ余裕があるようにみえるかもしれないが、現場感覚と著しいズレがある」と指摘。「すぐに受け入れられる病床」を分母にして計算すべきだとの考えを示した。
感染者が急増する大阪府はその翌日から、重症者について、もともと発表していた「確保病床」の使用率だけでなく、すぐに受け入れられる病床の使用率も公表するようにした。
7日公表時点の重症者は過去最多と並ぶ141人。重症者向けの確保病床(206床)の使用率は68・4%だが、すぐに受け入れられる病床(174床)で計算すれば、81・0%に跳ね上がる。
3日の府対策本部会議では、今後の病床使用を予測するシミュレーションでも、より実態に沿った見通しを示すため、確保を目指す最大数(215床)ではなく、「確保病床」を分母にした試算に切り替えた。
府の担当者は「病床が逼迫する実態を伝える必要があると考えた。府民の関心も高まっている」と話す。
2020年12月8日 朝日新聞DIGITAL
第 31 回大阪府新型コロナウイルス対策本部会議
http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/38215/00380496/ikkatsu.pdf
大阪府のコロナ重症者向け病床数(厚生労働省発表)
新型コロナウイルス感染症患者の療養状況、病床数等に関する調査結果(12月2日0時時点) 厚生労働省
大阪府
(1)PCR検査 陽性者数 4,192
(2)入院者数 (入院確定者数を含む) 799
確保病床数 (注4) 1,432
確保病床数に対する使用率 56%
最終フェーズにおける即応病床 (計画)数(注 5) 1,615
うち重症者数 209
確保病床数 (注4) 366
確保病床数に対する使用率 57%
最終フェーズに おける即応病床 (計画)数(注 5) 215
(3)宿泊療養者数 640
確保居室数 (注6) 1,555
確保居室数に対する使用率 41%
最終フェーズにおける宿泊療施 設居室(計画) 数(注7) 1,036
(4)自宅療養者数 1,700
(5)社会福祉施設等療養者数 0
(6)確認中の人数 1,053
注4:いずれかのフェーズにおいて、空床にしておく、あるいはすぐさまその病床で療養している患者を転床させる等により、新型コロナウイルス感染症患者の発生・受入れ要請があれば、即時患者受入れを行うことについて医療機関と調整している病床
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000703096.pdf
12月2日時点での確保病床数は厚生労働省発表(366床)と府発表(206床)では大きく異なります。
不思議なことに確保病床数(厚生労働省発表)は確保を目指す最大数(215床)を上回っています。
厚生労働省発表の確保病床数の推移
確保病床数 | 最終フェーズにおける即応病床(計画)数 | |
12月2日 | 366 | 215 |
11月18日 | 366 | 215 |
11月4日 | 355 | 215 |
10月7日 | 333 | 215 |
9月23日 | 323 | 215 |
9月16日 | 262 | 215 |
6月17日 | 188 | 215 |
5月15日 | 188 | 300 |
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/newpage_00023.html
9月16日に突然74床増加しました。
9月23日にも61床増加しています。
9月16日の厚生労働省発表資料をみてみます。
新型コロナウイルス感染症患者の療養状況、病床数等に関する調査結果( 9 月 16 日 0時時点)
大阪府の重症者数は 注8 51(35) となっています。
注8:括弧内の数値は前回報告時と同様にハイケアユニット等に入院している者を除いたもの。
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000694896.pdf
9月16日以降の厚生労働省発表資料では大阪府の重症者数は「ハイケアユニット等に入院している者」を含んだものとなっていると考えられます。(大阪府の重症者向け確保病床数も同様と考えられます)
府発表資料では重症者数、重症者向け確保病床数はハイケアユニットを除外したものになっていると考えられます。
ハイケアユニット(HCU)とは
ハイケアユニット(はいけあゆにっと/High Care Unit)とは、4病床に対し、1名の看護師が常時配置されている高度治療室である。略してHCUともいう。
https://www.kango-roo.com/word/133
高度治療室であるハイケアユニットは、一般病棟の中間に位置する病棟で、ICUから移されてきた患者を対象とする。集中治療室からの緊急の状態を脱した患者が、その後に一般病棟に転棟できるように支援を行う。急性期は脱したものの、一般の病棟と比べると生命に大きく関わるレベルの患者が多く、患者の状態を観察してアセスメントを行いながら、処置や緊急時の対応を行うことが必要となる環境である。
大阪府のコロナ重症者向け病床数は5種類
まとめると大阪府のコロナ重症者向け病床数は5種類ありそうです
(12月2日時点)
- 確保を目指す最大数:215床(府発表、厚労省発表)
- 確保病床数:206床(府発表、HCUを除く)
- 実運用病床数:161床(府発表、HCUを除く )
- 確保病床数:366床(厚労省発表、HCUを含む)
