川崎市健康安全研究所所長で新型コロナウイルス感染症専門家分科会にも参加している岡部氏のインタビューがBuzzfeedに掲載されていますので検証します。
インタビュアーは岩永直子氏です。
全くtwitterでは絡んだことはありませんでしたが、知らない間にブロックされてました。
峰宗太郎氏と同様、気に入らない意見を言う人はどんどんブロックする人のようです。
Contents
必要な人へのPCR検査、十分か?
ーー相変わらずPCR検査について不足しているという問題が指摘されています。症状がある、または感染者の濃厚接触者で医師が検査が必要と判断した人にも、まだ不足しているのではないかと言われています。
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/covid-19-okabe-8-1?origin=shp
保健所の職員を増やすとか電話交換の人を増やすとかが必要でしょう。これは拡充が進んではいますが、全部満足には至っていません。特に専門性がある人、トレーニングを積んだ人はそうはすぐには集められないのです。
行政検査の拡充はですすんできていますし、民間への検査の委託も進んでいます。
川崎でも当初は1日数十件しか検査できていなかったのが、今はPCR検査の機械も増やして毎日100〜200件ぐらいは検査できるようになっています。ほぼ2〜3倍の検査を民間の検査機関にお願いしています。
ただ、民間に出す時に、検体を届けて検査結果が手元に届くまでに時間がかかっているというのも事実だと思います。
http://www.city.kawasaki.jp/350/page/0000116827.html
川崎市のコロナウイルス発生状況と検査実施状況です。
1日350件程度の検査で陽性者30人程度、陽性率8.5%程度ですので、検査は飽和状態にありそうです。
検査体制の整備が全く行われていなかったのがわかります。
一体今まで何をやっていたのでしょうか?
無症状者への検査への過大な期待 どう見るか?
数を取るか質を取るかという話で言えば、行政検査は質を確保した上で、なおかつ一定の数を確保しなければいけない。ただ、数を増やした場合に十分な質は担保できません。ある程度量をこなすことを優先にする、そこはいわば検査ビジネスでも良いと思います。
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行政検査の場合は、熟練した職員がきちんと標準化された試薬と器材を使って、精度管理も定期的に行なっています。
一方、数を追求するビジネスとして検査をしているところでは、精度管理などしていない会社や検査機関もあります。
そちらの検査が広がってきた時に、精度管理は検査する側が責任を持ってやるべきです。つまり、一定のレベルを保ちながら数をこなしてほしい。
このような考え方なので検査がすぐに飽和してしまうのです。
典型的なお役所仕事です。
イラストで示します。
役所の窓口業務をPCR検査、若い公務員を民間の検査会社や研究所、高齢の公務員を衛生研究所とします。
高齢の公務員(衛生研究所)が窓口業務(PCR検査)をすると作業が遅いので行列(PCR検査待ち)ができてしまいます。
若い公務員(民間の検査会社や研究所)が窓口業務(PCR検査)をすると作業が早いので、こういう人達にどんどん手伝ってもらいなさいと言っているのです。
質もそんなに変わりません。
役所で行列を作るぐらいで文句を言う人は少ないでしょうが、PCR検査で同じことをされると死人が出ます。
岡部氏は役所の論理が最優先で行列(PCR検査待ち)を作り、国民が困っていることには全く関心が無いのでしょう。
(高齢の公務員でも作業が早い人はいます。高齢の方を揶揄する意図はありません)
元気で感染の疑いもない人が、明日会社に行っていいか、出張に行っていいか、サッカーや野球の試合に出ていいかなどを確認するために検査する時に、行政検査として税金で面倒を見る必要はないのではないでしょうか。
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税金でやる検査は、質を確保し、なおかつこれはやらなければいけないという対象にある程度絞って行うべきです。
コロナウイルス感染症は無症状の人が感染を拡大させます。
従来の行政検査の考え方で対応していては感染を収束させ、経済活動を継続するのは不可能なのは現在の感染状況からみて明らかです。
世界各国、コロナウイルス感染症の特性を理解し、検査を拡充させていますが岡崎氏は未だに理解できていないようです。
保健所や行政に後始末させるな
ーー孫正義会長は、自分たちの検査はあくまでも「疑い」を見るものであって、確定検査は保健所にやってほしいというスタンスです。先日も保健所に確定検査を断られたと、批判するツイートを投稿していました。
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結局、そういうことになると思うのです。
もちろん疑い例はきちんと再検査を行う必要がある。
しかし、それが一時に多数保健所に持ち込まれると、これもまた肝心の人の検査に支障が生じてしまうことを危惧します。これらのプロセスもあらかじめ明確にしておいてほしいと思います。
現行の法律の元では一部の医療機関を除くと保健所に確定検査を依頼する他ありません。
孫氏のやり方にも問題はありますが、岡部氏は検査が受けられずに困っている人達がいることが理解できていないようです。
ーー保健所は「症状が出るまで検査は不要」と断ったそうなんです。結果の後始末を保健所などにさせるのは筋違いということですね。
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そもそも断られたということは、検査のシステムができていないということです。保健所は「疑いのある人を検査する」という命題があって、そのような人には税金を使って検査する(行政検査を行う)という決まりがあるわけです。
「無症状で感染の疑いもないが、検査で陽性が出たから確かめてほしい」という検査は、保健所のルールからは外れます。またそのような人から多数検査をを引き受けた場合、やはり肝心な人への検査が圧迫される可能性もあります。これは避けたいところです。
