日本では、PCR検査体制を拡充すると医療崩壊が起こるのでむやみに検査をすべきではないという意見がありました。
イタリアと韓国の医療崩壊の原因と検査体制を拡充すると本当に医療崩壊が起こるのかを調べてみました。
Contents
検査体制を拡充すると医療崩壊説
村中璃子氏
韓国・イタリアで医療“崩壊”地獄 無防備なPCR検査で医療従事者の感染招く 医師・村中璃子氏寄稿
https://www.iza.ne.jp/kiji/life/news/200313/lif20031320000048-n2.html
2020.3.13
韓国では、感染者を徹底的に洗い出すことを目的に無症状・軽症の患者まで広くPCR検査を実施した。日本では「韓国にできるのになぜ日本でできないのか」とPCRの全員検査を主張する識者まで現れたが、結果、韓国では軽症者が病床を占拠して重症者の医療を奪い、重症患者の救命にあたる医療スタッフが手薄となるなど医療崩壊が始まった。
韓国ではMERS(中東呼吸器症候群)の経験から、大量のPCR検査を行うキャパシティを持っていたが、そのことがかえって災いした結果となった。
イタリアでは、欧州で初めて中国人観光客2人を含む3人の感染が確認された1月31日時点で、「欧州一厳しい監視体制を取る」として、広く浅いPCR検査で徹底した水際対策をとることを宣言した。しかし、新型コロナウイルスはすでにイタリア国内に広がっていた。防護服を着るなどの体制を整えず、どこの病院でも無防備にPCR検査を行った結果、多くの医療従事者の感染を招いた。
おると氏
リンク先の内容は「軽症者には検査をするな」という内容ではありません。https://www.washingtonpost.com/world/europe/coronavirus-in-italy-fills-hospital-beds-and-turns-doctors-into-patients/2020/03/03/60a723a2-5c9e-11ea-ac50-18701e14e06d_story.html
きゅーさん氏
オタ小児科医氏
共通しているのは「軽症者の発見→重症者のためのベッドが埋まる→医療崩壊」という理論です。
韓国とイタリアの医療崩壊の実態はどのようなものだったのでしょうか?
韓国
韓国の現状
韓国、精鋭チームの迅速対応でコロナ感染爆発封じ込め
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-07-27/QE3R7NDWLU6N01
韓国の1日の新規感染件数は2月のピーク時に800件を超え、その後もゼロになったことはないが、この2カ月間は30-60件程度で推移している。
他国で実施された厳しいロックダウン(都市封鎖)とは異なり、韓国は危険なホットスポットにきめ細かく照準を定め、他の地域の人々の生活やビジネス活動には大きな制限をかけない戦略をとってきた。
コロナ感染が最近再拡大している国々では感染経路が特定できないケースの割合が50%を超えているのに対し、韓国では8%程度にとどまっている。
韓国は1日の感染者数が100人以下で感染経路不明者が8%程度ですので封じ込めには成功しています。
韓国での医療崩壊
韓国に対して批判的な記事から韓国の医療崩壊の様子を見てみます。
大邱で大規模クラスター発生
韓国では宗教団体の集会が原因の大規模クラスターが発生しました。
韓国、新型肺炎の集団感染を起こした新興宗教「新天地イエス教会」の正体
https://www.newsweekjapan.jp/kim_m/2020/02/post-13.php
2020.2.25
韓国で感染者が急増したのは31人目の感染者(61歳、女性)が韓国の南東部の大邱広域市にある新興宗教団体「新天地イエス教」(以下、「新天地」)の「新天地イエス教大邱教会」を訪ねてからである。彼女が「新天地イエス教大邱教会」の礼拝に参加した後、同じ教会で10人の感染者が確認されるなど1日だけで患者数は31人から46人に急増した。さらに、20日には一日で大邱・慶尚北道地域で51人の感染者が発生し、半分を超える28人が新天地大邱教会から出るなど、同教会で礼拝した信者らや「新天地」の全国の支部を中心に感染者が続出している。
