先日、sguardo.ctor氏の投稿の問題点を指摘しました。
もう一点重要なことがありますのでまとめます。
「熟練の技」と「システム化」
システム化というと、会計システム、販売管理システムといった電子的な仕組みを導入することを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。一般的にシステム化イコールIT化と連想しやすく混同しがちですが、システム化とは、誰がやっても同じ成果を生み出せる手法や体制を総合的に表現した言葉です。
人が手作業で行う業務であっても同じ成果を生み出せる手法であれば、それは「システム化されている」といえます。ITを活用したシステム化は、手作業で行っていた仕組みを短期間で大量に処理し、人的ミスの割合を減らす装置化ということになります。
ttps://www.noc-net.co.jp/blog/2015/04/column_039/#:~:text=%E4%B8%80%E8%88%AC%E7%9A%84%E3%81%AB%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0%E5%8C%96,%E3%81%AB%E8%A1%A8%E7%8F%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E8%A8%80%E8%91%89%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82&text=IT%E3%82%92%E6%B4%BB%E7%94%A8%E3%81%97%E3%81%9F%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0,%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
「システム化」と対極にあるのは「熟練の技」です。
飲食店を例にとって考えるとチェーン店であるマクドナルドは「システム化」されており、顧客は全国各地どこでも同等のサービス(価格、味、接客)を受けることができます。
「マニュアルに従えば誰がやっても同じ成果を生み出せる」状態になっています。
一方、個人の飲食店は「熟練の技」に支えられたものであり、チェーン店とは性質が異なります。
欠点は次のようになります。
- 技術の伝承に時間がかかり、技術が途絶えることがある
- サービスの質にバラつきが生じやすい
- 大規模化が困難
「システム化」がどんな場面でも優れているとは限りません。
日米の大砲の命中率
山本七平氏の著作であったと思うのですが次のような記述がありました。
第二次世界大戦における日米の大砲の命中率は、大戦初期は日本の方がアメリカよりも高かった。
日清、日露戦争を経験した兵士による「熟練の技」のおかげで大砲の性能は劣っていても命中率は髙かった。
ところが戦争末期には「熟練の技」を持つ兵士が戦死したり、内地に帰還することで技術の伝承が途絶え、命中率は大幅に低下した。
一方、アメリカは大戦中を通じて大砲の命中率に差は無く、戦争末期には命中率は日本を大幅に上回った。
兵士が入れ替わっても「マニュアルに従えば誰がやっても同じ成果を生み出せるシステム化」が成されていたためであった。
資源を持たない日本は「システム化」すべきところを「システム化」せずに(できずに)精神論や「熟練の技」で乗り切ろうとしてしまう傾向があるのかもしれません。
(山本七平氏は軍事専門家ではありませんので間違っている部分があるかもしれませんし、私の記憶違いの部分があるかもしれません)
新型コロナPCR検査
新型コロナPCR検査は全国各地で大規模に行われており、実施者により検査結果が異なるようではいけません。
「マニュアルに従えば誰がやっても同じ成果を生み出せる」ようにする必要があり、「熟練の技」に頼るようなことがあってはいけません。
仮に多数の病院や検査所が「マニュアルに従えば誰がやっても同じ成果を生み出せる」状態になっていないのであれば「システム化の失敗」です。
この場合は厚生労働省の責任ですし、マニュアル等の見直しが必要となります。
(日本の新型コロナPCR検査件数は未だに世界140~150位程度です。システム化に失敗しているため、検査件数が増えないという見方もできます)
ありーちぇ氏の指摘が正しいです。
もしsguardo.ctor氏の病院で採用したPCR検査機の操作が非常に複雑で「マニュアルに従えば誰がやっても同じ成果を生み出せない」機器であるのであれば、「機器選定の失敗」であり、厚生労働省は当該機器を行政検査に使用してはいけないという通達を出す必要があります。
しかし、sguardo.ctor氏のようにコンタミで困っている病院や検査所の話はあまり見かけませんので、それ以前の問題の可能性が高そうです。
(マクドナルドにも研修期間があるようにシステム化が成されていても最低限の技量、知識は必要です)
https://www.niid.go.jp/niid/images/lab-manual/2019
病原体検出マニュアル 2019-nCoV Ver.2.9.1
https://www.niid.go.jp/niid/images/lab-manual/reference/COVID-19-PCR-test-practical_R3.pdf
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)検査法の運用についてのガイドライン 第 3 版