岡部氏は現行のシステム、ルールを堅持することしか頭にないようです。
役人脳で頭が硬直しています。
検査を希望する人が自費の民間検査に頼らざるを得ない状況を認識するつもりがないのでしょう。
我々の検査の精度は車で言えば、超高性能のスポーツカーのようなものを使っているわけです。誰でも簡単に乗りこなせるわけではないし、相当な性能を持っている。
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検査の精度を自画自賛するのは勝手ですが超高性能のスポーツカーをフル稼働させて世界151位の現状をしっかりと受け止めるべきです。
国名 | 人口当たりのPCR検査件数順位 |
パキスタン | 147 |
ジンパブエ | 148 |
トリニダードトバゴ | 149 |
チュニジア | 150 |
日本 | 151 |
メキシコ | 152 |
https://www.worldometers.info/coronavirus/
ーー自分たちはどんどんやる、あとはお任せ、と検査のその先を考えていないことに保健所や医療現場の人は疑問を持っています。
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「このような検査ができるようになった。こういうことが考えられるが、それをやるためにはどうしたらいいでしょう」と、事前に話し合いがあるならいいですが、何もないまま「困った時はよろしく」では一方通行です。
我々は重症になる人、なりそうな人にきちんとした検査を行い、また疫学調査で感染の広がりを抑えるという目標があります。そして、きちんとしたデータで監視を続けることが必要です。その目的を外れたものに関しては別のシステムが必要です。
別のシステムが必要と言っていますがシステム、ルールを見直すつもりは無いのでしょう。
何ヶ月経っても何も変わらない、変えるつもりがないのは老害以外の何物でもありません。
(岡部氏はシステム、ルールを変える立場にはありませんが、政府に提言できる立場にあります)
「保健所や行政に後始末させるな」となってますが「自費の民間検査に頼らざるを得ない状況になっていることを自覚しろ」と言いたいです。
「偽りの安心」 検査する側の見識が問われる
ーーそもそも、PCR検査は「陰性確認」にはならないということが、いまだに理解されていないと感じます。
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PCR検査の陰性は「今、陰性である」結果に過ぎません。たぶん、一般の人の受け止め方は、「陰性だから、今日働ける」というだけではなくて、「これで1週間の休み中にどこか遊びにいける」「飲み会にも出ていいんだ」というものだと思うのです。
今日の陰性は明日の陰性を保証しないということが理解されていない。それが伝わらないまま、偽りの安心を与えてしまえば、その人が無自覚に行動して感染を拡大してしまう可能性も生まれます。検査する側の責任や見識が問われると思います。
偽陰性者が感染を広げるという日本独自の珍説を未だに披露し続けています。
この珍説を広めるためのペーパーが配られているのでしょうか?
ーー「精度を上げるために、同じ人に同時に2回やればいい」と誤った情報を発信するテレビ番組さえあります。
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どうぞやってください、と思います。でもその結果が医学的に正しいのかと求められても、2回陰性でも3回目が陰性だという保証はありません。
大阪を除いて2検体以上の検査が行われているはずです。
複数検体を用いるのは感度を上げるためです。
同時に2回やれと言っている人は少ないと思いますが、偽陰性が疑われる場合には複数回検査をするのは間違った行為ではありません。
ーー世田谷区のような自治体が検査拡充を打ち出すなら、税金が使われるはずです。それが科学的に妥当なのか、説明責任もあるはずです。
行政が新しい工夫をして一歩踏み出すこと自体はいいと思うのです。でも、人口90万の世田谷区が、本当に「いつでも、どこでも、誰もが何度でも」検査ができるのか、キャパシティは大丈夫なのか、他人事ながら気になるところです。
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/covid-19-okabe-8-1?origin=shp
また、(複数の人の検体をまとめて検査する)「プール方式」を取るとのことですが、5人分、10人分の唾液を集め、1回の検査をやることについて、すでに科学的な根拠が得られているのかどうか。精度は大丈夫かなど、私には疑問点があります。
プール方式は実施実績があり、論文も公開されています。
きちんと勉強すべきです。
「武漢が世界で一番安全」にぎわう街で聞く市民の本音
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO61714010Q0A720C2000000?s=4
検査は6歳以上の全武漢市民を対象に5月14日~6月1日の19日間にわたって集中的に実施された。検査を受けた人は「所要時間は1人当たり数十秒から1分ぐらい。飛沫感染を防ぐため、横向きに座って検体を採取された」と語る。10人まとめて検査して、陽性が出たグループのみ改めて個別に検査をし直すなどして効率化したという。
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.05.01.20086801v1
また、PCR検査でやるならば、「今日の陰性は明日の陰性を意味しない。いわゆる陰性パスポートではない」と検査を受ける人にきちんと説明しなければいけません。陰性証明という認識でスタートするならば検査の使い方を間違っています。
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検査を受けた時点で陰性という結果は意味があるでしょう。
陽性なのか?陰性なのか?何もわからないということとの違いが理解できないのでしょうか?
