コロナウイルス感染症

コロナウイルス感染症、指定感染症から外すべきという木村盛世氏、音喜多駿氏の主張を検証

コロナウイルス感染症を指定感染症から外すべきという意見があります。
仮に指定感染症から外した場合、どのようなことが起こるのかを検証します。

指定感染症から外れると

指定感染症になるとどうなる?
指定感染症になることによるメリットとして、以下が挙げられます。

1. 患者に対する入院措置を取ることができる
2. 入院費が公費負担となる
3. 届け出が必須となり発生動向調査が容易となる
4. 接触者の把握が容易になる
5. おそらく医療従事者の感染リスクが減る

https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20200127-00160618/

これらのメリットが無くなります。

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000040509.pdf

①入院措置について
五類感染症になると患者に対する入院措置が取れなくなります。
二類感染症になると患者に対する入院措置が取れます。

②入院費用について
五類感染症になると患者が自費で負担する必要が出てきます。
二類感染症になると医療保険適用残額は公費負担になります。
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/10-2/kousei-data/PDF/22010224.pdf

③発生動向調査
五類感染症になったとしても届け出義務はありますが日毎の感染者数の推移、重症者の推移等の情報が得られなくなる可能性があります。

https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000597156.pdf

④濃厚接触者の検査、無症状の感染者について
二類感染症になる場合、無症状感染者は入院措置の対象外となります。
濃厚接触者の検査は濃厚接触者に保健所が調査をお願いする形になります。検査キャパシティが不足している保健所では今まで以上に検査が行われなくなる可能性があります。

五類感染症になると

仮に五類感染症になる場合、次のようなことが起こると考えられます。

  1. 就業制限の対象外となる ※1
  2. PCR検査、抗原検査は行政検査ではなくなる

季節性インフルエンザと同じ五類感染症扱いになると仮にコロナウイルス感染症に感染しても軽症の場合は一流企業に勤務している人や公務員以外は休むことが難しくなるでしょう。
従って有症状者が公共交通機関や職場で感染を拡大させることが予想されます。

PCR検査、抗原検査が行政検査ではなくなった場合に検査数が増えるのでしょうか?
濃厚接触者の検査のハードルが上がり、無症状者の検査が行われなくなった場合、今までなら隔離されていた無症状の感染者が市中で感染を拡大させることが予想されます。(就業制限の対象外となりますので仕事を休むこともできません)

市中の感染者が増えると有症状の感染者や重症者が増えます。
これらの感染者が病院に殺到することが予想されます。
感染者の急増に対して一般の診療所では対応しきれなくなり、コロナ疑いの患者は診察そのものを拒否されることが考えられます。
従って検査数は増えずに軽症者は診察を受ける事すらできなくなることが予想されます。
(重症者はキャパシティの範囲内で診察は受けられるでしょう)

※1:https://www.winc.or.jp/kouhou/1611/1611_3.pdf

木村盛世氏

指定感染症外しの根底にあるものは集団免疫獲得

元厚労省技官が断言「1カ月自粛してもコロナは収束しない」

一般にどんな感染症も、収束への道筋は二つのみで、集団免疫を獲得すること、あるいは有効なワクチンが開発されること以外にありません。1~2カ月という短期間での収束とは、現実逃避にすぎないと思います。

https://news.yahoo.co.jp/articles/27616e469d5fe99567d7987dd96e1fb0f2f9ca52

SARS、MERS、エボラは集団免疫やワクチンで収束したとは考えにくいです。
コロナは短期間では収束不可能という立場のようです。
(ワクチンは集団免疫獲得のために接種することがありますので対立概念では無いのですが)

感染症に対する政策は、3種類。(1)徹底的に行動制限して封じ込める「抑圧政策」、(2)社会的距離を保ち経済活動も制限する「徹底的自粛政策」、(3)緩やかな自粛で集団免疫獲得を目指す「緩和政策」だ。アメリカはじめ多くの国々は、「徹底的自粛政策」をとっている。

『抑圧政策』『徹底的自粛政策』は、厳しくするほど感染を抑えられますが、短期間では効果は一時的。解除すれば、再び感染が広がることは、4月14日にハーバード大の研究者が『サイエンス』誌に発表した論文でも予測されています。