韓国の疾病管理本部の発表によると、2月23日9時時点の感染者556人のうち、新天地イエス教の感染者数は309人で半分以上を占めている。大邱市は「新天地イエス教大邱教会」の約9,000人の信者全員を対象に検査を実施することを発表すると共に、信者全員に対し、外出禁止や家族の隔離などを要請した。また韓国政府は2月23日、政府の危機警報レベルを「警戒」から最も高い「深刻」に引き上げた。
大規模クラスターが原因で医療崩壊
大邱広域市とその周辺の慶尚北道(キョンサンプクト)で、2月中旬以降に起きた現象を調べれば「医療崩壊」と呼ぶほかありません。
https://news.yahoo.co.jp/articles/6e250a6925769e6987ad7f7bf24740a42e8468df?page=2
新型肺炎の患者で病床は埋まり、重篤な人も入院できずに自宅で死んでいく。一方、医師や看護師も新型肺炎に罹り、病院の機能がどんどん低下した。これが大邱の現実でした。
大邱での感染爆発が確認されたのが2月19日。2週間もたたない3月1日までに、重篤な症状でありながら入院できず、自宅で亡くなった人が4人に達しました。
朝鮮日報の「症状がなくても陰圧病床…その間に重症の4人が入院もできずに死亡」(3月2日、韓国語版)が報じています。
・3月9日午後5時現在で大邱市が確保した病院のベッドは2641床。一方、新型肺炎に感染したと確認された人は5663人。
・そのうち、2198人が病院に入院し、1888人が10か所の生活療養センターに収容された。自宅で待機する人は1422人。重症で入院が必要な304人もこれに含まれる。
大規模クラスターが原因で病院のキャパシティを超える患者が発生し、医療崩壊を起こしたようです。
自宅待機中に死亡というのは日本でも起きました。
大邱・慶北の生活治療センター終了 医療崩壊防ぐ
http://world.kbs.co.kr/service/news_view.htm?lang=j&Seq_Code=75648
この「生活治療センター」は、症状が軽いおよそ3,000人を隔離治療し、医療崩壊を食い止めるうえで決定的な役割を果たしたとされています。
生活治療センターは、公共施設などを転用したもので、一日当たり数百人が陽性判定を受け、自宅で入院を待っている患者が1000人を超えて、重症患者でも入院できずに亡くなる事例が相次いで医療体系が崩壊する危機感が漂ってきたことから、軽い症状の患者の隔離治療を行うために開設されました。
3月の段階で突然1日数百人の陽性者が出たことにより、医療崩壊を起こしたのでしょう。
軽症者のための「生活治療センター」を即座に開設し、医療崩壊を最小限に留めたと考えられます。
「大規模クラスター発生→陽性者急増→医療崩壊→生活治療センター開設でキャパシティ確保」となっています。
大規模クラスターにより陽性者が急増し、医療崩壊を起こしました。
しかし、検査を行うことが悪いと考えるのは理解に苦しみます。
「武漢のコンテナ病院」や「韓国の生活治療センター」のような施設を用意し、キャパシティを確保すれば良いだけです。
(ホテルでも良いでしょう)
大邱や慶尚北道では新型肺炎を担当しない病院も「崩壊」を警戒。その余波で、3月18日に17歳の高校生が肺炎で亡くなりました。同月12日に発症し、すぐに病院で診察を受けましたが、新型肺炎の疑いがあるとの理由で入院を拒否されたのです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/6e250a6925769e6987ad7f7bf24740a42e8468df?page=3
入院先が見つからず、手遅れになるのは日本でも起きました。
大規模クラスター発生に伴い、検査体制拡充
鈴置:韓国のPCR検査体制は素晴らしい――というのは神話です。「積極的に大量検査し、感染者を発見した」と日本でも称賛されていますが、大いなる誤解です。
https://news.yahoo.co.jp/articles/6e250a6925769e6987ad7f7bf24740a42e8468df?page=4
「感染の疑いのある人が大量に発生したので、大量に検査せざるを得なかった」というのが実態です。巨大なクラスター(感染者の集団)の出現を許したツケを払わされたのです。
検査を拡充したために医療崩壊を起こしたのではなく、大規模クラスターが原因で医療崩壊が起き、感染疑いの人が大量に出て仕方なく検査体制を拡充したのが実情です。
――死に物狂いで検査したわけですね。