- 実運用病床数:不明 (HCUを含む)
実際に稼働しているのは174床(府発表、HCUを除く)ということです。
HCUを含んだ実運用病床数は不明です。
重症者数
大阪府、東京都の重症者数も2通りあります。
大阪府の重症者数
府発表 | 厚生労働省発表 | |
12月2日 | 131人 | 209人 |
11月25日 | 107人 | 181人 |
11月18日 | 72人 | 103人 |
11月11日 | 63人 | 91人 |
11月4日 | 37人 | 50人 |
東京都の重症者数
都発表 | 厚生労働省発表 | |
12月2日 | 59人 | 246人 |
11月25日 | 54人 | 250人 |
11月18日 | 39人 | 187人 |
11月11日 | 38人 | 154人 |
11月4日 | 35人 | 128人 |
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/newpage_00023.html
https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/
国と東京、大阪で異なる「重症者」基準 医療逼迫度の評価困難に
https://www.sankeibiz.jp/econome/news/200820/ecb2008200650001-n1.htm
大阪府では、厚労省の基準に「気管挿管した患者」を加え、重症者を定義。気管挿管については、厚労省が2月の通知で、新型コロナ患者の重症化を判断する際に例示していたことを根拠にしているという。
府の担当者は「あくまで厚労省の通知などに基づき定義しており、府で独自に判断しているものではない」と釈明。吉村洋文府知事は18日、大阪府が東京都より重症者が多いことをめぐり「東京とは基準が違う」と言及しながら、「それだけが理由では説明がつかない」とも話した。
2020年8月20日
東京都、大阪府以外の自治体発表の重症者数と厚生労働省発表の重症者数は大きく異なりません。
東京都、大阪府とそれ以外の自治体では重症者の定義が異なるようです。
東京都が実態を隠蔽しているかのように報道されましたが実際は大阪府の数字もおかしいです。
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/medical/detail/detail_19.html
東京都に関しては「都発表の重症者数<厚生労働省発表の重症者数」となっているのはわかります。
(乖離は大きいですが矛盾はしていません)
大阪府に関しては「府発表の重症者数>厚生労働省発表の重症者数」となるはずですが
実際は「府発表の重症者数<厚生労働省発表の重症者数」となっています。
これは「府発表の重症者数」+「ハイケアユニット等に入院している者」=「厚生労働省発表の重症者数」(+「気管挿管者の数」)となっているためであると考えられます。
(気管挿管者の数は不明です)
東京都は「集中治療室に入っている患者」を重症者から除外して発表し、大阪府は 「ハイケアユニット等に入院している者」を重症者から除外して発表しています。
まとめると
大阪府のコロナ重症者向け病床数は5種類あります。
府発表のコロナ重症者向け病床数はHCUを除いていますので実運用数(運用率)は不明です。
府発表の重症者数は「ハイケアユニット等に入院している者」を除外していますので実際の重症者数は不明です。
大阪府はコロナ死の8割超が軽症・中等症から…衝撃の調査結果が!
https://news.yahoo.co.jp/articles/f416d6ff130b709846e5d469a6ced1992fe312d1
新型コロナ第3波が猛威を振るっている。感染者数も重症者数も過去最悪の水準で推移。日々の死者数も過去最多の31人をいつ超えてもおかしくない状況だ。驚くことにコロナ死の大半は、重症者ではなく、軽症・中等症扱いの患者であることが分かった。軽症患者の容体が急変し、死に至るケースが予想外に多いのだ。
2020年11月25日
軽症、中等症から急変することは有り得ると思います。
しかし、府発表の「ハイケアユニット等に入院している者」を除いた重症者数は実態を反映していない可能性があります。(実態は不明ですので断定はできません)
知事からのメッセージ
https://www.pref.wakayama.lg.jp/chiji/message/20201210.html
今や、大阪の感染の爆発により、和歌山にも火の粉がどんどん飛んできまして、和歌山の保健医療当局も大忙しであります。大阪の南部は元々3次救急が脆弱なので、最後の砦は和歌山市の大病院という形で駆け込んで来られることが常態化していたのですが、大阪の方は分かってもらえているでしょうか。最近は命に関わりかねない肺炎患者が大阪から救急車で運ばれてきたと思ったら、病院に入る際の抗原やPCR検査で陽性が判明し、直ちに和歌山のICUに準じる病床が一つ埋まってしまうことになりました。看護師を応援に派遣しているだけでなく、コロナの重篤患者までICUに受け入れているのです。(同様な例が複数あります)。しかも、後で分かったのは、この患者さんが入所している問題の福祉サービスで既にコロナ患者さんが出ていたということです。コロナ患者が出ていても接触した可能性のある人をもう調べられなくなっているということでしょうか。
大阪府は既にコロナ重症者向け病床は飽和しているのではないでしょうか?