一方の「緩和政策」にも、当然デメリットはある。

集団免疫を得るには、人口の6~7割程度は、新型コロナに感染しなければいけません。日本は、諸外国に比較して致死率は低いですが、死者は数十万人単位になるという試算もあります。“医療崩壊” の危機は、ひっ迫した問題です」

「全員予防ではなく、重症化しやすい人、基本的には高齢者に政策のターゲットを絞るべきです。若者の行動自粛ではなく、いかに高齢者が人との接触を減らせるかに焦点を当てるべきだと思います。

それ以外の人は、なるべく普通に暮らしながら、集団免疫の獲得を目指す。賛否両論あるとは思いますが、真っ向から否定することではないはずです。

https://news.yahoo.co.jp/articles/27616e469d5fe99567d7987dd96e1fb0f2f9ca52

木村氏は集団免疫獲得には大きなリスクを伴うことは認識しています。
コロナウイルス感染症対策として集団免疫獲得を目指すべきという立場でそのための手段が指定感染症外しです。

「とにかく避けなければいけないのは、医療崩壊。政府には、『徹底的自粛政策』で時間を稼ぐ間に、人工呼吸器の数を確保することや、感染者数の少ない地方から呼吸器を扱える医師や看護師を都市部に派遣してもらうなどの医療資源確保と、トリアージ(患者の治療優先順位決定)の基準設置をぜひやってもらいたい。

https://news.yahoo.co.jp/articles/27616e469d5fe99567d7987dd96e1fb0f2f9ca52

指定感染症外しで重症者が病院に殺到するのは避けられないという考えのようです。
そのための対策を行うべきという意見です。
トリアージの基準設置にまで言及していますのでイタリアのようになる可能性があることは認識してそうです。

北イタリアの病院は戦時下のような状態

北部のミラノ近郊にある病院の集中治療室(ICU)で治療に当たるダニエル・マッキーニ医師のSNS(交流サイト)の書き込みも話題になっている。「高齢者だけでなく、若い人も気管挿管され、ICUに搬送される」「1日に15~20人が入院し、ICUは崩壊しつつある。戦争のようだ」と、その惨状を語っている。

また、イル・ジョルナーレという現地メディアには、ロンバルディア州の医師の衝撃的な証言が掲載された。それは、「60代以上の患者には挿管しなくなった。若い人や他の病状のない人を選んで挿管する人の選択をしなければならない。人工呼吸器を必要とするすべての人に挿管できなくなった」というものだ。

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00122/031200005/?P=2
PCR検査体制を拡充すると医療崩壊が起こるという説について 日本では、PCR検査体制を拡充すると医療崩壊が起こるのでむやみに検査をすべきではないという意見がありました。イタリアと韓国の医療崩壊の...

問題点

木村氏の主張は数十万人死亡する可能性があるが集団免疫獲得を目指すべきというものです。(非常に勇気のいる意見です)
問題点は以下の通りです

  1. 仮に集団免疫を獲得した場合、どの程度持続するのか?
  2. 医療崩壊は避けられるのか?
  3. 東アジア特有の感染が拡大しにくい条件下(マスクの影響が大きいと考えます)で集団免疫獲得を目指すのは得策なのか?

①について
仮に集団免疫を獲得しても季節性インフルエンザのように免疫力が持続しない場合、毎年数十万人単位の死亡者が出る恐れがあります。

②について
木村氏が提唱する対策だけで医療崩壊を防げるのかは疑問です。
感染拡大を人為的にコントールするのは非常に困難です。

③について
現在の日本の罹患率は0.3%程度と推測されます。
感染拡大が起こりにくい条件下で敢えて集団免疫獲得を目指す必要性があるのでしょうか?
同じ東アジアの台湾、中国、韓国のように「抑圧政策」「徹底的自粛政策」 を目指さない理由は何なのか?

日本維新の会 音喜多駿氏

指定感染症外しの根底にあるものは公費削減?