鈴置:そうです。しかし新天地対策に注力するあまり、信者以外の患者は見捨てられました。熱と咳があり、そして糖尿と血圧の持病があっても「新天地と関係なく、海外旅行にもいっていないから」と保健所から検査を拒否され、自宅待機を余儀なくされた男性が怒りをぶつけています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/6e250a6925769e6987ad7f7bf24740a42e8468df?page=4
熱が39度になった後、ようやく検査を受けることがでました。陽性が判明したのですが、それでも自宅での療養を申し渡されました。病床が絶対的に不足していたのです。
韓国は必死になって検査体制を拡充しましたが、それでも検査を受けられない人がいたようです。
保健所から検査を拒否されるのは日本ではよくあることです。
国の方針転換で大規模検査体制へ
――なんやかんやで、いつの間にか検査数が増えていったのですね。
https://news.yahoo.co.jp/articles/6e250a6925769e6987ad7f7bf24740a42e8468df?page=6
鈴置:その通りです。今になって韓国人が誇るのとは完全に異なり、積極的に検査する方式を国の戦略として採用していたわけではないのです。
大邱の巨大なクラスターの発生を見落としたため、すさまじい感染爆発が起きてしまった。そこであわてて大量の検査を実施。
大規模クラスター発生が原因で検査体制を拡充したということです。
韓国も初めは「新型肺炎で不要な検査はしない」方針だったことを示すエピソードがあります。慶尚北道・尚州(サンジュ)市の保健所職員2人が自らの感染を懸念して検体を採取したところ、上司の課長がそれを廃棄させるという「事件」が発生しました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/6e250a6925769e6987ad7f7bf24740a42e8468df?page=6
NEWSISの「尚州保健所、課長を職から解く…『職員の検体の廃棄を指示』」(3月4日、韓国語)によると、課長は「もし、感染者と判定されれば、我々全員が隔離される。陰圧病室に行っても死ぬ時は死ぬし、治療薬もないのに検体が何の役に立つのか」と部下を叱った、というのです。
この「事件」が発生したのは2月26日。当時は「濃厚接触者以外は検査しない」という基本方針が残っていたのでしょう。
韓国では当初、日本と同じように検査に対しては消極的だったのでしょう。
しかし、大規模クラスターが原因で医療崩壊が起き、感染疑いの患者が多数発生し、検査拡充へ方針転換しました。
日本では未だに検査対象の議論が続いていますが、韓国ではそのような議論は3月頃には終わっていたのでしょう。
軽症者の隔離先の確保をせずに検査体制を拡充すれば医療崩壊が起こるのは当然です。
それを防ぐために「武漢のコンテナ病院」や「韓国の生活治療センター」が即座に開設されたのです。
「検査体制を拡充するために隔離先を確保せよ」は正論です。
「感染者を発見すると医療崩壊するので検査を拡充するな」は暴論です。
「感染者を発見すると医療崩壊する」とだけ言って隔離先の拡充について触れないのは不適切です。
まとめると韓国の場合は
「大規模クラスター発生→陽性者急増→医療崩壊→生活治療センター開設でキャパシティ確保→検査体制拡充」です。
イタリア
イタリアでの医療崩壊
北イタリアで医療崩壊が起こりました。
北イタリアの病院は戦時下のような状態
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00122/031200005/?P=2
米CNNによると、感染者が最も多い北部ロンバルディア州で集中治療態勢の調整に当たっている関係者は、「今や廊下での集中治療態勢整備を強いられている」「病院の区画は全て重症者のために開放した」と語った。
北部のミラノ近郊にある病院の集中治療室(ICU)で治療に当たるダニエル・マッキーニ医師のSNS(交流サイト)の書き込みも話題になっている。「高齢者だけでなく、若い人も気管挿管され、ICUに搬送される」「1日に15~20人が入院し、ICUは崩壊しつつある。戦争のようだ」と、その惨状を語っている。
このような状況になったのはPCR検査を行ったからなのでしょうか?
