コロナウイルス感染症では間違った情報がいつになっても訂正されずに流布され続けています。
コロナウイルス感染症は「8割は人にうつさない」という説があります。
本当でしょうか?
「8割は人にうつさない」の根拠
新型コロナクラスター対策専門家twitter画像より
西浦氏をはじめとするクラスター対策班によるものです。
- 約8割が2次感染者数が1人以下
- 約1割が8~12人の2次感染者を生む
約8割が2次感染者数が1人以下というのは感染しても約8割が感染を広げないということです。(1人に感染させた場合、その1人が他の人に感染させないとした場合)
従ってクラスター対策班のデータが正しい場合、「8割は人にうつさない」ではなく「8割は感染を広げない」と解釈すべきです。
https://www.ntv.co.jp/news_covid19/static/20200318_01.html
83/110 = 75.4%が誰にもうつさないというデータになっています。
クラスター対策班による「約8割が2次感染者数が1人以下」と混同した結果、「8割は人にうつさない」となったのかもしれません。
和歌山県の事例を調べてみると
和歌山県では仁坂知事の方針で当初から無症状の濃厚接触者を含め、積極的にPCR検査を行っています。
県のホームページでは感染者の情報をプライバシーを侵害しない範囲で詳細に情報を公開しています。
https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/041200/d00203387.html
和歌山県で発見された感染者を1次感染者とします。
1次感染者が何人に感染させているのか(2次感染者数)を調べました。
1人が生み出す2次感染者数 | 頻度(人) | 全体に占める割合 | 2次感染者数 | 全体に占める割合 |
0 | 40 | 61.5% | 0 | 0 |
1 | 7 | 10.8% | 7 | 11.7% |
2 | 8 | 12.3% | 16 | 26.7% |
3 | 6 | 9.2% | 18 | 30.0% |
4 | 3 | 4.6% | 12 | 20.0% |
5 | 0 | 0% | 0 | 0% |
6 | 0 | 0% | 0 | 0% |
7 | 1 | 1.5% | 7 | 11.7% |
8 | 0 | 0% | 0 | 0% |
合計 | 65 | 60 |
2020年7月30日までのデータです。(濃厚接触者の検査で新たな感染者が見つかると誰にも感染させない人の数は減ると思います)
このデータからわかることは次の通りです
- 誰にも感染させなかったのが約6割
- 8割以上が小規模感染(2次感染者数が4人以下)
誰にも感染させなかったのが約6割
和歌山県は人口密度が低く(他の人に感染させる確率は低く)、積極的に検査(早期発見、早期隔離)を行っています。
大阪府のように人口密度が高く、積極的に検査が行われないような地域では感染させる人数は増えると考えられます。
積極的に検査をし、人口密度が低い和歌山県のデータで誰にも感染させなかったのが約6割ですので、「8割は人にうつさない」というのは有り得ないと考えます。
クラスター対策班の「75.4%は誰にも感染させない」というのは検査体制が充分ではなかった3月までのデータです。
そのため2次感染者を捕捉できていなかったと考えられます。
8割以上が小規模感染(2次感染者数が4人以下)
クラスター対策を行う前提として「クラスターさえ潰しておけば感染は広がらない」という考えがあります。
http://www.gaiko-web.jp/test/wp-content/uploads/2020/06/Vol.61_6-11_Interview_New.pdf (押谷仁氏のインタビュー)
「一人の感染者が多くの人に感染させるクラスターさえ発生しなければ、ほとんどの感染連鎖は消滅していく」とあります。
https://www.mhlw.go.jp/content/000619966.pdf
クラスターの定義は「5人程度の集団発生」とあり、スーパースプレッダー(多くの人に感染させる感染者) の有無は関係なさそうです。
和歌山県の事例では小規模感染がほとんどです。
有田病院の事例はクラスターとして扱われました。
内訳は2人の2次感染者がそれぞれ2人、5人の3次感染者を生みだしており、スーパースプレッダーがいたわけではありません。
和歌山県ではクラスターの発生は小規模感染の連鎖であり、感染のほとんどは小規模感染によるものです。
和歌山県の事例を見るとクラスター対策さえしておけば良いというのは間違いです。
押谷氏
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/07/pcr-4_2.php
「大多数の誰にも感染させない人をいくら見つけても感染制御にはあまり意味がない」とあります。
「国民の行動変容」と「クラスター対策」だけで感染制御が可能ならば、何故緊急事態宣言が必要となったのでしょうか?
押谷氏は緊急事態宣言は必要無かったと考えるのでしょうか?
クラスター対策班としてきちんとした総括が行われていないので「国民の行動変容」と「クラスター対策」だけでは感染制御が不可能であることが未だに理解できないのでしょう。
和歌山県の事例を見ても感染の大部分はクラスターではなく、小規模感染です。
和歌山県のように積極的に検査を行い、情報を公開している自治体のデータをまとめれば同じようなデータが得られると考えます。
感染の大部分は小規模感染で無症状者からも感染するのがコロナウイルス感染症の特徴です。
押谷氏は中国や韓国、ニューヨークが無症状感染者の発見、隔離に力を入れている理由が未だに理解できていないのでしょう。
3月に発表された武漢の論文を元に「PCR検査の感度は70%」、3月までのクラスター対策班のデータを元に「8割は人にうつさないのでクラスター対策を行えば感染は制御できる」等、新たな知見が得られても情報をアップデートしない、できない人達ばかりで驚かされます。