音喜多氏は指定感染症を外し、5類感染症にすべきと主張しています。

● 指定感染症は一例残らず「報告義務」があることから、負担が非常に大きく医療資源を逼迫する

● 情報管理だけで保健所がパンクするし、PCR検査も行政主体の「行政検査」になるので検査数を増やしづらい。指定感染症における疫学調査等の理由から、医療機関は「委託契約」を自治体と結ぶ必要があり、事後にも可能だがそんな面倒なことは実際にはやらない(ので検査は増えない)

● 何より、これから季節性インフルエンザが流行る。インフルの検査で来院して、陰性となった場合は新型コロナの疑似症例となる。新型コロナが「指定感染症」のままだと5類感染症である季節性インフルの「上」扱いになるため、すべての検査患者を「新型コロナの疑いあり」として保健所に相談・対応する必要が出てきて、医療現場が大混乱に陥るのではないか

● 指定感染症のメリットとしてあげられる入院隔離は、現時点で実態としては全例で行われていない。施設の消毒についても、クラスター対応がメインでもはや全例についてやっていない。

https://otokitashun.com/blog/daily/24140/

五類感染症になったとしても届け出義務はあります。

一般の診療所での検査を増やすためには医療機関が締結する必要がある「委託契約」を簡素化すれば良いと考えます。
そのための法律改正、現行法内での対応等を考えるのが政治家の役割です。

保健所が過負荷になっている場合は保健所以外の職員が手助けをするという方法があります。

知事からのメッセージ
新型コロナウィルス感染症対策(その15) -拡大防止のための奮


県庁の職員も、通常はこういう感染予防などの仕事は、野尻技監率いる福祉保健部健康局と各保健所の仕事なのですが、コロナとの長い戦いになると思われることから、この主力部隊が疲弊してしまうと継戦能力が失われるので、応援も出すし、医学的知識のいらない関連業務、例えば感染者のちょっとした立ち寄り先のヒアリング、経過措置期間の自宅待機者のお世話とかは、出来るだけ主力部隊の仕事から外して他部局の人にやってもらっています。

https://www.pref.wakayama.lg.jp/chiji/message/20200420a.html

入院隔離施設が不足する場合、入院隔離施設の拡充を進める他ありません。
それでも不足する場合は自宅隔離となります。

全国全ての保健所が過負荷になっているわけではありません。
隔離施設に余裕のある地域もあるでしょう。
五類感染症にすることにより、感染者が少なく感染対策が上手くいっている地域に悪影響が及ぶ可能性があります。

● 指定感染症を解除するとは、決してコロナを「甘くみている」というわけではない。ここまで市中感染が広がった以上、実態に合わせた対応をする方が保健所・医療現場の負担軽減、PCR検査の拡充、季節性インフルへのスムーズな対応等のメリットが大きく、一人でも多くの人を救うことにつながる。

https://otokitashun.com/blog/daily/24140/

音喜多氏があげているメリットは五類感染症にしなくても対応できることがばかりです。

音喜多氏は五類感染症にすべきと主張し、メリットばかりをあげていますがデメリットには一切触れません。
五類感染症にすると木村氏が想定するように数十万人単位の死亡者が出て、重症者が病院に押し寄せる可能性があります。
その可能性に一切触れないのは無責任です。

知事からのメッセージ
新型コロナウイルス感染症対策(その31) 日本の奇跡は保健行政の現場から


日本は感染症法に基づく隔離という権限とそれの組織としての保健所がある。欧米には厳密にいうと存在しない。従って欧米では、感染したらどんどん拡大することを止められない。個々の人がいきなり病院に行ってしまう。その結果、病院の能力を超えると重症者も手当てすることが出来なくなり人が死ぬ。これはダメだということで、発症しても重症化するまでは自宅で様子を見ておきなさい、病院に押しかけてはいけませんよ、というようになる。

https://www.pref.wakayama.lg.jp/chiji/message/20200615.html

五類感染症にした場合、日本で感染者が少なく済んでいる要因の一つが無くなりますのでイタリアのようになる可能性があります。

五類感染症にした場合、国民の側には一切メリットはありません。
政治家の側に立ったメリットを考えてみます。

  1. 入院費用を患者負担にすることで公費削減
  2. 行政検査の数を減らすことで公費削減
  3. 隔離施設廃止による公費削減

ミニ自民党の日本維新の会の議員ですので指定感染症外しの根底にあるのは公費削減かもしれません。

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