イタリアの医療崩壊までの経緯を見てみます。
緊急事態宣言
イタリア国内で新型コロナウイルスの症例が初めて見つかったのは、1月29日のことだった。2人の中国人観光客の感染が判明して隔離できた段階で、イタリアの当局は欧州で最も安全な保護システムを準備できたと確信していた。
https://news.yahoo.co.jp/articles/034d714a96981a2a14ab006d170b74bf26f10976?page=1
そして翌日には、ジュゼッペ・コンテ首相が6カ月間の緊急事態宣言を発令し、イタリアは世界に先んじて中国からのフライトの乗り入れを中止した。
2月中旬には陽性者0
2月上旬には、日本同様に武漢からイタリア人を引き揚げ、検疫隔離。春節が終わってイタリアに帰国する在住中国人には、2週間の自宅隔離を要請しました。
水際対策が功を奏したのか、中旬には陽性者は見当たらず(先の中国人旅行者2名のほか、陽性だったイタリア人1名も回復)、イタリアは見かけ上“感染者ゼロ”だったのです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/f4d1a815d7f3f3c42c20fe80070b4a1c064bf5ae
北イタリアで 経路不明の感染者が発覚
2月20日(木)。ミラノから約60キロの街、ロンバルディア州コドーニョで、38歳の男性に感染が確認。
https://news.yahoo.co.jp/articles/f4d1a815d7f3f3c42c20fe80070b4a1c064bf5ae?page=2
感染経路不明の陽性者が出現。イタリアに激震が走りました。
ただちに濃厚接触者が追跡され、全員検査をしていくと、地域内での感染の広がりが見えてきました。
まず、イタリア国内で感染者の接触者を追跡し、“感染の可能性がある”全員を検査。そして、アウトブレイクしている地域を特定。同時に、陽性者の約半数に無症状の感染者がいることがわかりました。
対象地域で多くの検査を行うことで、無症状な感染者が多数いることも判明。
医療崩壊が起こる前のイタリアでは無症状の感染者が多数いました。
現在の日本の状況と似ています。
遠い南イタリアでも感染! しかし対応は早かった
各地でも感染報告が届くようになりますが、経路をたどれば、北イタリアの感染地域もしくは付近との接触があった人がほとんど。
https://news.yahoo.co.jp/articles/f4d1a815d7f3f3c42c20fe80070b4a1c064bf5ae?page=3
感染者は即座に隔離入院。また感染者が滞在していたホテルでは、濃厚接触が疑われる同行者29名とスタッフ合わせて約40名をホテル内で検疫隔離させたのです。
ほかにも、陽性者が確認された街の3,000人全員に検査が実施されたり (無症状感染者含む陽性者数名を発見)、感染の可能性があるエリアをしらみつぶしに検査して状況を可視化したり。
そのため感染のない地域では、ほとんど不安を感じないまま過ごせていました。
検査と隔離を行っていた様子がわかります。
迫られた「公衆衛生」と「経済」の選択
最初の施策を講じたあとでも、すでに悪化していたイタリアの景気は大打撃を被った。
https://news.yahoo.co.jp/articles/034d714a96981a2a14ab006d170b74bf26f10976?page=3
このときイタリアは、公衆衛生と経済の選択を迫られていたのである。しかし、イタリア北部にわずか数百の症例だけが確認されていたことから、あらゆる領域にかかわる政治家たちが公衆衛生と経済の双方のバランスをとろうとしていた。政治家たちの多くは景気低迷を和らげようとして、国民に数々の矛盾したメッセージを送っていたのだ。
現在の日本が直面しているのと似た状況です。
政府は「Go to トラベル」キャンペーンを行いながらも、国民に注意を促すという矛盾したメッセージを送り続けています。
ロンバルディア州知事のアッティリオ・フォンターナは2月25日の段階で、新型コロナウイルスは「普通のインフルエンザより少し症状が重いだけ」であると地元議会で語っている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/034d714a96981a2a14ab006d170b74bf26f10976?page=3
中道左派の民主党(PD)のニコラ・ジンガレッティ党首はミラノ市内で食事しながら、イタリア国民にメッセージを発した。注意すべき状況ではあるが、「生活を犠牲にしたりパニックを広めたりすることを避ける」よう警告し、「復興や回復の兆しを見せる」よう呼びかけたのだ。ミラノ市長のジュゼッペ・サーラは、ミラノ市民の恐怖をあおらず励ます「ミラノは止まらない」というキャンペーンを開始した。
イタリアでは経済活動再開のために楽観論が蔓延しました。
日本では「日本人は集団免疫を獲得している」という人まで出てきました。
非常に危険な状況です。
全土に感染を運ぶ!? ミラノから大脱走
そんな危機感のなさが危惧されていたころ、ミラノを含むロンバルディア州全体と北イタリア14県(報道時は11県)が封鎖されると3月7日(土)の夜にスクープとして報じられました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/f4d1a815d7f3f3c42c20fe80070b4a1c064bf5ae?page=4
すると今度は、慌てて詰めたであろうスーツケースを引いた大群が、ミラノ中央駅に集結。ひとまず乗れる列車やバス、車で、トスカーナやローマ、ナポリ、そしてシチリアへ……。
煽る報道と常軌を逸した非常識な人々によって、ウイルス感染の可能性濃厚な人々がイタリア各地へ散ってしまったのです。
その数、なんと数万人!
