コロナウイルスのPCR検査の感度は高くなく、70%程度であると考える方が多いようです。
中には30~70%と考える方もいます。
Q1:新型コロナウイルス検査は、どのくらい正確なのですか?
一般社団法人 日本疫学会
新型コロナウイルスに既に感染していると考えられるのに、早い段階では、60~70%くらいしかPCR検査が陽性にでない可能性が報告されています。
PCR検査の現状と将来のこと
公益社団法人 神奈川県医師会
新型コロナウイルスのPCR検査の感度は高くて70%程度です。つまり、30%以上の人は感染しているのに「陰性」と判定され、「偽陰性」となります。
PCR 検査はウイルスゲノムを検出するという原理から,⼀般論として感度は低く,特異度が⾼いと考えられます.初期のPCR検査で陰性だが後⽇陽性となった患者等の検討により,感度は30〜70%程度,特異度は99%以上と推定されています
一般社団法人 プライマリ・ケア連合学会
PCR検査は対象となるDNA、もしくはRNAを増幅させて検査する検査法ですので検体中にコロナウイルスのRNAが一つでも存在すれば確実に検出できます。
(追記 日本の検査ではNセットの検出限界は7コピー、N2セットの検出限界は2コピーでした)
感度が低いとされているのは検体採取や検体輸送中でのロス以外には考えられません。
私も当初はPCR検査の感度は70%程度で検体採取が難しいのだろうという程度の認識でした。
しかし、コロナウイルス感染症のデータや報道を見ているとPCR検査の感度が低いとするならば、説明がつかないことが多数出てきましたので考えてみます。
これ以降計算を単純化するためにコロナウイルス検査の感度は50%であると仮定して考えてみます。(計算が得意な方は70%として読み替えて下さい)
Contents
コロナウイルス検査の感度は50%であると仮定した場合
閉鎖空間での感染制御は不可能
病院や介護施設等の閉鎖空間で感染が発生した場合を考えます。
コロナウイルス感染症では無症状の陽性者もいることがわかっています。
また無症状であっても他の人に感染を引き起こすこともわかっています。
何らかの症状がある人は隔離が行われますので問題となるのは無症状の陽性者の発見です。
PCR検査が仮に感度が50%程度で役に立たないものであれば、無症状の陽性者を正確に発見することは不可能です。
病院で院内感染が発生し、無症状の陽性者が3人いる場合を考えます。
PCR検査の感度が50%であると仮定すると無症状の陽性者3人を正確に見つけ出す確率は12.5%です。
仮に無症状の陽性者が5人いる場合は、3.1%になります。
このように考えるとPCR検査の感度が50%であれば病院や介護施設のような閉鎖空間で感染が発生した場合、制御はほぼ不可能なはずです。
しかし、院内感染が発生した病院でも感染制御ができ、診察を再開している病院が多数あります。
クラスターの制御は不可能
上図は福井県で発生したクラスター(集団感染)の図です。(中日新聞2020年4月4日より)
クラスターの追跡は感染者の濃厚接触者を順次検査することで感染者を調べます。
仮にPCR検査の感度が50%であった場合、ここまで感染経路を辿ることは不可能です。
上図で陽性者を全て検出していると仮定すると感度50%の場合、最初の濃厚接触者の所で50%は陰性となってしまうのでその先の経路は辿れません。その次の濃厚接触者の所でも50%は陰性となってしまうので、ほとんどの感染経路は不明となり、無症状の陽性者の発見は不可能になります。
累積の偽陰性患者は1万人以上?
厚生労働省発表のコロナウイルス陽性者は4月27日の段階で13,385人です。
仮にPCR検査の感度が50%であった場合、単純計算で1万人以上の偽陰性の患者がいることになってしまいます。
1万人以上の陽性者が陰性であるとされて隔離、治療もされずに街中にいるということです。
PCR検査で陰性が確認された人が街中で感染を拡大させたという報道はほとんどありません。
東京都のコロナウイルス陽性率は78%?
PCR検査の陽性率が低い場合、感染状況をより正確に把握できており、陽性率が高い場合は、検査を受けられていない感染者が多く、実際よりも少ない感染者数になっていると考えられます。
長崎大の柳原克紀教授(臨床検査医学)は「明確に何%なら良いとは言えないが、東京都は5%程度だった二月ごろは十分な数の検査をしていたとみられる。検査を多くやり、陽性率が低くなるほど良い」と指摘。
東京新聞 2020年4月25日 夕刊
東京都の1月15日~4月21日までの検査人数は8,435人、陽性人数は3,320人、陽性率は39.4%となっています。
仮にPCR検査の感度が50%であった場合、真の陽性人数は2倍の6,640人、真の陽性率は78.8%となってしまいます。
陽性率78.8%は有り得ない数字だと思います。
コロナウイルスPCR検査の感度が低いという根拠は?
コロナウイルスPCR検査の感度が低いという根拠となっているのは、中国人の論文程度しか見当たりません。
例えば、中国・温州医科大学附属病院のファンらの研究では、新型コロナウイルスに感染する状況にあった症状のある患者51人に対してPCR検査を実施しました。症状が出てから平均3日の時点で行われた検査では、36人(71%)が陽性で、その後のPCR検査では、最終的に全員が陽性となりました。
一般社団法人 日本疫学会
また、中国の武漢市にある華中科技大学の医学院附属病院のアイらの研究では、新型コロナウイルス感染が疑われ、肺炎の検査のための胸部CT検査と新型コロナウイルスのPCR検査の両方を受けた1014人のデータについて分析を行ったところ、最初にPCR検査を受けた際に、陽性だったのは59% (601/1014)であり、その後、PCR検査を繰り返したところ、最初にPCR陰性だった15名の患者さんがPCR陽性になるまで平均で5.1日を要したと報告しています。
一般社団法人 日本疫学会
この2つの論文を根拠にコロナウイルスPCR検査の感度が低いとされてきたと考えられます。
この論文が正しいのかどうかはきちんと検証する必要があります。
Fang Y, et al. Sensitivity of Chest CT for COVID-19: Comparison to RT-PCR. Radiology, 2020. https://pubs.rsna.org/doi/full/10.1148/radiol.2020200432
Ai T, et al. Correlation of Chest CT and RT-PCR Testing in Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) in China: A Report of 1014 Cases. Radiology, 2020. https://pubs.rsna.org/doi/full/10.1148/radiol.2020200642
PCR検査の感度が低いのは手技の問題であれば検査感度は改善される
PCR検査の感度が低いとされているのは検体採取や検体輸送中でのロス以外には考えられません。
コロナウイルスは、陽性者であってもウイルス採取が困難であるという特性があるのなら話は別ですが、検査手技等の問題でロスがあるのであれば検査の感度は改善されるはずです。
結論として
上記のようにPCR検査の感度が低いとするならば、説明がつかないことが多数あります。
PCR検査の感度が低いとされてきた根拠は中国人の2つの論文です。
私はPCR検査の感度は少なくとも95%以上はあると思います。
ちなみに猫のコロナウイルス感染症である猫伝染性腹膜炎で行われるPCR検査の感度は98.7%です。
ヒトのコロナウイルスは特別に壊れやすい、採取が難しいという特性があるのでしょうか?
PCR検査の感度は低いので検査をする意味が無いという主張を繰り返してきた人達がいます。
その人達が主張を翻さないか今後の経過を注目します。