コロナウイルスのPCR検査に関する間違った報道が多い中、また新しい説が登場しました。
「PCR検査を増やすと死亡者数が増える」というものです。
この説に基づいて日本のPCR検査数は充分であると主張する人がいます。
この説について検証します。
Contents
「相関関係」と「因果関係」
相関関係と因果関係について大塚篤司先生の「世界最高のエビデンスでやさしく伝える最新医学で一番正しいアトピーの治し方」という本から抜粋します。
「相関関係」と「因果関係」について
「ニセ医学にダマされないための知識」として、汎用性の高い1つの考え方がある。「相関関係」と「因果関係」は異なる、ということだ。
まずは次の文章を読んでみてほしい。
「南米の一部の地域では、アトピー患者さんが少ないことが知られている。調査の結果、この地域の住民は、ある果物を食べていたことがわかった。その果物の成分を抽出したサプリを飲めば、アトピーは改善する。」
「ある果物の成分を抽出したサプリ」がアトピーに良さそうだ、と感じてしまった人は要注意だ。では、次の文章は、どうだろうか?
「宇都宮の地域ではアトピー患者さんが少ないことが知られる。調査の結果、この地域の住民は餃子という食べ物を他の地域に比べて多く食べていたことがわかった。餃子の成分を抽出したサプリを飲むことで、アトピーは改善する。」
「おかしい」と気がついた人が多いはずだ。宇都宮の餃子とアトピーに関係は、趣旨をわかりやすくするための極端な作り話だが、注目していただきたいのは、相関関係をあたかも因果関係であるかのように紹介されるとダマされやすいという点だ。
相関関係というのは、「AとBとに関係がある」という意味である。
因果関係というのは、「Bの原因はAである」という意味である。
関係があることと、「原因と結果」であることは、まったく異なるものだ。
さらに「相関関係」は、原因と結果が反対にして悪用されることがある。
まず、次の文章を読んでみていただきたい。
「犬小屋の周辺には、犬がいる確率が高い。近年、犬小屋は増加している。
つまり、犬の増加の原因は、犬小屋の増加にある」
犬が増えた結果、犬小屋が増えたと解釈するのが普通だろう。したがって、犬と犬小屋には相関関係があるが、因果関係が反対になっている。
略
こういう説明をすると「いろんな可能性を考えたら、因果関係はないとは言い切れないだろう」と反論する人が出てくる。可能性だけで言えば「祈りで病気は治る」ことだってありうる。しかし、それは医学ではなく宗教の世界である。
略
相関関係と因果関係を混同した情報は、患者さんがダマされやすいものの一つだ。あやしいと感じた健康情報に触れたとき、「それって、相関関係があるだけで、因果関係はないのでは?」という視点を持っておくと、ダマされにくくなる。
PCR検査を増やすと死亡者数が増えるという説を検証
相関関係と因果関係の違いを踏まえた上で、この説について検証します。
図が小さく分かりづらいですが、縦軸が100万人あたりの死亡者数、横軸が100万人あたりの検査数となっています。
twitterより
千葉大学の研究
ここで「十分なPCR検査を実施している国の死亡者数は少ない」という千葉大学の研究を紹介します。
http://dm-rg.net/news/2020/04/020339.html
この研究はいろいろと問題がありますのでここでは検証はしません。注目すべき所は
人口で補正した死亡者数とPCR検査数の間に関係はみられなかった
この人達はPCR検査の拡張に賛成の立場で研究を行っていると考えられます。死亡者数とPCR検査数の相関関係を得たかったのでしょうが、得られなかったということです。
相関関係と因果関係について検証
池谷氏の図を見ると死亡者数とPCR検査数に相関関係はあるように見えます。
千葉大学の研究では死亡者数とPCR検査数に相関関係はみられませんでしたが、池谷氏の図は何故か相関関係があるかのような図となっています。
このような違いが出た理由は不明です。
因果関係はあるのでしょうか?
私も番組を見ていましたが、因果関係に関する言及はありませんでした。
池谷氏が何を考えてこのような図を作ったのかは不明です。
死亡者数を増やす原因がPCR検査であると考えるのならば、因果関係についての説明をすべきでしょうが説明はありませんでした。
池谷氏の話を聞かないとわかりませんが因果関係があるかどうかは不明です。
仮に因果関係があったとしても日本が直線上にあるので適正な検査数であるなんてことは言えません。
まとめると
千葉大学の研究では死亡者数とPCR検査数に相関関係はみられませんでしたが、池谷氏の図では相関関係があるかのように見えます。原因は不明です。
因果関係があるかどうかも不明です。
専門家会議 尾身茂氏
テレビでいいかげんなことを言うのも問題ですが、専門家会議の方も似たようなことを言ってます。
「PCR検査数少ないが、死亡者数・率低い」専門家会議
m3.com 2020年5月5日
PCR検査数は少ないが、死亡者数と率は圧倒的に低い――。政府の新型コロナウイルス感染症専門家会議(座長:脇田隆字・国立感染症研究所所長)は5月4日に出した状況分析で、日本国内では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のPCR検査体制が不十分なために感染者数、死亡者数が低く見積もられているのではないかとの根強い疑問に対し、初めて見解を示した。
副座長で地域医療機能推進機構理事長の尾身茂氏は、「日本は他国と比較してPCR検査数は明らかに少ないが、死亡者数、率は圧倒的に低い。たくさんやっている国の方が、死亡数が多い」と強調。
専門家会議はPCR検査を拡充する方針を示しているようですし、死亡者数、率が低いからPCR検査数が充分であるとも言ってません。
しかし、いい加減、尾身氏にはご退場頂きたいですね。
適切なPCR検査数は?
私は医師が必要と考える場合は、即座にPCR検査を行える体制を整えるべきであるという立場です。
今はそういうことは無いでしょうがPCR検査を行うのに10日待ちという状況では話にならないと思います。
東京では医師が必要と考える場合に検査が行えているのかどうか、結果が出るまでどの程度時間がかかっているのかの情報が全くありませんので、適切な数の検査が行えているのかどうかを検証することすら不可能な状況です。
また東京では感染経路不明者が毎日のように出てますので、医師が必要と考える場合の検査だけで充分であるかも不明です。
東京では情報の公開のみならず、集計もまともにできていない状況です。
東京都の感染者数、保健所からの多数の報告漏れ 100人規模、集計やり直し進める
5/11 Yahooニュース
東京都が発表している新型コロナウイルスの感染者数について、保健所からの多数の報告漏れが見つかっていることがわかった。
関係者によると、複数の保健所で報告漏れやダブルカウントといったミスがあることが明らかになった。100人規模にのぼるということで、現在集計のやり直しを進めているという。
東京と大阪のコロナ対策は酷いものです。