「Go to トラベル」キャンペーンで全国各地に感染が広がるであろう日本と同じような状況です。
日本の場合は数万人どころではないでしょうけど。
全員が一緒にブレーキを踏むべきだった
こうした決断を下した政治家たちを、新型コロナウイルスは容赦なく襲った。ロンバルディア州がバーの規則を緩和したわずか数時間後、ロンバルディア州知事のフォンタナはアシスタントのひとりが感染したことを確認し、「自主隔離のような状態」で勤務することを発表した。それから数日後の3月7日、民主党党首のジンガレッティは自らが新型コロナウイルスに感染したことを公表した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/034d714a96981a2a14ab006d170b74bf26f10976?page=3
GIMBE財団理事長のカルタベロッタは、この時点で全土にわたる社会行動制限や、中国にならった封鎖などのより厳格な措置を講じなかったことを批判し続けている。「待機を中心とした戦略は、いつもウイルスを蔓延させてきました」と、カルタベロッタは言う。
そして実質的な医療崩壊へ
こうして3月初旬には、ロンバルディア州の病院が実質的な医療崩壊の状態に陥り始めた。最前線にいる医師たちが、患者の“津波”に見舞われていると言い始めたのだ。なかには毎週の残業が25時間になったという医師がおり、24日間連続で毎日14時間以上働いたという者もいた。一部の医療従事者が感染したことでシフトを組むことが困難になり、長時間勤務が常態化し、労働環境が悪化していったのだ。
https://news.yahoo.co.jp/articles/034d714a96981a2a14ab006d170b74bf26f10976?page=4
「患者が急増することで、現地の医療サーヴィスが圧迫されるのです」と、ミラノのボッコーニ大学Centre for Research on Health and Social Care Management所長のフランチェスコ・ロンゴは言う。「ある病院では一日に診察する肺炎の症例が2~3件だったのが、突然40件も診察しなければならなくなります。通常の10倍もの患者数に対応できる人なんて誰もいません」
日本はイタリアの道を辿っているように見えます。
イタリアが医療崩壊に至る経緯を見てきましたが、医療崩壊に検査が関係しているとは思えません。
イタリアでは一次診療に携わる医師達が多数感染し、一次診療が崩壊し、医療崩壊を招いたとされています。
しかし、一次診療の医師達が検査や診察を拒否し、二次診療に患者を送っていた場合、医療崩壊を防ぐことができたのでしょうか?
まとめるとイタリアでは
「早期の入国制限、緊急事態宣言」→「検査体制拡充」→「陽性者0」→「経済活動再開」→「感染者急増」→「医療崩壊」
です。
大量の患者が発生し、医療崩壊に至った場合は検査実施の有無は関係ありません。
「検査体制を拡充すると医療崩壊が起こる」というのは事実ではありません。
経済活動再開のための大規模PCR検査
イタリアではどのような対策を取れば良かったのでしょうか?