「PCR、PCR」と言い続けている間に、インフルエンザの迅速診断的な抗原検査も開発され、インフルとコロナを一緒に検査できるキットも開発されているわけです。科学は進んでおり、半年後には全く違う戦略が取られるかもしれません。
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/covid-19-okabe-8-1?origin=shp
これだけPCR検査にケチをつけておいてPCR検査よりも感度が劣る抗原検査をどのように扱うつもりでしょうか?
自由を認めれば、不自由を引き受けなければならない
ーー「劇薬」を自ら求める声が出ていることに、怖さも感じます。
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/covid-19-okabe-8-2?bfsource=relatedmanual
本当に怖いですね。でも劇薬を使う側は、劇薬は劇薬なんだという認識を持って使わないといけません。安易に使えるものではありません。
劇薬を求める声が出ている現状を認識できない人達の方が怖いです。
ーー自分で行動に責任を持って自律する必要が出てくるということですね。
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/covid-19-okabe-8-2?bfsource=relatedmanual
そうです。自律とは「自らを律することができる」ということで、勝手にやってもいいということではない。自らに制限を課すことができる、という意味です。
自由とは、実は自分で作った不自由を守れる、ということではないでしょうか。人が制限を課するか、自分でまさしく律するか、ということですが、僕は後者でありたいと思います。
国民に努力を求めるばかりで政府はどれだけの努力をしているのでしょうか?
国民に対してえらそうに説教するよりは政府に向かってきちんと提言をすべきでしょう。
ーー今、沖縄のような観光地でも増えてますね。東京以外の大都市圏でも増えています。みんながバラバラなところに行っても、他の地域に感染を広げる後押しにならないですか?
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怖かったら行かなければいいのです。「政府がいいって言っているんだから自由にしていいんでしょ?」とするのもおかしい。結局、パターナリズム(父権主義)の思考停止にみんな陥っていますね。
税金を使って全国に感染を拡大させているのが問題なのです。
岡部氏の思考停止ぶりには驚かされます。
不安に煽られないために何ができる?
ーーしかし、これまで専門家会議も分科会もメディアを通じて国民に丁寧に現状を伝えてきたと思います。それでも、PCR検査問題も、一つの切り札で全て解決するという単純化された情報を信じ込む問題も繰り返されています。
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それが我々の社会なのでしょう。でも諦めてはいけないので、こういう社会の中でも繰り返し正確な情報を発していかないと、退歩になってしまいます。
「8割は人にうつさない」「偽陰性者が感染を広げる」「PCR検査の感度は70%、特異度は99%」
この中にどれだけ正確な情報があるのでしょう?
我々は、責任を伴う自由に耐えられるのか?
ーーハンセン病やHIVに対する差別の反省が前文に書き込まれています。
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/covid-19-okabe-8-2?bfsource=relatedmanual
そういう歴史的な経緯を分科会で発言すると、「未だに分科会の一委員と厚労省はレトロな時代を引きずっている」とある人からテレビで言われたこともあります。
ーー感染症に関係する差別や偏見はなくすことはできないものでしょうか。
少数の人がそういう考えを持つことを潰すことはできないでしょう。でもその少数が少数に留まるようにしないといけない。
その差別や偏見が社会の中で感染を起こして大きな力にならないように気をつけないといけないし、いわゆる「コモンセンス(良識)」のある人たちがしっかり発言をしていかなければいけないと思います。
ハンセン病患者への人権侵害事例を持ち出して検査抑制論を展開するなど以ての外です。
「誰が感染しているかわからない」「感染してもすぐに検査をしてもらえるかわからない」状況であれば国民が疑心暗鬼に陥るのは当然です。
こういう状況を招いておきながら、良識論を振りかざすのは馬鹿げた行為です。
岡部氏は終始いかにも役人という考えを披露し続けました。
スピードが重視される感染症対策では「老害」以外の何物でもないでしょう。