コロナウイルス感染症

コロナウイルスPCR検査の感度97%という論文

PCR検査の感度が低いとされていることに疑問を持ち、記事を書きました。

コロナウイルスPCR検査の感度が低いという話は本当か? コロナウイルスのPCR検査の感度は高くなく、70%程度であると考える方が多いようです。中には30~70%と考える方もいます。 Q...

今回、その根拠とされている論文を読んでみました。

PCR検査の感度は71%であるとする論文

Fang Y, et al. Sensitivity of Chest CT for COVID-19: Comparison to RT-PCR. Radiology, 2020. https://pubs.rsna.org/doi/full/10.1148/radiol.2020200432

簡単にまとめます。

この研究は以前他の研究でウイルス性肺炎の典型的な画像所見を示すにもかかわらずCOVID-19 RT-PCRが陰性であった患者が報告されているのをうけて行われました。
前提としてPCR検査が診断の基準となりますがCT検査の有用性を調べようという研究です。

方法:51人の患者に対してPCR検査とCT検査を同時に行いました。

結果:
51人中15人がPCR検査陰性でCT検査でウイルス性肺炎の所見がありました。その後、15人は1週間以内にPCR検査が陽性となりました。
51人中35人がPCR検査陽性でCT検査でウイルス性肺炎の所見がありました。
51人中1人がPCR検査陽性でCT検査でウイルス性肺炎の所見はありませんでした。
これらのことからCT検査の感度は98%(50/51)で、PCR検査の感度は71%(36/51)であると考えられます。

考察:
CT検査の感度がPCR検査の感度よりも高くなった理由として次のことが考えられます。

  1. RNA検出技術の問題
  2. 使用する検査キットによる検出率の違い
  3. 患者のウイルス量が少ない
  4. 検体採取方法が不適切

③以外は全て技術的な問題です。また以前の研究と比較してPCR検査による検出率が低い理由は不明とあります。次にこの研究が参考にした研究について調べます。

PCR検査の感度は97%であるとする論文

Xie X, et al.Chest CT for Typical 2019-nCoV Pneumonia: Relationship to Negative RT-PCR Testing. Radiology, 2020.
https://pubs.rsna.org/doi/10.1148/radiol.2020200343

簡単にまとめます。

この研究はウイルス性肺炎の典型的な画像所見を示すにもかかわらずCOVID-19 RT-PCRが陰性であった患者が報告されているのをうけて行われました。

方法:167人の患者に対してPCR検査とCT検査を同時に行いました。

結果:
167人中5人がPCR検査陰性でCT検査でウイルス性肺炎の所見がありました。その後、5人は8日以内にPCR検査が陽性となました。
167人中155人がPCR検査陽性でCT検査でウイルス性肺炎の所見がありました。
167人中7人がPCR検査陽性でCT検査でウイルス性肺炎の所見はありませんでした。
これらのことからCT検査の感度は95.8%(160/167)で、PCR検査の感度は97%(162/167)であると考えられます。
(注意:この研究ではPCR検査の感度が高いというのは当然という考えなのか、感度については言及していません。感度の計算は上の論文と同様の方法です。)

考察:
CT検査は早期スクリーニングに役立つ可能性があります。
PCR検査は時間がかかり、検査キットの不足もあり、今後感染者が増えた場合に対応できなくなる可能性があります。
ウイルス性肺炎の典型的な画像所見を示すにもかかわらずCOVID-19 RT-PCRが陰性であった患者には隔離と再検査を検討する必要があります。

2つの論文を読んで

2つの論文を読んでわかることは

  1. PCR検査の感度は97%と非常に高い
  2. PCR検査の手技に問題があると感度は70%程度まで下がることがある(下手な人が行う、不適切な検査キットを使う等)
  3. PCR検査には偽陰性の場合があるので感染が疑われる場合は隔離と再検査が必要
  4. 感染者が増え、検査キットの不足等でPCR検査が行えない場合はCT検査が役に立つ場合がある
  5. PCR検査の感度は70%という研究はCT販売促進のためか?(GEの人が研究に参加)

現在日本ではPCR検査の感度は70%であると信じて疑わない人達がいます。
論文を読んでいるのでしょうか?

専門家会議の人達もPCR検査の感度は70%であると考え、対策を立てているのでしょうか?
下のスライド図はクラスター対策班、押谷仁氏によるもの(COVID-19への対策の概念 2020年3月29日暫定版)です。
左の図の意味はよくわかりませんが、説明文を読むとPCR検査の感度は低いと信じてそうな気がします。(現在どう考えているのかはわかりませんが)

PCR検査の感度97%という論文が無視され続け、検査手技に問題がある論文を信じ込みPCR検査の感度は70%であると信じる人達が多数いるのが不思議で仕方がありません。

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