参考になるのは武漢の大規模検査です。
武漢の大規模検査、新型コロナ根絶に成功した可能性-無症状感染ゼロ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-06-01/QB8LJIDWLU6N01
新型コロナウイルス感染拡大の最初の震源となった中国湖北省武漢市では、無症状感染例が約2カ月ぶりにゼロとなった。全住民を対象とした大規模な検査が無症状の感染者のあぶり出しに成功した。
市衛生当局が1日発表したところによると、新型コロナ核酸検出検査を5月31日に6万人余りに対して実施した結果、無症状感染例がゼロだった。同市は約1100万人の全住民を対象に検査を実施し、過去2週間に約200件の無症状感染例を発見していた。
無症状の人が感染を広め得ることが、新型コロナ封じ込めの障害となっている。検査が不十分な国ではこうした感染者を特定、隔離して感染拡大を防ぐ方法がない。
経済活動再開の前に感染者の発生が疑われる地域で大規模検査を行い、多数の無症状感染者を発見、隔離し、経済活動を再開しています。
こういう対策を取れないのであれば、経済活動再開と自粛を繰り返すしかないでしょう。
イタリアの医療崩壊の原因は検査をむやみに行ったからとする人達がいますが、見当違いです。
イタリアの医療崩壊の原因は経済活動の再開の仕方を間違ったからです。
経済活動再開のための「コロナはインフルエンザみたいなもの」という楽観論の蔓延はイタリアにとって致命的でした。
日本での医療崩壊
PCR検査を拡充してこなかった日本でも医療崩壊は起こっています。
警察扱い26遺体、コロナ感染 自宅で死亡か、容体悪化20人
https://news.yahoo.co.jp/articles/c90a90bc0cb4f578df89b4956eeb836e462a8d58
警察庁は22日の衆院厚生労働委員会で、不審死などで全国の警察が21日までに取り扱った遺体のうち、新型コロナウイルスに感染していた人は9都府県の計26人だった、と明らかにした。自宅で亡くなるなどした人が20人、勤務先などで容体が悪化し、病院で死亡確認された人が6人だった。
警察庁によると、20人の内訳は自宅で亡くなったのが11人。残る9人は自宅で容体が悪化し、病院で死亡が確認された。このうち2人は生前にPCR検査を受け、1人は陽性で自宅待機中、1人は検査結果待ちだった。
一方、勤務先や路上などで容体が悪化した6人は、いずれも搬送先の病院で死亡が確認された。
コロナで自宅待機の80代男性が死亡 埼玉・入院待ち207人、保健所「病院見つからない」
https://mainichi.jp/articles/20200510/k00/00m/040/086000c
新型コロナウイルスに感染した埼玉県内の80代男性が4月中旬、病院に入れずに自宅待機となっている間に急変し、搬送された病院で死亡した。男性の遺族は早期の入院を望んだものの、埼玉県では当時、感染者約200人が入院待ちの状態で、保健所から「重症者から入院させる。順番がある」と説明されていた。遺族は「しゃべれないほど重い状態だった。放置されたも同然だ」と県の対応を批判している。
PCR検査、大阪で最長10日待ち 医師「保健所受け付けず」―民間委託で拡充急ぐ
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020050300126&g=soc
感染者の4割が集中する大阪市では4月中旬、相談から検査までに最長10日間かかっていた。重症者やクラスター(感染者集団)の検査を優先したが、待機中に容体が急変して入院した人もいたという。大型連休中で検査が減少した1日時点でも、5日程度の待ち時間が生じていた。
新型コロナが疑われる患者が訪れる地域の開業医も対応に苦慮する。府内のあるクリニックには発熱した人がほぼ毎日来院するが、他の患者とは別の時間帯に、防護服を着込んで診察している。男性院長は「保健所は必要な検査をほとんど受け付けていない」と語気を強める。
院長によると、患者に肺炎の所見があるにもかかわらず、保健所に検査を断られたケースがあった。発熱した別の介護職員は検査を受けられず、仕事に復帰できないまま2週間の自宅待機を余儀なくされているという。
院長は「検査を受けられずに39度の熱が続くのがどれだけつらいか。医療崩壊を防ぐため、患者に過度な負担を強いている現状が気の毒でならない」と話した。
時事通信(4月18日付)の報道によると、大阪の4病院が救急患者の受け入れを停止したり一部制限したりしたことについて、日本救急医学会の嶋津岳士代表理事が「通常の体制を維持できず、救急医療の崩壊は既に始まっている」と指摘していた。また同記事では、4月13日から重篤な患者の受け入れを停止した大阪急性期・総合医療センターの担当者が「苦渋の選択。コロナの重症者が増え続ける中、通常の救急体制を維持するのは難しい」と話していた。
https://lite-ra.com/2020/06/post-5448_2.html
JSAの発表をもとに日本メディア各社が伝えたところによると、勝武士関は4月4~5日から38度の高熱に見舞われた。師匠らが保健所に電話をしたり病院に受け入れを要請したりしたが、受け入れ先の医療機関がなかなか見つからなかった。その後、熱が下がらず血痰が見られたたことから、8日に都内の病院に入院した。入院時のウイルス検査では陰性だったが、翌9日にはさらに病状が悪化したため転院。10日に陽性が確認され、19日から集中治療室で治療を受けていた。
https://www.bbc.com/japanese/52645502
緊急事態宣言により一時的に感染者は減り、医療への負荷は一時的には減りました。
しかし、現在の日本は医療崩壊に至ったイタリアと同じような状況にあります。
PCR検査の実施対象を制限している場合ではないのですが、気づかない人はいつまでも気づかないのでしょう。